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郵送04 (10)「決勝トーナメント」


[94/12/9] ロボット集+α Vol.4  決勝トーナメント


 トーナメントの組み合わせは決勝進出の8体をリーグに残し、メニ
ューからオートトーナメントを選ぶ、という方法でおこないました。

 なお、引き分けた場合は、最初の4試合の後、ランダムに選んだ他
のマップで再試合を行い、どちらかが勝つまで続けます。以降の試合
のマップは、すべてランダムに任せます。


場所はDESERTとなりました。


ACRYLE(横浜 鯨一) vs SHOOTER(かっきー)
(出現位置の左右はこの表記と同じ)

 時は移り、冬。影ながらも好評を博していたR.C.闘技場も、詰め
掛ける観客は一時に比べれば少なくなった。それでもなお、自分のロ
ボットに魂を吹き込むコンストラクターたち。猛暑が過ぎてみれば、
いつもと変わらない寒さが訪れる。闘技場の北を流れる矢田川の浅瀬
には、冬羽の小鷺が数羽、体をふくらませてたたずんでいる。灰色に
濁る空から白いものが降ってきた。今夜は雪だ。R.C.史上初のナイ
ト・ゲームを誰かが祝福しているのだろうか。寒さで固まるグリスを
低粘度のものに交換するメカニックたち。冬の日暮れは早い。18時
の開場を前にして、闘技場の照明以外は漆黒の闇に包まれ、居住地の
明かり以外は何も見えない。それでも、混雑のため10分遅れて開場
した。深く青い空間の中にまばゆい照明で砂のオーカーが浮かび上が
る。第1回戦第1試合は砂漠闘技場で行なわれた。

 入場用ゲートが開いた。ACRYLEは無限起動を静か動かし、SHOOTER
はチタンのスカートから空気を吐き、砂上を滑りながら入場してきた。
舞い散る砂塵はゲート付近の観客席まで届いた。2体がスタート地点
に付く。4ヶ月ぶりに、シグナルにグリーンが灯った。ACRYLEはス
タート位置から地雷をまきながら右へ進み、右一列を地雷で埋めつく
し、その上で待機する。SHOOTERは前進、壁を感知して旋回し、
ACRYLEの方へ向かう。ACRYLEはフィールドの上方でマシンガンをめく
ら撃ち。SHOOTERがACRYLEの前方に出ると、ACRYLEも回避運動を行う。
お互いにそれを何度も繰り返してしまう。息を止めて見入る観客たち。
タイミングがずれて、ACRYLEが前進。観客が立ち上がる。しかし、ま
た同じパターンになってしまう。このまま引き分けるのか。左側席の
観客は立ったままだ。が、0'43、ACRYLEは動きつづけたため、エネル
ギーが切れてしまった。SHOOTERがACRYLEに向かってキャノンを連射。
ACRYLEファンは目の前の出来事に声を詰まらせたままだ。ACRYLEは為
す術もなく爆発した。ACRYLEの歴史を知るファン達はコンストラク
ターの横浜を取り囲んで、泣いた。地雷上の敵を避けるというその改
良によって決勝に進み、そしてその改良によって敗れた。SHOOTERが
2回戦に進んだ。


ZEAL-02A(ハリセン弾) vs SILKROAD(Oh!Fuji)

 1回戦第2試合には、前回も決勝戦を争ったコンストラクター
Oh!Fujiが出場する。最近の傾向に反して強力な特攻を仕掛け
るSILKROADは、観客の人気も高いようだ。R.C.には幾つかの公式戦
があるが、オンライン仮想空間闘技場での大会の第2回に出場した
RUBEEの潔さを髣髴とさせる。両者共シールドを装備している。いつ
壊れるかに運命を委ねる事になるのか。

