【ACE】【赤い八咫鴉】
龍凪 零慈:
かの戦争から、約一ヶ月の月日が流れた。
あれほどの大きな激戦があったにも関わらず、この小国は紛れも無い平和を保っている。
尤も、この結末に不満を抱く人間も居る訳だが。
「あれだけ大規模な戦いを起こした事は賞賛に値するが……。見返りはつかなかったな」
凍りついた空気を溶かしたのは、テンペストの大佐を担う蒔寺 楓である。
「いいじゃねーか、どっちにしろ全力でぶつかり合えたんだからテメーも問題無いだろ」
続いて口を開くのは、テンペストの創設者であり長でもある龍凪 零慈だ。
彼の思惑としては、この一件をキッカケに何処かしらで戦争が始まって欲しかったらしいのだが……、思惑は泡となって消えたようだ。寧ろこの戦いで力を発散した各勢力は、暫く各員の休養に精を出している所も少なくない。当然こちらもそうである。後の事を考えずに戦いを始めた彼の失態と言えよう。いつもの事である。
「あ、そういえば一升庵のお二人さんから電子メールが届いてますよ」
人数分の湯飲みを運んできたのはツバキ准将である。可哀想な事に、将軍級の階級を与えられているのにいまだ雑用を一任されている。
「ん、そうか。颯、読み上げてくれるか」
「了解」
手際の良い指捌きで、モニターにメール内容を映し出したのは草薙 颯准将である。彼もまた、ツバキと同じ道を歩んでいる雑用管理者である。
「一通目はプリンセス・華悪凛・タイトネイブさん、二通目は愛沢 清さんからですよ」
「なんだ、この前の戦いの時になんかやらかしたか?俺」
そんな事聞かれても誰も分かる筈も無い。とりあえず、慣れない手つきでキーボードを叩くと、メッセージが拡大される。
『ははは、三位は頂いて行きましたよ~♪ 今後とも宜しくお願いします♪』
『特性と同じく中途半端でごめんなさい……でも二位って結構凄いですよね。零慈さんも準決勝ぐらいまでは生き残れるように頑張って下さいー。』
ミシッという、湯飲みに亀裂の生じる音が響く。犯人は勿論ヤス……では無く零慈だ。実は今回の戦闘、二位と三位は一升庵の二人の手中に収められていたのである。因みにこの戦い、主催者本人はいつも通り死亡フラグを立てて二回戦で散っている。
「お……あああああ!」
何かしら言い返してみたかったのだが、如何せん事実を突きつけられているので返す言葉も無い。とりあえず今にも拳の力で砕けそうな湯飲みを颯に投げつける。投げられた側と片す側からしたらいい迷惑である。
「しかしまぁ、私の一位という栄光は変わらんのだからいいではないかね、ワトソン君?」
余裕飄々とした態度で楓は持っていた雑誌のページをめくる。そう、彼女は激戦の末に去年度の最強プレイヤーとして名を輝かせていた。
「誰がワトソンだ、勝手に助手にしやがって!」
零慈が部屋に戻ろうとドアノブを握り締めた瞬間、向こう側から零慈をドアもろとも吹っ飛ばして一人の美女が飛び込んできた。
「皆さーん、騎士王の帰還ですよっ♪」
ドアと共に壁にめり込んだ零慈を無視して、楓は「お帰り」のサインとして手を振った。どうやら続きのページが気になって声を出すのも億劫のようだ。
「あ、お帰りなさいセイバーさん。ミルクティーのパック買ってきてくれました?」
このような事は日常茶飯事なのか、ツバキも彼を無視してセイバーの方を振り向く。
「勿論バッチリですよ~♪それにな・ん・と……おいしいおやつもありまs」
「お前なぁ……!」
壁から脱出した零慈が後ろから飛び蹴りを食らわす。無論の事、彼女にその程度の攻撃が避けきれない訳が無く、スケープゴートとなったツバキが楓の元へと吹っ飛んで行く。
「あ、ごごごめんなさい楓さん!謝りますから許しt」
「いいよいいよツバキ、君が悪くない事はお姉さんも知っている。時に剣帝もどきと騎士王、幾らお二人でも私のささやかな休息を邪魔するのなら容赦しないがそこの所どう思うかな?」
「誰が剣帝もどきだ!てめえ、流石の俺もキレる時はキレるぞァァ!?」
「全く、確かに私にも非はありますが……あまり他人を怒らせるような態度を取ると、お仕置きしちゃいますよ?」
休息といえども、一日の約半分以上が自由な彼女にとっては一時でも何でもないし、零慈は言うまでも無くいつもキレてるし、セイバーに至っては先ほど零慈を怒らせたばかりである。三人とも言えた口じゃないだろう……とは残ったツバキと颯には言えなかった。
さて、三人が三つ巴の内部大戦争を勃発させた直後に突然モニターいっぱいに仮面の男が映り出す。
「ん、誰だこれ」
声のした方向からは、額からボトボトと血を流しながら零慈が死に体で歩いてくる。恐らく瞬殺されたのだろう。
「ああ、これフリーダムさんじゃないですか?」
「あの独立愚連隊の将、か」
テキパキと部屋を片付けていたツバキと颯がその手を止めて説明口調で話し始める。
「この前の戦いで一升庵さんに初敗を喫したらしいですよ。」
