「いやー、つるねぇからの手紙が来たんだけど。お菓子食べに来たよー?」
その第一声が衝撃の始まりだと、その時千里(せんり)は知らなかった。
千里は賽と同じテーブルで、ファンタのボトルの形について軽く雑談を交わしながらシュークリームを口に運んでいた。
店長たる月流子は奥で店員たる冥土と『2000シリーズ THE 炒飯の達人2』に興じており、カウンターには不機嫌そうな会計たる蒼津が店内に目を光らせていた。
ハイネとお付きオペレーターのE.Sは、ストロベリー満載のケーキを摘みながらストロベリっていた。
「あれー? 謀(たばかり)? 蒼さん? ってか、つるねぇは?」
入ってきたのは、全体的に妙ちきりんな可愛い女子だった。
わざとらしくきょろきょろ店内を見回している。
「どうした、特殊任務部隊のエージェント」
声をかけたのはチョコシューを頬張っていた賽だった。口ぶりからして知り合いのようだ。
どうやらこの女は特殊任務部隊のエージェント(他称)らしい。なるほどなるほど。
そんな馬鹿なことがあってたまるか。
応じて、ひらひらと取り出した手紙を振るエージェント(他称)。
ジムをクローで貫くシャア専用ズゴックの切手だった。趣味は劣悪らしい。
「んー? 説明的な台詞で説明した通り、何かお誘いというか、そんな感じ」
「何だ。つるねぇ、あのシャア専用スタンプシート使ってるのか」
お前が真犯人かよ。
それにしてもこの切手。三倍速で届きそうな勢いである。
そんなことを暢気に考えていた千里は驚いた。
賽と話す為に近づいてきたのではないかと思われていたそのエージェント(他称)は、何故か手紙を千里の方に突き出していたのだ。
「あなたがセンリくん?」
「そうですけど」
「おおきくなったねー。あとイケメンにもなっちゃってまー」
千里は疑問符を浮かべた。
まったく気を置かない話口調から知り合いらしい感じがするのだが、まったく覚えが無い。
そう悩んでいるうちに、何時の間にか接近されていた。耳元、自分にしか聞こえない小声で一言。
「狙ってるのは……賽って人かな?」
下世話な流し目だった。
咄嗟にノーと言いたかったが、そこで突然ぐいっと視界に手紙。
手紙に書かれた名前が見えた。嫌な予感が過ぎる。
差出人には、“千里”。
「はい、おねーちゃんからテ・ガ・ミ」
「どうしたチサト、ヤツから手紙か? ……おーい」
驚愕のあまり雷のエフェクトが落ちる。
面倒臭いと言わんばかりに封を破り、中身に目を通した今の千里はまさにそれであった。
そんなことをしている間に、店の奥から月流子がやってくる。その手には、冥土とゲームに興じながら摘んだであろう柿ピーが乗せられた皿があった。
「思ったよりも早かったねー。まあ、大したものじゃないけどこれでも食べて」
カウンターから出てきた月流子は、どん、と空いていたテーブルに持っていた皿を置いた。到底、洋菓子店の店長とは思えない行為である。
しかもすぐに奥に戻ってしまった。手紙を出して招待とは思えない杜撰な対応である。どうやら、『炒飯の達人2』が相当気になるらしい。2Pプレイ時の白熱さは異常だ。
しかし、特に気にする様子も無くうめえうめえと言いながら柿ピーを摘むエージェント(他称)。この反応を見ていると、杜撰でもなんでもなく適切な対応だったのかもしれないと思えてしまう。
「……ん? んん?」
が、柿ピーを素早く半分ほど平らげたあたりで何かを察知したようで、謎の唸りを上げるエージェント(他称)。
暫くうーんとかううーんとか唸っていたものの、誰も反応しない。
チョコシューを平らげて携帯機ソフト『ポケットモンスターハンターSilver』に興じる賽。
手紙の内容の衝撃から立ち直りつつも周りの奇妙な空気から逃げるべく何度も何度も文面に目を通すフリをしている千里。
カウンターに陣取り不機嫌そうながらも店内の警戒を怠らない蒼津。
ストロベリー満載のケーキを摘みながらストロベリっているハイネとE.S。