 2体がスタートポジションに着いた。シグナルグリーン。ZEAL-02A
は上方で右後ろに下がってスパークをめくら撃ち。SILKROADは既にそ
こにはいない。SILKROADは一歩ずつ前進、ZEAL-02Aは前進したり後退
したりしている。一歩ずつ詰め寄るSILKROAD。ZEAL-02A、後ろは壁だ。
ZEAL-02Aはそこから逃げようと、転回、後退するが、そこはSILKROAD
の目の前。SILKROADのズームアイがZEAL-02Aの映像を捉え、制御プロ
グラムがアームとボディのピエゾ素子シリンダーに信号を送ったその
瞬間、ナックルが鈍い音とともにZEAL-02Aの装甲をへこませた。
ZEAL-02Aはそのまま後退、スパークで報復するも、外れる。直後、そ
の射軸にSILKROADが出る。それを狙ってZEAL-02Aはスパークを放つ。
SILKROADはすかさず振り向き、盾で防ぐ。SILKROADがダッシュで迫る。
ZEAL-02Aは隅にひっかかって逃げれない。すかさずSILKROADは連殴し
た。ナックルが装甲を吹き飛ばし、配線が飛び散る。ZEAL-02Aのボ
ディ中心にあるコンピュータが発火、駆動用モーターが爆発。1'59
SILKROADの拳が万全の装備のZEAL-02Aを葬る。


EARLGREY(酒井 智巳) vs 29-LIVE9(29型TV)

 時刻は20時を廻った。2体の2足ロボットがそろってゲートを
潜った。同型機対決。その組み合わせからも機動で相手を制しようと
する試みが見て取れる。今大会にはこのタイプのハードウエアのエン
トリーは2体のみだったが、2体とも決勝に残った。キャリアのある
コンストラクターの自尊心がこういうロボットを産み出す。試合が始
まった。29-LIVE9は右を向いてEARLGREYの飛び出しを狙う。が、
EARLGREYはダッシュで躱し、29-LIVE9の方を向く。その射軸に
29-LIVE9が出る。EARLGREYはスパークを放つ。特殊な金属版の電極の
隙間に放電した高電圧は4発の弾状に変化して29-LIVE9を襲う。
29-LIVE9はこれを避け、そのままダッシュを続けて、姿勢を整える。
EARLGREYは29-LIVE9の前に出るが、またしてもスパークを躱し、1
HEX先で29-LIVE9の方を向く。何度も躱しあった後、お互いに撃ち
あう。両機とも炎に包まれた。29-LIVE9は弾切れをおこす。EARLGREY
はあとスパーク8発。しかし、EARLGREYの方が多く炎が付いている。
その後、この試合始まって以来のチャンスがEARLGREYに廻ってくる。
位置予測の遠距離射撃が29-LIVE9を捉える。スパークが命中!しかし、
発火はしなかった。EARLGREYは最後の1撃を加えようとするが、外れ
る。
 時間切れ。判定は29-LIVE9。EARLGREYは2発ヒットさせるも、
29-LIVE9の強運の前に倒れた。民放のインタビュアーがコンストラク
ターの酒井にコメントを求めていた「残念でしたね」
「それが人生ですよ」デビューしたシーズンのホッケンハイムでいき
なり2位を走りながらも、あと数周というところでラジエーターにバ
イザーを吸い込んでリタイヤしたジョーダン・グランプリのメカニッ
クの言葉を借りて、そう答えたらしい。
「29型TVさんへ一言お願いします」
「29-LIVE9の優勝を祈ってます」屈託ない表情でそう答えると、雪を
青いビニールシートで避けて焼肉パーティをやりはじめた溝口自動車
のトランスポーターの方へ去っていった。


KITTY(山崎 潤) vs SLIDE7L(頼田 俊哲)

 この夏で闘技場の壁の大部分を覆うまでに生長したアイビーの葉に
雪が積もり、風があるたび雪の結晶が空気中へ消えていた。ピットは
半分シャッターを閉め、雪の侵入を防いでいる。闘技場の備品の円筒
型をした石油ストーブのまわりにピット・クルーが集まり、暖をとり
ながらモニターの中継を見つめていた。砂の上にうっすらと雪が積
もっている。もっともクローラーとホバーでは、グリップに影響はな
い。ライトで光りながら舞い落ちる雪を見つめながら、ポジションに
着いた2体のロボットが開始のシグナルを待つ。管制塔の競技長がボ
タンを押すと同時にシグナルはグリーンに変わった。両者共に後ろへ。
SLIDE7Lはスタート地点をめくら撃ちした。その後、KITTYの目の前を
大胆に横切り、振り返って体勢を調えるSLIDE7L。KITTYはSLIDE7Lを
発見し、レーザーを打ち込むが当たらない。SLIDE7Lは攻撃を躱した
後、射軸を外したまま後退、スパークでスライドショットを放つが、
無駄に終わる。KITTYはまったく動かないままエネルギーをチャージ
していた。観客は凍えて見守っている。KITTYがSLIDE7Lの前に出る。
KITTYは再びレーザーを発射。かわされる。すぐにSLIDE7Lはスライド
ショット。命中。発火。SLIDE7Lは数秒毎に動き、KITTYの射軸の手前
で引き返す。そして、スライドショット。これは外れる。KITTYが
SLIDE7Lに近付いてくる。SLIDE7LはKITTYの隣を掠め、一気に離脱。
KITTYはレーザーを撃つが、空しく壁に吸収された。もう、KITTYには
エネルギーをチャージする時間はない。タイムアップのアナウンス。
SLIDE7Lは巧妙な作戦でまったくダメージをくらうことなく勝ち進ん
だ。


