PACS、電子カルテ、RISと医療情報システムを導入し、患者氏名のローマ字が統一されてなかったことを重大視し、その原因を追究したときのいきさつです。
それは、また動的な放射線医療機器の更新に伴う、落とし穴であり、情報システムに携わる者にとって、介入できるポイントでもあります。
当院では、FPDシステム(以下FPD)に更新時に、患者氏名のローマ字情報が他のモダリティと統一されていないことで発覚しました。
問題1.)そもそもモダリティ装置は、基本機能としてRISから送信された情報を全て継承致するだけである。 たとえ、その間または、モダリティ-PACS間に、他のインターフェースが存在したとしても同様である。 当院では、FPDは、コダック設置のRIG端末からの送信情報を継承しています。
問題2)PACSのタグ(0010、0010)にローマ字が入っていなかった。
A2.)コダックRIG(正確にはRIS)からFPDが受信している患者名情報は、
漢字(全角)及び半角カナのみです。(補足1を参照)
従いまして受信していないローマ字をFPDがPACSへ出力する事は出きない。よって、PACSシステムのほうで、ヘボン式ローマ字を形成させていたために以前とは異なる形式のローマ字が作成されてしまった。
補足説明
【補足1】FPDがコダックRIG(正確にはRIS)から受信している基本情報は以下の通りです。
受信した、これらの内容は全て項目名に対応するDICOMタグへ出力している。~
項目 | 受信データ例 |
StudyInstanseUID | ○1.2.392.200001.1001.4.2.5.10000038.99.4.23.2004030198161249 |
検査ID | 2004030198161249 |
患者ID | 00099912812 |
患者名(漢字+半角カナ) | ○ =日赤^太郎=ニッセキ^タロウ |
性別 | ○ F |
生年月日 | ○ 19511016 |
検査記述 | ○ 整形外科 |
※確認に使用したログ内容抜粋
00080050 | SH | 16 | // Accession Number | //2004030198161249 |
00081030 | LO | 8 | // Study Description | //整形外科 |
00100010 | PN | 44 | // Patient's Name | //=日赤^太郎=ニッセキ^タロウ |
00100020 | LO | 10 | // Patient ID | //00099912812 |
00100030 | DA | 8 | // Patient's Birth Date | //19511016 |
00100040 | CS | 2 | // Patient's Sex | //F |
0020000D | UI | 60 | //Study Instance UID | //1.2.392.200001.1001.4.2.5.10000038.99.4.23.2004030198161249 |
【補足2】DICOMで規定されている患者名の取り扱い
DICOMタグPatient's Name (0010,0010)について、日本国内に関係する箇所の基本定義を説明致します。
このタグは1つのタグの中を”=”(イコール)で結ぶ事で3種類の形式の患者名データを同時に格納できます。
それぞれをCOMPONENT1~3と表記します。
COMPONENT1 | 全角の表音文字 |
半角のローマ字または半角のカタカナのみ格納可能 | |
ローマ字とカタカナの混在は許されません。 | |
許されない格納データ例)”ヌマタ caren マキ“ | |
COMPONENT2 | 全角の表意文字 |
漢字のみ格納可能 | |
COMPONENT3 | 全角の表音文字 |
全角ローマ字または全角カタカナまたは全角ひらかな | |
ローマ字とカタカナの混在は許されません。(COMPONENT1と同様) |
問題2)に対する補足:上記解説がDICOM規約ですがCOMPONENT3については、以前より未だ、モダリティーメ
ーカーにより解釈に誤りが発生している場合が多いです。
また半角のローマ字及び半角のカタカナを同時に使用したいと希望される施設もあるため、それぞれの事情を考慮してCXDIはCOMPONENT3に半角文字(ローマ字やカタカナ)を受信可能としています。
補足1の患者名情報の通り、当院仕様では(COMPONENT2及び3)で
“=日赤^太郎=ニッセキ^タロウ”と受信しています。~
※COMPONENT2は漢字だがCOMPONENT3が“半角”カナ但し、それらの出力はPACSが受信可能または(今回の様に)PACSから要望された場合のみ行っています。
【補足3】フイルムネームへの患者名表示
当院FPDではフイルムに印字する患者名の属性を以下の様に指定する事が可能です。
(PACS出力とは無関係です)
患者名印字指定マクロ 優先順位~
%PNBYTE% | COMPONENT1 | |||
%PNKANJI% | COMPONENT2 | |||
%PNKANA% | COMPONENT3 | |||
%PNAME% | COMPONENT2 | COMPONENT3 | COMPONENT1 |
A4)に対する補足:%PNAME%と指定した場合、RIGから受信した患者名の組合わせに対して、 以下の表のルールに対応するデータを印字します。
COMPONENT1 | COMPONENT2 | COMPONENT3 | 印字される内容 |
○ | COMPONENT1 | ||
○ | COMPONENT2 | ||
○ | COMPONENT3 | ||
○ | ○ | COMPONENT2 | |
○ | ○ | COMPONENT3 | |
○ | ○ | COMPONENT2 | |
○ | ○ | ○ | COMPONENT2 |
Q3)に対する補足:当院の環境で可能なフイルムネーム設定は以下の通りです。
COMPONENT1 | COMPONENT2 | COMPONENT3 | |
受信しているデータ患者名 | - | 日赤^太郎 | ニッセキ^タロウ |
%PNBYTE% | - | ||
%PNKANJI% | 日赤^太郎 | ||
%PNKANA% | ニッセキ^タロウ | ||
%PNAME% | 日赤^太郎 |
現在は%PNKANA%指定によってフイルムの左上に角カナ患者名が印字されているはずです。 印字設定は複数個や複数箇所の指定が可能ですから、必要に応じて半角カナ患者名に加えて、漢字患者名 同時に印字する事も可能です。 但し、半角ローマ字に関してはRISまたはRIGから受信するデータが無ければ印字しません。
システムとしての患者名表記方式見直し
FPDはモダリティ装置の位置付けの為、基本的に上流から受信する情報に依存します。
下流へ出力する内容は上流からの情報を変換など不可能です。
また、導入前後に渡りRIG~CXDI~PACS間の接続に関する取り決め内容以外の情報は知らされておらず、
全体をコントロールするに充分なレベルではなかった。
1.病院システム(HIS/RISその他)・各モダリティーで取り扱えるデータの明確化が必要です。 ※RISより上位についてはRISメーカ様とご確認下さい。
2.対応レベルが標準対応かカスタマイズ対応で可能かなどについても明確な確認が必要だと考えます。 ※各社様とも費用発生などの可能性が考えられます。
3.富士通(訓令式)~RIS~RIG~CXDI(ローマ字無)~PACS(ヘボン式)の現仕様確認と様式の統一指示施設の要望、影響度を考慮の上、方針の検討と各社への統一指示を行うことが重要です。