加速器(2)

梨花「円形加速器の話をする前にまず電磁場中での円運動について復習しておくわね。」
梨花「まず角速度と速度の関係は覚えてる?」 ※半径r、角速度ω、電荷e、磁場の強さB、質量Mとする。

七海「v=rωだよね。一秒間に動く角度に半径をかければ、一秒間に進む距離=速度が求まるよ。」

梨花「正解!じゃあ次にローレンツ力の式は?」

七海「F=eBvだよね。電荷が大きいほど、速度が速いほど、磁場の強さが強いほど、ローレンツ力は大きくなるよ。」

梨花「そうね。じゃあこの2式を使ってさらに解説していくわよ。」
梨花「円運動の場合、向心力はMrω2で与えられて、これがローレンツ力と等しいという式を立てると以下のようになるわ。」


これを変形すると


また、


梨花「ということで電荷、磁場の強さ、質量が変化しなければ角運動量は一定だということが分かるわ。」
梨花「この式が重要だから覚えておいてね。それじゃあ本題に入っていくわよ。」

サイクロトロン



梨花「緑色の部分は形がアルファベットのDに似てるから、そのままディー(Dee)電極と呼ばれるわ。」
梨花「隙間の部分にだけ電場をかけて加速するのが特徴よ。」

七海「隙間だけ? Dの部分は何のためにあるの?」

梨花「Dは円運動をさせて方向を変えるだけの部分よ。ここではローレンツ力しか働いていないわ。」
梨花「円運動して下の部分まで荷電粒子が来たときの状態が下の図よ。」


七海「あれ? さっきと電場の向きが逆じゃない?」

梨花「電場をかけるための電源に交流電源を使っているから電場の向きが変わるのよ。」

七海「でもそんな都合よく、ちょうど粒子が来た時に電場が変わることあるの?」

梨花「交流電源だと『位相が入れ替わってる!?』なことが起きるから都合よく変わるように設計すればいいだけの話よ。」

七海「ええ...そんな上手くいくの?」

梨花「さっき角速度は一定だっていう話をしたでしょう? 角速度が分かれば半周する時間が分かるから何とかなるのよ。」

梨花「ただしずっと加速していくと相対論的効果で質量が増加して、角速度が変化しちゃうわ。そうすると電場の向きが変わるタイミングが少しずつずれてきてそれ以上加速できなくなるの。」

梨花「電子はそれが顕著だからサイクロトロンでは加速できないわ。」

梨花「あと、サイクロトロンでもう一つ知っておくべきことは加速されると軌道半径が大きくなるってことよ。」

七海「v=rωだから、vが大きくなるとrも大きくなるね。」

梨花「そう。だから高エネルギーにしようと思ったらどうしても装置が大きくなるわ。」
梨花「あと、粒子の軌道は円じゃなく螺旋軌道になるってことも覚えておいてね。」

シンクロトロン


梨花「兵庫県のSpring-8とか、つくばの高エネルギー加速器研究機構(KEK)のフォトンファクトリー(PF)とかが有名ね。」

七海「仕組みはどうなってるの?」

梨花「基本はサイクロトロンと同じだけど、シンクロトロンは磁場の強さを調整する、つまり変動磁場軌道半径が一定になるようにしているのよ。」

梨花「シンクロトロンで覚えるべき部品は3つ。加速電場を作る高周波加速空洞、電荷同士の反発で広がるビームを収束させる収束電磁石、ビームを曲げる偏向電磁石ね。」

梨花「シンクロトロンは軌道が決まっているから、その軌道の周りにだけ磁石を設置すればいいから建設費が安く済むわ。」

七海「じゃあ外周の大きさが一緒ならシンクロトロンのほうがいいってこと?」

梨花「ただシンクロトロンでビームを取り出すためには毎回粒子を加速しないといけないの。サイクロトロンはずっと磁場をかけてさえおけば連続でビームを得れるから一概に優劣はつけれないのよ。」

梨花「ただ高エネルギーまで加速しようと思うならシンクロトロンを使うことがほとんどみたい。たぶん巨大だとその分磁石の使用量が馬鹿にならないからね。」

梨花「シンクロトロンでは、電子もイオンも両方加速できるわ。」


マイクロトロン

梨花「マイクロトロンと次に紹介するベータトロンはマイナーだから、余裕がなければ忘れてもらっても構わないわ。」
梨花「マイクロトロンは下で示したような加速器よ。」


七海「1回目の電子軌道? どうゆうこと?」

梨花「マイクロトロンは青い加速空洞っていう部分で加速するの。」
梨花「加速すれば毎回速度が変わるから、円運動の軌道も変化するでしょ?」

七海「だから一回目とか二回目って書いてあるんだね。」

梨花「そう。さっきも言った通りマイクロトロンはマイナーだし、覚えるのもそれぐらいね。」
梨花「医療用加速器としてたまに使われることがあるわ。」


ベータトロン

梨花「磁場の時間的な変化に伴って発生する磁場を取り巻く軌道に沿った誘導電場で加速する装置よ。」

七海「???」

梨花「こんなの聞いたって分かるわけないわよね...私も最初読んだ時意味わからなかったわ。」
梨花「[ピー]射線取扱の基礎って本に書いてある説明を抜粋したけど、これで理解できた人いるのかしら。」

七海「理解できないんで説明お願いします」

梨花「サイクロトロンとシンクロトロンの仕組み見てたら分かったと思うけど、円形加速器では磁場の掛け方が重要なのね。」

七海「うん。」

梨花「まず電子銃っていう装置を使って電子を打ち込んで、等速円運動させるの。」
梨花「等速円運動させたあとに磁場を少し変化させるの。そうすれば電磁誘導の法則で電場が生じるでしょ?」

七海「その電場で加速するってこと? でも磁場を変化させたりしたら円運動の軌道が変わったりしない?」

梨花「一様な磁場なら中心方向への向心力を受けるから、軌道半径は小さくなってしまうわね。」
梨花「でもベータトロンは一様じゃない磁場をかけることでこの問題を解決しているのよ。」

七海「一様じゃない...ってことは場所によって磁場の強さが違うってことだよね?」

梨花「そう。中心が一番強いの。中心から離れるにつれて磁場が弱くなるようにしているのよ。」

七海「ほんとにそれで上手くいくの?」

梨花「向心力を受けると中心方向に力を受けるでしょ?」
梨花「でも、内側は磁場が強いからローレンツ力を受けて外側に力を受けるわ。」
梨花「それが上手く釣り合うように磁場をかけておけば一定軌道で円運動させることが出来るのよ。」

梨花「ここでは定性的な説明をしたけど、定量的に数式を解いてみたいって人は2009年の京都大学の入試問題物理でサイクロトロンとベータトロンの問題が出題されているから、それを実際に解いてみてね。」
梨花「...と、まあここまで頑張って説明してきたけど正直ベータトロンは電子しか加速できない加速に誘導電場を使っているのふたつだけ覚えといてくれればいいわ。」

七海「えっ、せっかく説明したのに?」

梨花「昔はベータトロンってよく使われてたんだけど、最近はほとんど使われてないからね...」

七海「そうなんだ...」

梨花「とりあえずこれで主任者向けの加速器の話は終わりよ。」
梨花「もっと詳しく知りたい人は加速器で私が詳しく話す予定だからそっちを読んでみてね。」
梨花「...いつ更新できるかわからないけど。」
最終更新:2018年06月09日 21:39