核反応(2) 核反応断面積・核反応のQ値

五十鈴「核反応(1)で説明しなかった部分について補足していくわね。」

核反応断面積

五十鈴「名前の通り核反応が起こる確率が起こる確率のことよ。」
五十鈴「核反応が起きる確率は核反応断面積という量で表され、入射する中性子が反応を起こす確率をPは以下の式で表されるわ。」

P=σn
ただし単位面積当たりの原子核の数をn、比例定数をσとする。

五十鈴「面積が大きいほうが反応しやすいっていうのはイメージしやすいわよね。」

七海「当たる確率が大きくなるもんね。」

五十鈴「この比例定数σが核反応断面積で、b(barn、バーン)という単位で表されるの。1 b=10-24 cm2よ。」

五十鈴「ただしこれは普通の面積と違って、エネルギーに依存する関数だから同じ反応でも条件によって違う値になりうるわ。」

五十鈴「この核反応断面積とエネルギーの関係を励起関数というの。」

七海「? 断面積が反応によって変わるの? 」

五十鈴「一応面積の次元をもつから“断面積”と呼ぶだけで、ただの比例定数だからあんまり深く考えない方がいいかもね。 」

七海「あとこれって入射する方向には依存しないの? 」

五十鈴「その時は微分断面積というものを考えないといけないんだけど、主任者試験にはあまり出てこないから、そういうものもあるっていうことだけ覚えておいてくれればいいわ。 」
五十鈴「なんなら覚えなくてもいいわよ。」

七海「あ、そう…」

1/v則

五十鈴「前回、熱中性子が核反応を起こしやすいって話をしたの覚えてる?」

七海「そんな話もあったね。」

五十鈴「その理由を説明するのが1/v則よ。」

五十鈴「単純に考えて、速度が遅いと原子核の近くにいる時間が長くなるでしょ?」

七海「移動に時間がかかるもんね...あ、だから反応しやすいのか!」

五十鈴「そ、ただそれだけの話よ。」
五十鈴「ただ、共鳴吸収といって、エネルギーが高くても大きな核反応断面積を示す領域があるわ。」

七海「ええー、なんで?」

五十鈴「うーん、これ話すと長いのよね...コラムでやるかもしれないからそれを待って。」
五十鈴「もしくは"共鳴核分裂"または"サブバリアー核分裂"で検索すれば答えが出てくるかもしれないから調べてみて。」

七海「分かったよ。」


五十鈴「次に反応熱の解説をするわね。核反応で生じるエネルギーも、壊変で放出されるエネルギーと同様、Q値と呼ばれるわ。」

五十鈴「求め方も、壊変の時と同様、反応前後の質量差から求めるわ。反応がA(a,b)Bで表されるとして…」


五十鈴「Q>0の反応を発熱反応Q<0の反応を吸熱反応というわ。」

七海「化学反応と一緒だね。」

五十鈴「吸熱反応はエネルギーを与えなきゃいけないから、入射粒子のエネルギーに閾値が存在するわ。」

五十鈴「Q値はそれぐらいかしらね。」

五十鈴「最後に生成核数の求め方を紹介しておくわね。」

核反応で生じる生成核の数は下の式で与えられる

dN/dt=-λN+Y

五十鈴「毎秒Y個の核種が生成するのと同時に、核種が崩壊定数λで壊変していくから単位時間当たりの増加数が上の式で与えられるのはわかる? 」

七海「わかるけど、この微分方程式の解き方が… 」

五十鈴「変数分離系の微分方程式の解法ね。空気抵抗を考慮した落下の方程式とかと同じ解き方よ。」

七海「と言われても… 」

五十鈴「まあ、数学があまり得意でないなら結果だけ覚えといてくれればいいわ。 」
五十鈴「一応解き方も下に乗せておくわね。 」

dN/dt=-λN+Y
dN/dt=-λ(N-Y/λ)
dN/((N-Y/λ))=-λdt
log⁡|N-Y/λ|=-λt+C
N-Y/λ=e^(-λt+C)=Ae^(-λt)
t=0のときN=0であるとするとA=Y/λなので

N-Y/λ=Y/λ e^(-λt)
N=Y/λ (1-e^(-λt) )

五十鈴「これでtを無限大に飛ばすとe-λt が0に収束して、λN=Yになるから、最終的な放射能はYに収束するわ。 」
五十鈴「これを飽和放射能というの。」

七海「それ以上放射能は増えないんだね。」
最終更新:2018年06月15日 15:30
添付ファイル