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少年――音無伊御の驚愕」(2015/11/29 (日) 03:24:09) の最新版変更点

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 最初は、トラブルメーカーズがまた何かしらしでかしたと思った。  次に、性質の悪い悪夢だと考えた。  最後に、是は否応のない現実であると思い知らされた。  ――――音無伊御の、おおよそ三十分間の思考の遍歴。 ■  手に持ち構えるは木刀。  対し、防いで弾き返すは日本刀。  上から振り下ろされれば、受けずに流し。  下から振り上げられれば、足の裏で防ぐ。  横から振るわれれば、構えて弾き。  突きが繰り出されれば、体を捻って流す。  拳が振るわれれば、掌を持って防ぎ。  蹴りが襲い来れば、同様に蹴りをもって弾く。  押しては引いて。  寄せては返し。  二手三手と先を読み合い、苛烈な連撃を繰り広げ。  一挙手一投足を注視し。  狙うは、ただ一撃。  浮かべたのは、笑み。 「やるじゃん、あんた」 「……ふん」  青年の言葉に不満気に鼻を鳴らし、少女の身体が一気に数メートル後ろへと後退する。  青年は追うことをしない。代わりに、傷を負った木刀を労うように優しく撫ぜる。  流れるような黒色の長髪を風に預け、少女は青年へと一瞥をくれた。日本刀は構えたまま。  舌打ちを、一つ。 「……解せない」 「ん?」 「何者?」  黒髪の少女はいぶかしむ様に青年を見やる。  その問いに、待ってましたと言わんばかりに青年は口を開いた。 「森田賢一。見ての通りのナイスガイだ」 「……」 「おいおい、蔑むような視線は逆効果だぜ。何せ俺はハードMだからな」 「……」  緊張感の欠片も無い自己紹介とウィンク一つ。  少女の絶対零度の視線にも動じる事の無い精神力は、ともすれば感嘆に値するかもしれない。  だがそれはそれ、これはこれ。  軽薄な態度とは裏腹に、青年の醸し出す雰囲気は決して油断を見せられるものではない。 「さてさて、自己紹介には自己紹介で返してくれるとうれしいんだがね」  此処に来て、漸く少女は自身の不利を悟った。  何の気負いもなく自然体で立つ青年と、焦燥に駆られ呼吸を乱した少女。  差は歴然としている。 「……何者」 「言ったろ? 森田賢一。あんたも見ての通りのナイスガイさ」   嫌味も虚栄もない、あるがままの自己紹介。  そう、と。短く頷いて少女は言葉を返した。 「……千堂」 「ん?」 「千堂瑛里華なら、貴方の力になってくれるかもしれないわ」 「……成程。で、君は……」  問いは、少しだけ遅かった。  ひと飛びで距離をとると、脇目もふらずに少女は場を離れる。  追いかけるには開きすぎた距離。  何よりも、 「……ふぅ」  短く息を吐くと、青年――森田賢一はその場に座り込んでしまった。  足は震え、腕は上がらず、息も絶え絶え。  潜在的なポテンシャルは、明らかに年下のはずの少女の方が数段上。  何度も死線をくぐり抜けてきた賢一をして、どうにか対等に保つのが精一杯というのが実情だった。 「ったく、人が死ぬ気で身につけてきたものをよぅ……」  漏れ出たのは切実な言葉。  しかも恐ろしい事に少女はあれでまだ本気ではない。  出会ってから逃走までの攻防の中で、一切の殺意が無かった。  幸いなことに、まだ少女はこのゲームに乗っているというわけではないらしい……とするのは安直かもしれないが、初っ端から殺意バリバリで殺しに来るよりは数段マシである。  無理矢理ではあるが、そう賢一は思考を締めた。 「とまぁ、今はこんなところかね……さて」  時間は、きっかし一分。  休ませていた身体を起こし、体に着いた土を叩く。  プラスして軽めのストレッチを行い、傍らに置いてあったディパックを木刀で持ち上げ担ぐ。  そうして、漸く―― 「今からそっちに向かってくけど、よろしいかな? そこの木の陰に隠れている誰かさん」  音無伊御の思考は、現実へと回帰する。 【一日目/0時30分/F-6】 【音無伊御@あっちこっち】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:気付かれていた? 