長汀曲浦のブンカール裏に足を延ばしたのは無論、物見ではなく地図作成のためであった。 |
けれど、ここで正直に告白しよう。 |
その時私はまったく別のことで、気もそぞろだった。 |
この浦にはバストア海の暖流とシュ・メーヨ海の寒流が同時に流れ込む。 |
おまけに汽水域でもある。 |
おわかりだろう。 |
そう、釣りだ。 |
私の知る限りここは、もっとも魚相の豊富な好漁場なのだ。 |
だが、そんな私のささやかな楽しみは地鳴りのような足音で、台無しになってしまった。 |
物陰に隠れると、数名の巨人が目の前を通り過ぎた。 |
またぞろ略奪のために上陸した北方の海賊に違いない。 |
ふと、彼らが巨躯に比して小さな数枚の円盾を腰に掲げているのが目に入った。 |
彼らのではない。 |
いつしか私は、海の民バイキングが住まうという北洋の島に思いを馳せていた。 |
釣りはしばし忘れて。 |
天晶758年 グィンハム・アイアンハート |