「それで今度はテンペストに、って思惑みたいだな」
「……ほー、面白ぇ。この前の寝落ちキングダムだっけか?あそこを侵略した時は虐殺されちまったしなぁ……連戦ってのも悪くねぇ。それに初敗って事は今まで勝ち続けてきたんだろ?」
「フッ、零慈らしいな。開催期日は二月の十三日。場所は東にある大聖堂跡地と書いてあるが、今から準備しておくか?」
「当たりめぇだ。ツバキ、お相手さんに通達してやりな」
「はい、何と?」
「俺らジーク・ネオ・テンペストはアンタら全員に宣戦布告するってなァ!ハハハハハ、こいつは盛り上がって来たぜェ!」
行動力の早い事で、零慈と颯はすぐに機体の強化に格納庫へと走っていく。その途端、ツバキの顔が真っ青になる。
「ん、ツバキ……どうかしました?」
「どうした、気持ち悪くなっちゃったか?よし、私が抱擁してあげよう。さぁ、こっちへおいで」
彼の様子に気付き、セイバーと楓は戦いをやめてツバキの元へと駆け寄る。しかし、ツバキは固まって動かない。
「……今の」
「ん?」
「い、今の放送……残存する全勢力に送っちゃったんですけど…」
……セイバーと楓も、一挙に口を開かなくなった。
「…それって、どこら辺から?」
「零慈さんの『俺らジーク・ネオ・テンペストはアンタら全員に宣戦布告するってなァ!ハハハハハ、こいつは盛り上がって来たぜェ!』って所だけ…」
その場に居る三人の血の気がサーッと引いていく。
「…ま、まぁホラ!一応言ったのはリューナギですし!いざとなれば逃げればいいですから、ね、ね?」
「そ、そうだな。私もそういう解釈をさせて貰おう、あははは」
「そうですねー……アハハハ…」
涙の入り混じったツバキ達の笑い声も知らず、零慈と颯はいそいそと迫り来る敵への準備を進めていたのである…。
「……ふむ、やはりあの男は何を考えているのかちっとも分からん」
恐らく昼飯であろうパンをもぐもぐと食べながら、男は一つの勢力へと電話をつなぐ。
「こちらMANIA管理局の
シドニーだ。そっちは一升庵で間違いないか?」
『ええ、合ってますよー♪どうかしましたか?』
「華悪凛、君の所にも行き届いていると思うが…」
『あー…テンペストの件です?』
「ああ、そうだ。恐らく向こうの手違いだとは思うんだが……」
『あははw龍凪君の考える事はよく分かりませんからね……意外と本気でやってたり?』
「まさか、彼らの勢力はつい最近どっかの勢力と戦争したばかりだぞ?そんな戦力が残っているとは思えないが…」
『ぃゃー……でも、向こうには騎士王と去年最強のパイロットがいるんですよ?龍凪君は……ともかく、意外と本気で言ってたりw』
「真相は定かではないが……万が一君の所に攻め入って来たとしたら、向こう側の人間と話し合ってみた方が良いだろうな」
『分かってますよw無理な戦闘はしませんってw(まぁちょっとぐらいなら遊んでみても…いいよね?w)』
「あぁ、それじゃ宜しく頼むよ。フリーダム君の所はともかく、今回は「正式な勢力」からの発言だ。最悪の場合は他の勢力から総攻撃を受ける危険性もある。
何かあったら「例の計画」にも支障をきたすし、ここで彼らを失うと……後々厄介だろう?」
『それもそうですねー……分かりました♪私達の所に来たらシドニーさんに連絡しますよw』
「ああ、宜しく頼むよ。」
受話器を置くと、ブチッと回線の切れる音がする。
「全く……これで壊滅、なんて事にならなきゃいいんだが……」
シドニーは頭を抱えながら、全てを忘れるようにベッドへと飛んだ。
しかし、これから始まるテンペストと独立愚連隊の戦いがこの戦況を一変するのは、また後の話である……。
年の初めに開催して「エピローグもありますよ」とか言ってたのに設置したのは一ヶ月後。本当に申し訳無い\(^o^)/
非常に遅くなりましたが、ベスト3を手にした楓さん、華悪凛さん、愛沢 清さん、真におめでとう御座います。また、上位には食い込めなくとも参加して下さった方々に感謝申し上げます。
さて、とりあえずトナメの通りですが……勢力員の皆はともかく、シドニーさんと華悪凛さんと愛沢さんとフリーダムさん、ご協力頂き有難う御座います(シド兄さんとフリーダムさんに関しては許可も貰わずに勝手に使ってしまいました。許してください。いやホントに)。
トナメと同じく、一応宣戦布告はしておきます。勢力戦はいつでも受付中で御座いますが、一応フリーダムさんのトーナメントが終了してからでお願いします。
事前に申し込んで頂ければフリーダムさんのイベントトナメ終了直後に設置させて頂きます。
とりあえず大会形式はバトロイです。特に規制は無いので奮ってご参加くださいませ!
【形式】バトルロイヤル
【賞金】 無し
【参加条件】
機体自由
【大会ルール】
地形なし、1戦毎に回復、戦術あり
最終更新:2008年02月03日 20:29