五十鈴「化学線量計の話をする前にG値っていうのを覚えてね。」
五十鈴「これは100 eVのエネルギーを吸収した時に変化する分子や原子の数のことよ。」
七海「100 eVのエネルギーを吸収して、10個ラジカルができたらG値は10ってことだね。」
五十鈴「そう。ラジカル以外にもイオンや励起した分子も含まれるわよ。」
五十鈴「じゃあ化学線量計について解説していくわね。」
五十鈴「二価の鉄イオンFe2+が三価Fe3+に酸化される数が放射線量に比例することを利用した線量計よ。」
五十鈴「硫酸鉄(FeSO₄)やモール塩(FeSO₄・(NH₄)₂SO₄・6H₂O)を用いることが多いわ。」
五十鈴「使う前に空気を吹き込んで酸素濃度を高めておく必要があるわ。」
七海「なんで?」
五十鈴「酸素効果といって、酸素があると鉄が反応しやすくなるの。」
五十鈴「酸素はラジカルになりやすいから、鉄イオンを酸化しやすくなるのよ。」
七海「ラジカルが重要なんだね。」
五十鈴「あとは塩化ナトリウムNaClを少量いれておくとラジカルが安定化して、再現性がよくなるわ。」
五十鈴「ちなみに抗酸化作用のある物質...ビタミンCとかを入れると反応性は一気に落ちるのよ。」
五十鈴「鉄線量計と似ているけど今度は還元反応、Ce⁴⁺がCe³⁺に還元されることを利用して放射線量を測定する線量計よ。」
七海「じゃあこれも酸素を吹き込むの?」
五十鈴「実はこっちは酸素は必要ないの。還元反応を利用しているからね。」
七海「じゃあこっちのほうが使うの楽じゃない?」
五十鈴「ただ、これはG値が低いから感度が低いの。主に大線量の測定に使われるわ。」
五十鈴「あとこれは不純物が入ってると再現性が落ちるわ。」
七海「こっちはこっちでめんどくさいんだね。」
五十鈴「γ線を照射するとラジカルが生成するでしょ?」
五十鈴「放射線化学で説明したように、ラジカルは電子スピン共鳴(ESR)という方法で測定できるから、ラジカルの量を測定して放射線量を見積もるっていうだけのものよ。」
七海「大したことないね。」
五十鈴「あとはアラニンはアミノ酸だっていうことを覚えといてもらえばいいかしら。」
五十鈴「それ以外特に覚えることはないわ。」
五十鈴「これは線量計じゃないんだけど、ここで説明しておくわね。」
五十鈴「スカベンジャーっていうのは捕捉剤ともいうんだけど、反応機構の解明のために用いる化合物よ。」
七海「スカベンジャーを入れるとどうなるの?」
五十鈴「イオンスカベンジャーを入れるとイオンと反応して、それ以上イオンが反応しなくなるのよ。」
七海「そうか、それでその生成物をみれば何のイオンができてるかっていう予想ができるんだね。」
五十鈴「そうゆうことよ。」
五十鈴「スカベンジャーの種類については下にまとめておくわね。
NH₃、H₂O、CH₃OHなど
N₂O、CCl、I₂、ハロゲン化合物など
NO、O₂、I₂、オレフィンなど
最終更新:2018年06月09日 22:49