【備考】 ・参戦時期は未定  【一日目/0時30分/F-6】 【森田賢一@車輪の国、向日葵の少女】 [状態] 疲労 [装備] [所持品]基本支給品、木刀、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:誰かさん(伊御)と情報交換 【備考】 ・参戦時期は未定 ■  何故、あんなことを言ったのかは分からない。  強いて言うならば、突発的に口をついた、とするべきか。  ……答えになっていない事は、誰よりも自身が分かっている。 「……まぁ、いいわ」  十分な距離をとったところで、漸く少女は足を止めた。  出会い頭に出会った青年の所持品を奪うだけのはずが、随分なハードワークになってしまった。  まずは、どこか人気の無いところで休むことにしよう。  力任せに刀を振るったせいか、右腕が妙に痛む。  ――こんなことは今まで無かったはずなのに 「……制限?」  あの広間で神父が話していた内容に、そんな言葉があった。  気付いてみれば、至極当たり前のことだ。自分の事を知っているのならば、制限をかけない方がおかしい。  そう。自分の事を知っているならば…… 「……」  不意によぎった思考を、馬鹿らしいと首を振って否定する。  まだ確証に至るには程遠すぎる推論だ。  だが、もしも。もしもそれが事実ならば…… 「馬鹿らしい」  もう一度。今度は口に出して否定する。  ディパックを担ぎ直し、止めていた足を動かす。  まずは休める場所を探そう。全てはそれからだ。  胸の奥につっかえた何かを意図的に無視したまま、少女――紅瀬桐葉は再び駆けた。 【一日目/0時30分/F-5】 【紅瀬桐葉@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 疲労 [装備] [所持品]基本支給品、日本刀、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:なるべく穏便に行動 1:休める場所を探す 2:……まずは、休める場所を探す 【備考】 ・体育祭後からの参戦 |No.014:[[少女と筋肉と遊園地]]|投下順|No.016:[[深夜の図書館、少女が二人]]| |No.014:[[少女と筋肉と遊園地]]|時系列順|No.006:[[何も為し得なかった世界]]| |COLOR(yellow):GAME START|音無伊御|| |COLOR(yellow):GAME START|森田賢一|| |COLOR(yellow):GAME START|紅瀬桐葉||
*少年--音無伊御の驚愕  最初は、トラブルメーカーズがまた何かしらしでかしたと思った。  次に、性質の悪い悪夢だと考えた。  最後に、是は否応のない現実であると思い知らされた。  ――――音無伊御の、おおよそ三十分間の思考の遍歴。 ■  手に持ち構えるは木刀。  対し、防いで弾き返すは日本刀。  上から振り下ろされれば、受けずに流し。  下から振り上げられれば、足の裏で防ぐ。  横から振るわれれば、構えて弾き。  突きが繰り出されれば、体を捻って流す。  拳が振るわれれば、掌を持って防ぎ。  蹴りが襲い来れば、同様に蹴りをもって弾く。  押しては引いて。  寄せては返し。  二手三手と先を読み合い、苛烈な連撃を繰り広げ。  一挙手一投足を注視し。  狙うは、ただ一撃。  浮かべたのは、笑み。 「やるじゃん、あんた」 「……ふん」  青年の言葉に不満気に鼻を鳴らし、少女の身体が一気に数メートル後ろへと後退する。  青年は追うことをしない。代わりに、傷を負った木刀を労うように優しく撫ぜる。  流れるような黒色の長髪を風に預け、少女は青年へと一瞥をくれた。日本刀は構えたまま。  舌打ちを、一つ。 「……解せない」 「ん?」 「何者?」  黒髪の少女はいぶかしむ様に青年を見やる。  その問いに、待ってましたと言わんばかりに青年は口を開いた。 「森田賢一。見ての通りのナイスガイだ」 「……」 「おいおい、蔑むような視線は逆効果だぜ。何せ俺はハードMだからな」 「……」  緊張感の欠片も無い自己紹介とウィンク一つ。  