「ねぇ? あの人何? なんか視線ハゲシイぜ? だぜ?」
流石に唸っているのに飽きたのか、千里に耳打ちするエージェント(他称)。
ひっそり囁くように、注意を払いながら指で店外のある方向を指し示す。まるで相手に気づかれないように。
一見何もないように見えた。しかし、目を凝らしてみるとそこにはフェイスペイントと迷彩服で擬態しつつ双眼鏡を構えながらホフクしている怪しい人影がいることが解る。
「あー、アリスさんですね。あの人は何故か知らないけどつるねぇさんにゾッコンのとても変態な――」
ああ、あの人か、と頷くエージェント(他称)。噂くらいは聞いたことがあるらしい。
そこで千里は言葉を止めた。
カウンター、即ち蒼津の方向から何かガチャガチャという洋菓子店においてあり得ない金属の擦れる、洋菓子店という場所において決定的すぎる異音が聞こえたからである。
恐る恐る顔を向けてみると。お手軽に組み立てられていたのは、何処から取り出したのかよく解らない対戦車砲らしきものであった。
「ちょっ、蒼津さんストップ! ストップ!」
「好きにやらせておけチサト、男には戦わなければならないこともある」
「男じゃないじゃないですか! っていうか真面目にヤバいって!」
「揚げ足を取るなよ、みっともない。それでもお前は日本男子かってまたルギア潜った! このチキンめ! 残り時間十分切ってると言うのにルギア! それでも古龍種の末裔かルギア! Gタル爆フルで持ち込むぞルギア! 四人がかりでフルボッコするぞルギア!」
ノリで口を挟む賽だったが、目の前の携帯機に潜む強敵を前にまた画面に集中し始めた。何時見ても忙しい人である。
っていうか、止めろよ。寧ろ止めてください。
「まーまー、蒼さん。ここは私に任せてよ」
意外な場所からの支援――口を挟んできたのはエージェント(他称)。
初めて千里はこのエージェント(他称)に対して好印象を持った。
しかも驚くことに、蒼津は渋々とは言え組み立て式バズーカを解体していくではないか。
千里は感嘆した。
実はこの変てこりんな可愛い子は自分もまだ知らぬ巨大な器の持ち主なのではないかと……!
明確に蒼津から了承を得たわけではないが、沈黙を了承と取ったエージェント(他称)は外へ出て行くと、何やら怪しげな口上で外のアリスに向かって呼びかける。
『つるねぇが奥で××××してるー!』とか『今■■■■■みたいな感じですごく○○○!』とか何か適当なことを言っている。
よくもまあこんな口上をいけしゃあしゃあと言えるものである。自分なら後が怖くてとてもとても言うことができない、と千里は思った。大物というレベルではない。
しかし反面、アリスには効果覿面な文句であることは認めざるを得なかった。
洋菓子店――もといつるねぇにアタックするにおいて最大の障害たる蒼津がいるにも関わらず店内へ入ってきたのが何よりの物的証拠であった。
「貴方がつるねぇにゾッコンのアリさん? 噂には聞いてるけど」
「それはどうも。早速で悪いんだけど、名前が一文字足りないわ」
「じゃあ、アリババさん?」
「二文字も増えてる上に全然違うわ」
とてつもなく不機嫌そうだった。
名前を間違えられたのは勿論だが、釣られた餌が釣られた餌だったのが一番の原因であることは言うまでもない。
何やら惜しかったねーとか宥めている。そういう話になっているらしい。
千里は傍観していた。
賽は携帯機の中のルギアと奮闘していた。
蒼津はカウンターで何か妙な動きをしたら殺すとでも言いたげに虎視眈々と目を光らせていた。
ハイネとE.Sは紅茶を啜りながら談笑していた。
「代わりと言っては何だけど、つるねぇの昔話でも聞く?」
「昔話とな」
何故か時代劇な口調になって過敏に反応するアリス。
昔話、とは言ってもまた嘘八百じゃないだろうな。……と、疑念を持つ者は千里だけだった。
何故なら、その場にいる他の人間は自分のことに集中し、集中し、集中していたからだ。
