誕生してから四十六億年が経った今、地球には大きな環境の変化が起きようとしている。地球上の二酸化炭素の量が急激に増加し、結果として様々な問題が発生し始めた。
それらは、人間を含む地球に住む生物全てに影響を与える事が確認されている。
そして、二酸化炭素の増加の原因が人類にある事も、確認されている。
二酸化炭素が急激に増加し始めたのは、十九世紀の産業革命以降であると言われている。中でも大きな原因となった化石燃料は、今も大量に使われ続け、重要な問題となっている。
さて、二酸化炭素の増加によって起きる問題としては地球温暖化が有名である。
ある程度の二酸化炭素は自然に吸収されるが、吸収されないで大気中に残る二酸化炭素の増加により、気温が上昇するという問題である。
では、自然に吸収された二酸化炭素はどこへ行くのか。
それが今回の研究のテーマである。
今現在、一年間に排出される二酸化炭素の量は、約二百五十億トンだと言われている。その内の約半分は海に吸収される。
結果、自然の二酸化炭素吸収のサイクルは、早すぎる変化に間に合わず、海は酸性化する。
変化が身に感じられる地球温暖化に比べてあまり重要視されてない海洋の酸性化だが、その害は大きく、最悪の場合には海洋に住む生物の食物連鎖が壊れ、大型動物や、我々人間の食物無くなる可能性も指摘されている。そうなれば、陸に住む生物の食物連鎖が壊れる可能性も否定できない。
海水は、若干のアルカリ性である。これまで、海に吸収された二酸化炭素は、自然の力により、何らかの形で二酸化炭素以外の物質へと変えられてきた。これらは<sink>と呼ばれ、二酸化炭素の吸収、大気の循環にとって、とても重要な働きである。
その代表的な働きが、二酸化炭素の固定化と光合成である。
しかし、産業革命前に8.15だった海水のpHは、現在既に8.10まで下がっている。このpHは、今世紀末には7,70まで下がるといわれている。これは今までに類を見ないほどの急激な変化であり、その変化に対応が間に合わない生物が死んでいくとされている。
最初に被害を受けるのは酸性に弱い、殻を形成する生物である。
貝やプランクトン、珊瑚などは、殻を形成する生物は二酸化炭素とカルシウムを結合させて殻を作っているため、海へ吸収された二酸化炭素の一部はそれに使用される。それを二酸化炭素の固定と言い、二酸化炭素を吸収する、大切な活動である。
中でも珊瑚の二酸化炭素の固定量は多く、世界中の珊瑚が固定している二酸化炭素は、大気中の二酸化炭素の約2倍といわれている。
しかし、急激過ぎる二酸化炭素の増加(pHの酸性化)があれば、殻を形成する生物の、二酸化炭素の固定は間に合わず、今度は逆に殻が溶けてしまう。
そしてそこから発生するのは二酸化炭素である。
更に、酸性化の被害を特に受けやすいのは初期発育期である事、二酸化炭素によるpHの変化が一番激しい場所が海洋表層である事から、新たに殻を形成するのも難しくなってくる。
これらの事をまとめると、一つの悪循環が見えてくる。
珊瑚や貝などの炭酸カルシウムが溶けて、二酸化炭素の固定が解除される。それによって二酸化炭素はさらに増加し、比例して海洋は酸性化する。そしてまた更に炭酸カルシウムが溶ける。と言った悪循環である。
固定化以外に海洋中の二酸化炭素を吸収する働きとして注目されているのが、植物プランクトンによる光合成である。
しかし、海洋酸性化はその働き自体にも影響を及ぼそうとしている。
植物プランクトンは二酸化炭素を吸収し酸素にする、光合成を行っている。しかし、光合成には太陽光が必要である。
そのため植物プランクトンは必然的に、海の表層に集まる事になる。ここで、問題は発生する。先ほどにも記述した通り、海洋酸性化によるpHの変化が一番急激なのは海の表層である。
そこで、植物プランクトンは酸性の影響を受け、成長、生殖、耐病性が低下などの問題に見舞われる。それらの問題が深刻化すれば、植物プランクトンが絶滅の危機に陥る可能性も高まってくる。それが現実となれば、光合成は行われなくなり重要な、二酸化炭素吸収の働きが失われることになる。
これまで、植物プランクトンや殻を形成する生物たちは、二酸化炭素を取り込み、海深くに沈めてきた。
それらは人間の生活にはあまり関係の無いものだと思うかもしれない。
しかし、その二酸化炭素を取り込んで海底に沈んだ生物達の化石こそが、今我々の生活に欠かす事のできない化石燃料、つまり石油や天然ガスなのだ。
石油が無くなる、という危機感帯びた記事をいたる所で目にするが、石油や天然ガスを使用すること、それは大昔に地中、もしくは海底に沈められた二酸化炭素を再度、大気中に戻しているといえる。
これはとても大きな悪循環となる。
悪循環の結果、二酸化炭素は増え続けることとなる。
そして、さらに重大な問題がその悪循環によって発生する。
生物は、自分より弱いものを食べ、それをさらに強いものが食べるという繰り返し、すなわち食物連鎖を経て、生活している。
次の図が、生物の生態系を表している。
実際では、植物の割合が圧倒的に多く、動物はほんの少しでしかない。
これを、今回注目している海洋の中の様子に当てはめてみる。
海の食物連鎖は、植物プランクトンを基盤として成り立っている。植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、それを大型の生物(魚など)が食べる、といった具合である。
具体的な数値で言えば、生物は自分の体重の十倍の食物を食べる必要がある、と言う事から、体重100キログラムのマグロが生きるためには1トンのイワシが必要である。1トンのイワシが生きるためには10トンの動物プランクトン、10トンの動物プランクトンが生きるには100トンの植物プランクトンが必要なのである。
つまり、体重100キログラムのマグロが一匹生きるためには100トンの植物プランクトンが必要なのだ。
その、植物プランクトンが絶滅したらどうなるか?
ピラミッドは完璧に崩壊し、海洋に住むすべての生物に影響を及ぼす。そうなれば、海洋だけの問題ではなくなる。
まず、魚を食べる生物が消え、その動物を食べる大型の動物が消える。
そして、ピラミッドに表したとき、その上に来るのは人間だ。
上で述べた悪循環は、二酸化炭素の大量増加を引き起こし、結果として、生物への影響も発生する。
海洋酸性化は、海の中だけの問題ではない。食物連鎖が壊れれば、生態系ピラミッドは崩壊し、被害は人間にも及ぶ。
人間は大量な他の生物を巻き込んだ上で、自分の未来を自分で壊しているのだ。
最終更新:2007年12月25日 11:24