★★ SHOOTER(かっきー) vs SILKROAD(Oh!Fuji)

 すべての車検が終わり、車検場のゲートも閉められた。横の扉から
出てきた数名のベージュのジャンパースーツを着たオフィシャルが駐
車場側の暖房の効いたスタッフルームへ駆け込んだ。
 既にスタートポジションに着いている2体のマシン。古代中国の特
産品であった絹がその道を通り、西アジアを経てヨーロッパ・北アフ
リカへもたらされたからいう中央アジアを横断する東西交通路に対し
て付けられた名前を持つ、SILKROAD。薄紫のボディに雪を被りながら、
照明を冷たく反射していた。SHOOTERの柿色のソーラーパネルにも雪
は落ちるが、ホバーから伝導する熱で水になり、儚く消えていく。

 試合は静かに始まった。SILKROADは一歩前で相手の出方を待つ。
SHOOTERはまだその場にいる。お互いに数秒毎に動いていく。SHOOTER
の前にSILKROADが出る。SHOOTERはキャノンを撃つが、ダッシュでか
わす。SILKROADの頭上の雪が落ちた。またSHOOTERの前にSILKROADが
出る。キャノンを撃つが、ダッシュでかわされる。これを何度もくり
返し、お互いに全くダメージが無い。しかし、今度は先に壁があり、
SILKROADは行き先が無い。しかし、キャノンは盾で防がれる。そのま
ま、時間切れ。引き分ける。

 つづいてアスファルトも全く同じ試合展開。時間切れ。引き分ける
(実際にはこの試合と次の試合は29-LIVE9 vs SLIDE7Lのあとに行い
ました)。

 最後の闘技場は森。今度はSILKROADが左に配置された。木々は特殊
素材で覆われているため、全く白くなっていない。広葉樹なのに葉は
すべて付いたままだ。地面の草に積もった雪がライトの明るい光を反
射していているため、木々は下側から照らされ、葉が鮮やかな黄緑色
に発光して、幻想的な光景だった。ロボットも下からの光線を反射し
て、何時もと違うものの様に見えた。
 試合が始まった。SILKROADは森でも一歩前で相手の出方を待つ。
SHOOTERは木の間をぬって右に逃げる。SILKROADは一歩ずつゆっくり
追い詰める。SHOOTER逃げながらキャノンを1発づつ置いて行く。
SILKROADはダッシュしてこれをかわそうとするが、壁に当たる。しか
し、またもや盾がふせぐ。0'52、6HEX目からSHOOTERのサーチ可
能エリア内に進入するSILKROAD。そのため動作が一瞬遅れ、かわそう
と横を向いた瞬間、丁度キャノンがSILKROADの脇腹を捉える。痛恨の
一発。アクティブに動いたため、0'07にSILKROADは燃料が切れた。そ
こにSHOOTERのとどめの連射。SHOOTERが決勝にコマを進めた。
SILKROADの最後まで攻めた姿勢に観客からも多くの拍手が送られた。
この試合には負けたが、62体中3位という成績をこの闘い方で勝ち
抜いてきたのだ。


★★ 29-LIVE9(29型TV) vs SLIDE7L(頼田 俊哲)