「実はつるねぇって昔、音楽業界にいたことがあって。バンド名はゲインズ・ペインズ・ピュア・リッパーズっていうんだけど」
何の前フリもなく、最初から最後まで徹底的にクライマックスに千里は吹き出した。
器官に何か入ったらしく、ゴホゴホむせる。
「どうした。何かどうかしたのかチサト。こっちは討伐したぞ上位ルギア。部位破壊は全部やったから深海帝素材もいっぱいゲットだ」
「そんなことは置いといて、リッパーズって言うと――」
「そうだな。お前の姉二人がやっていたバンドの名前だな。って言うか何だ、知らなかったのか」
「知りませんよそんなこと」
「てっきり知ってるもんだと。ってことは、そこのエージェントのことも知らないわけだな」
話題にされていることに気づいたのか、んん、首を傾げるエージェント(他称)。
「彼女は、天夜 流雨流(あまや・るうる)。つるねぇやお前の姉二人と、嘗てゲインズ・ペインズ・ピュア・リッパーズ――通称GPPR、リッパーズというバンドを組んでいた女だ」
紹介されて、改めてよろしくねーと笑う流雨流。
謀 賽(たばかり・さい)もかなりあり得ない名前だが、天夜 流雨流というのもなかなかにあり得ない。そんなこと言ったら九野 月流子や高天原 冥土も厳しいし、そもそも蒼津や千里ってナニよ? という話になってしまうがそこは愛嬌だ。
加えて、ガールズバンドとは思えないバンド名だ。明らかにメタル、それもデスメタとかそんな感じ。……ツッコミどころが多すぎる。
「あのときはー。ほらぁ、私と、チサトと、チリとで……」
「ち、ちょっと……全然知らないわよ、そんなこと」
「話す必要ないって思われてるんじゃ?」
カチン。
何かのキレる音がした。
言葉はそこで切れた。否、強制的に中断された。
重力を無視してほぼ床と垂直の軌跡を描く“何か”の“脚部のようなもの”がアリスの首筋を綺麗に捉え――
アリスが意識を失ったのは一瞬のことだった。その最後まで、何が自分を昏倒させたのか理解すらできていなかったのではないか。
倒れたアリスを見下ろしていたのは、言ううまでもなく蒼津であった。
ゴミ袋を収拾車に投げ込まんとして持ち上げたかのようなぶっきらぼうさでアリスの細い身体を持ち上げると、蒼津は店の奥へと消えていった。彼女は終始無言だった。
「あーっはっはっは、あーっはっはは、あーおかしい! ケッタ! タウォレタ!」
「今日は何時にも増して強烈だったな。まさに蒼き流星と呼ぶに相応しい。おい、チサト……折角だから何か言ってやれ。洋菓子店に立ち入ろうなど十年早いぜ、とかな」
「何なんだこの人は……むちゃくちゃだ……」
爆笑する流雨流、冷静に絡んでくる賽、呆然とコメントすることしかできない千里。何故かハイネとE.Sは優雅にバームクーヘンを食していた。店の奥では『もっと中華鍋強化すればいいのに』とか『月流子さんだって調味料少な目じゃないですかー』などという声が聞こえてくる。更にその奥で蒼津とアリスがどうなっているのかは神のみぞ知る。
何時にも増して――洋菓子店はカオスと化していた。
と、そのカオスの最中でなにやらハゲしい着メロが鳴り響く。爆笑をピタリと止め、イソイソと外へ出て行く天夜。
どうやら、流雨流の携帯だったらしい。
特に誰もそれを気にする様子は無かったが、ただ一人。千里だけは何となく気になっていた。
ひょっとしたら姉と電話しているのでわ……という危惧もあった。忍び足で出て行った流雨流の方へ聞き耳を立てる。
「はい、はい。問題ありません。私は……とは違います。失敬、……という名前は……で、******と。ええ、…………違います……お任せを。…………ココの地区には異常な……ええ、……うあんというポイントにも。******が苦戦したのも頷けます」
……?
よく聞き取れない。
特に、******という部分が何て発音してるのか。
……って何か突然こっち向いた! こっち見んな。って言うかうわーこっち来んな!
