この高原で目を引くものと云えば、やはり現地の者が『ホラの岩』と呼び、近づくことすら恐れる巨大な建造物だろう。 |
あえて建造物と云ったのは他でもない。 |
これは奇跡的な偶然が生んだ天然岩でもなければ、神学者が唱えるように神の御技による館でもない。 |
確かに、骨のような白い壁面には継ぎ目すら無く、触ると微かに温かみすら感じられる奇異な材質だ。 |
しかし、明らかに人口建造物と断定できる証拠を、偶然にも私はここで発見した。 |
この証拠を、より確実なものとするため、私は北の地バルドニアへと旅立つことにした。 |
おそらく我が生涯で最も長く危険に満ちた旅となることだろう。 |
残される娘エニッドの身を案じつつ・・・・・・ |
天晶764年 グィンハム・アイアンハート |