 舞台は再び砂漠。何度かの再試合で、時刻は既に22時半を廻って
いた。熱心な観客達はまだ帰ろうとしない。前の試合中に砂漠の雪を
取り除く整備が手作業で行なわれた。スタッフルームに戻ったイエ
ローのスーツのグランド・オフィシャル達は、溶けた雪がまた凍り、
がちがちになったグローブを脇の下にはさんで苦労して引っ張ってい
た。スーツにくっついたりした。うまく最初に外した背の高いオフィ
シャルが指が動くようになったらしく、他のメンバーのグローブの指
先をつまみ、引っ張っていた。ストーブで溶かしていたもの達は、外
したのはいいが手がかゆくてたまらないらしく、ひざを曲げ、太股の
あいだで手をこすりまくっていた。モニターを見ると、2回戦最終試
合が始まっていた。

 SLIDE7Lはいつもの様にめくら撃ちをした。29-LIVE9はこれをかわ
す。SLIDE7Lは29-LIVE9を発見、スライドショットを開始。が!既に
先回りした29-LIVE9の目の前だ!SLIDE7Lはスパークをくらってし
まった。壁際からSLIDE7Lは一気に逃げようとするが、そこも
29-LIVE9の目の前!スパークを再度浴びる。29-LIVE9は後退歩行し、
1HEX下がる。この動きには何の意味があると言うのか。その時、
彼方からSLIDE7Lの放ったスパークが、29-LIVE9のもといた場所に到
達した。29-LIVE9は未来を知っている。騒めいていた観客が天使が
通ったように静まりかえった。沈黙して勝負の行方を見守る。
SLIDE7Lは逃げ、再びスパークを放つ。しかし、29-LIVE9の横を空し
く素通りしてゆく。その後、お互いに複雑で何をしているか分からな
いような動きを披露しあう。ラスト7秒、29-LIVE9のスパークはまた
してもSLIDE7Lを捉える。見事な戦術でKITTYを倒したSLIDE7Lを、手
玉に取った29-LIVE9。圧倒的な動きでSLIDE7Lを下した。観客は黙っ
たまま、今の試合を反芻していた。


★★★ 29-LIVE9(29型TV) vs SHOOTER(かっきー)

 観客席に、前回KR-20A2で決勝を争ったコンストラクターKOOの
姿があった。気付いたイタリア国営放送のインタビュアーと日本人通
訳がコメントを求めた「今大会は敗者復活戦で敗れましたが、次回に
向けての偵察ですか?」
「この試合を見届けたとき、僕の中で大会が終わるんです」

 2体はすでに、スタートポジションでシグナルを待っていた。決勝
はアルゴリズム勝負型のマシン同士の対決となった。29-LIVE9は、中
央側を向いて待つ。風が29-LIVE9の足元の雪を散らしていた。ライト
の照らす闘技場をSHOOTERは前進してゆく。共に出くわす。SHOOTERの
センサーが29-LIVE9を捕捉した瞬間、リレーが入りファンが急速逆転、
激しい勢いで後退。29-LIVE9はSHOOTERの方に転回する。その後、
29-LIVE9は一気にダッシュし、振り向きざまにスパークを撃つ。当た
らない。しかしその後、数HEXでSHOOTERを捉え、再びスパークを
放つ。今度は命中した。その後、また体勢を整えた29-LIVE9の前を
SHOOTERが横切り、29-LIVE9はすかさずスパークを打ち込む。命中、
発火。さらにもう一発。SHOOTERは深い炎に包まれる。0'38、29-LIVE9
の前に飛び出したSHOOTERをスパークが捉える。モーターの燃えつき
たSHOOTERが、静かに力尽きる。時代を超えたロボットは、いつも突
然現れる。29-LIVE9は未来を知っていた。まだ降りつづける雪の中、
表彰式は行なわれた。


 上空から静かに舞い落ちる白いものは既に十数センチもつもってい
た。出口から吐き出されるように帰途につく観客。闘技場の時計が
12時を指し、日付が変わる。鉛色の空に向かって聳え建つすすけた
煉瓦色の闘技場の壁が、水銀燈の明かりを静かに反射している。重い
空気の底で、次の大会を待つ闘技場は、ひととき眠りに就く。




         <第4回郵送ロボットバトル大会最終結果>




優勝  29-LIVE9   29型TV
準優勝 SHOOTER   かっきー
 3. SILKROAD  Oh!Fuji
 3. SLIDE7L    頼田 俊哲
 5. EARLGREY  酒井 智巳
 5. KITTY     山崎 潤
 5. ZEAL-02A   ハリセン弾
 5. ACRYLE   横浜 鯨一

最終更新:2022年01月23日 19:40
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