「乙女の電話を盗み聞きとわ! おねーちゃんにいいつけちゃうぞー?」
【Tobe continued...?】
◆ ◆
【ちょっとアレな用語集:ふくしゅう編】
天夜 流雨流/あまや るうる:
基本的に明るい性格に芝居がかった喋りが光る、如何にも偽名臭い名前を名乗る不思議生物。
一応
れっくれす非正規部隊所属、転じて所属していない。洋菓子店繋がりで引っかかった人Part2。余談だが、賽が初めて会ったのはMAN締結の前日らしい。
れっくれすでは“特殊任務部隊のエージェント”(正式役職名)を担当する。何故アバウトな役職名なのかは秘密だ。何故ならその方がカッコイイから!
雨の日には何故か憂鬱になり、黙っていれば可愛いことが解る。
過去、つるねぇやセンリの姉と共にバンドを組んでいた。
ハイネ・ミルト/はいね みると:
多重人格なドイツ人お嬢様兼軍人。性格は人格によって様々だがブリュンヒルトと呼ばれる現在の人格は所謂素直クールな性格である。
やたらと階級が高く、軍部では親の七光りなどと言われているが実力は本物。
ドイツのMANIA参入問題とアリスの紹介により、れっくれすに籍を置く破目になる。
ちなみに母のルーベルと賽はガブスレイ繋がりのお友達。
今回は顔出しだけ。手抜きじゃないよ。
E.S/えす:
ハイネの専属オペレーター。E.Sと言う名前以外は一切不明でその正体もドイツ軍では一部の人間しか知らない。
ハイネと同じ理由でれっくれすに参入。れっくれすでは必要最低限の話しかしてくれないが、本当はもっと喋る人間なのだとか。
今回は顔出しだけ。手抜きじゃないってば。
千里姉妹/ちさと或いはちり或いはせんりしまい:
センリの二人の姉、チサトとチリのこと。センリにとって恐怖の対象であるようだ。
実際の所、かなりの弟煩悩であるという噂もある。暴行も愛の一種だと倒錯しているという噂もある。
賽とは面識があるようで、センリの想い人だと勘違いされている。
過去、つるねぇやあまやんと共にバンドを組んでいた。
現在は二人揃って“気軽に仕事をしてることが確認できる”職業についている。
チサトの方が姉で、蹴り技が得意等、僅かな特徴の差異から見極めることができるが、それが出来る人はセンリ、つるねぇ、あまやんだけである。
2000シリーズ THE 炒飯の達人2/にせんしりーず ざ ちゃーはんのたつじんつー:
価格破壊と言われる、アグレッシブ料理アクション。
オープニング画面はメラメラ燃える炎をバックに、開始ボタンを押すとグゥレイトォ! という音声が流れる。
伝説の炒飯作りの為に奮闘するというストーリーなのだが、何故か何処かで見たことのある人型兵器と戦う。生身で。
前作からの引継ぎはなし。
ポケットモンスターハンターSilver:
“ポケモンハンター”となってポケモンを狩る、ポケモンハンシリーズ第二弾。
今作ではジョウトへと舞台が移され、モンスターの数も増えた。パッケージは深海帝ルギア。
ちなみに時期を同じくしてリリースされたGoldにおいては日輪鳥ホウオウがパッケージを飾る。
別Ver同士で
リンクさせて狩りをすることでデータを埋めることができる。
また、ポケモンハンシリーズ共通の“モンスターボール”という独自の捕獲システムは健在。ボングリ・キャプチャーネット等の素材を集め、モンスターボール職人に依頼することで作成してもらえる。
前作からの引継ぎはないが、リンクは可能。前作とのリンクでしか埋められないデータも存在する。
深海帝ルギア:
日輪鳥ホウオウと対を成す、ポケモンハンシリーズ第二弾のパッケージを飾る古龍種。
海と空という攻撃し難い。近接職は殆ど近づくこともままならない。
エアロブラストはクリティカルが発生すると体力・防御力関係なく即死。また、エアロブラスト射線の広い範囲に風圧を発生させる。
破壊可能部位は頭、翼、ヒレ、尻尾の計四箇所。竜・雷属性が弱点。
ゲインズ・ペインズ・ピュア・リッパーズ:
通称GPPR、或いは単純にリッパーズと呼ばれることも。
インディーズに残る伝説。小規模ながらカルト的な人気を博したが、解散した。
ガールズらしいポップスからメタルなものまでその幅は広い。
メンバーは月流子、流雨流、千里(ちさと)、千里(ちり)。
代表作は『真紅峠を渡るもの』、『Pay mind Pain』『街角の洋菓子店』、ボーナストラック『空雲ティラミス』。
【ちょっとアレな用語集:一月周りの世界情勢編】
降伏勧告/こうふくかんこく:
一月二日、重力場の乱れの観測と共に軌道上に確認された巨大質量の“宇宙からの色”を持つ脈動体(発光体? 解析結果不明)より人類に伝えられた“降伏勧告”のこと。
現れた後、律儀にも軌道上で待機。攻撃を誘っているようにも見えたという。
No.7787と名乗り、目的は地球を“我々”のものとすること、五日間の猶予の間に降伏の意を示さない場合、全面的な攻撃を行うことを悠長な英語で語ったという。
これらの放送は地球上のあらゆる場所で拾うことが出来たようで、各地で様々な事件が起こる。
政府の対応をいち早く掴もうとする各地の過剰かつ強行的な報道事件は勿論のこと、各地での傷害事件を中心とした犯罪の増加、スペースノイドによる“
宇宙人落とし”の危惧、宇宙人との交戦は避けるべきと主張する組織“メタグループ”結成とこの降伏勧告以降に与えた事件はあまりにも多い。
降伏勧告によって起こった事件/こうふくかんこくによっておこったじけん:
第一に降伏勧告後の数日間、各政府の対応をいち早く知ろうとする各新聞社の過剰かつ強行的な報道活動が行われた。1/6のMAN締結が発表されたことで急速に収まった。
邸宅へ押しかける、等はまだあることなのだが、“表向きには絶対知られることのない情報”を“確固たる情報筋”で“多くの新聞社が記事にした”ということが密かに問題になった。
第二の各地での犯罪上昇傾向については言わずもがな。統計上の数字より。
第三に、巨大な質量の“宇宙からの色”を持つ何かを地上に落とすことで地球上に甚大な被害を与えられる可能性がある、と言うもの。“宇宙人落とし”との俗称を持つ。これにより利益が出るのは宇宙圏勢力のみであり、地球圏勢力との険悪なムードに拍車をかけた。
第四として、宇宙人を保護する・和平の意思を主張する“メタグループ”の結成。現在、政治的にも軍事力的にも度外視していいほどのもの。話題性しかない。
MAN/エムエーエヌアイエー:
Mutual Advanced Net。相互的で進歩的な網。
対宇宙人の対応を纏めた初めての国際条約で、宇宙国家を含む全ての国家に提案された。
MANIA編成においての駆け引きが無ければあと半日早く締結を発表できた筈だ、と賽は言う。
しかし今回のこれはあくま“暫定”のもので、実際に何処かで条約を結ばれたということはなく、迅速な対応の求められる“今回一回限りのもの”、という異例の条件により承諾を得ることができたところが大きい。
今後、正式な形で締結を迎える際には自国に有利な条件を付与するのが政治的な争点となるだろう。
MANIA/エムエーエヌアイエー:
Mutual Advanced Net International Alliance。相互的で進歩的な網の国際的な同盟。
何か穏やかな名前だが、中身は緊急召集された連合軍。再度ワープによる侵略を予想した世界各地に広がる防衛部隊、本体の撃破を狙う攻撃部隊に分けられる。
構成メンバーは地球から宇宙までひっくるめ、軍部から傭兵、民間まで全てごった煮。と言うと聞こえは悪いがその実、ドリームチームと相成った。
しかし、その華々しいMANIA結成の裏には様々な黒い噂がある。
その一つとして、防衛部隊と攻撃部隊の編成におけるすり合わせが挙げられる。
軍事力を持たない国や国内の紛争により戦力を割けない国は防衛部隊に、強い軍事力を持つ列強はそれを誇示するべく攻撃部隊にと配置されるのは当然の流れだが、一部の国々が手を組み“わざと適正な部隊に配置させない”ということがあったと推測されている。これにドイツは乗り遅れ、防衛側に回されてしまったのがその推測に到る最も裏づけたる理由とされている。
最終更新:2007年04月22日 01:49