少女の絶対零度の視線にも動じる事の無い精神力は、ともすれば感嘆に値するかもしれない。  だがそれはそれ、これはこれ。  軽薄な態度とは裏腹に、青年の醸し出す雰囲気は決して油断を見せられるものではない。 「さてさて、自己紹介には自己紹介で返してくれるとうれしいんだがね」  此処に来て、漸く少女は自身の不利を悟った。  何の気負いもなく自然体で立つ青年と、焦燥に駆られ呼吸を乱した少女。  差は歴然としている。 「……何者」 「言ったろ? 森田賢一。あんたも見ての通りのナイスガイさ」   嫌味も虚栄もない、あるがままの自己紹介。  そう、と。短く頷いて少女は言葉を返した。 「……千堂」 「ん?」 「千堂瑛里華なら、貴方の力になってくれるかもしれないわ」 「……成程。で、君は……」  問いは、少しだけ遅かった。  ひと飛びで距離をとると、脇目もふらずに少女は場を離れる。  追いかけるには開きすぎた距離。  何よりも、 「……ふぅ」  短く息を吐くと、青年――森田賢一はその場に座り込んでしまった。  足は震え、腕は上がらず、息も絶え絶え。  潜在的なポテンシャルは、明らかに年下のはずの少女の方が数段上。  何度も死線をくぐり抜けてきた賢一をして、どうにか対等に保つのが精一杯というのが実情だった。 「ったく、人が死ぬ気で身につけてきたものをよぅ……」  漏れ出たのは切実な言葉。  しかも恐ろしい事に少女はあれでまだ本気ではない。  出会ってから逃走までの攻防の中で、一切の殺意が無かった。  幸いなことに、まだ少女はこのゲームに乗っているというわけではないらしい……とするのは安直かもしれないが、初っ端から殺意バリバリで殺しに来るよりは数段マシである。  無理矢理ではあるが、そう賢一は思考を締めた。 「とまぁ、今はこんなところかね……さて」  時間は、きっかし一分。  休ませていた身体を起こし、体に着いた土を叩く。  プラスして軽めのストレッチを行い、傍らに置いてあったディパックを木刀で持ち上げ担ぐ。  そうして、漸く―― 「今からそっちに向かってくけど、よろしいかな? そこの木の陰に隠れている誰かさん」  音無伊御の思考は、現実へと回帰する。 【一日目/0時30分/F-6】 【音無伊御@あっちこっち】 [状態] 健康 [装備] [所持品]基本支給品、ランダムアイテム [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:気付かれていた? 【備考】 ・参戦時期は未定  【一日目/0時30分/F-6】 【森田賢一@車輪の国、向日葵の少女】 [状態] 疲労 [装備] [所持品]基本支給品、木刀、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:ゲームに乗るつもりは無い 1:誰かさん(伊御)と情報交換 【備考】 ・参戦時期は未定 ■  何故、あんなことを言ったのかは分からない。  強いて言うならば、突発的に口をついた、とするべきか。  ……答えになっていない事は、誰よりも自身が分かっている。 「……まぁ、いいわ」  十分な距離をとったところで、漸く少女は足を止めた。  出会い頭に出会った青年の所持品を奪うだけのはずが、随分なハードワークになってしまった。  まずは、どこか人気の無いところで休むことにしよう。  力任せに刀を振るったせいか、右腕が妙に痛む。  ――こんなことは今まで無かったはずなのに 「……制限?」  あの広間で神父が話していた内容に、そんな言葉があった。  気付いてみれば、至極当たり前のことだ。自分の事を知っているのならば、制限をかけない方がおかしい。  そう。自分の事を知っているならば…… 「……」  不意によぎった思考を、馬鹿らしいと首を振って否定する。  まだ確証に至るには程遠すぎる推論だ。  だが、もしも。もしもそれが事実ならば…… 「馬鹿らしい」  もう一度。今度は口に出して否定する。  ディパックを担ぎ直し、止めていた足を動かす。  まずは休める場所を探そう。全てはそれからだ。  胸の奥につっかえた何かを意図的に無視したまま、少女――紅瀬桐葉は再び駆けた。 【一日目/0時30分/F-5】 【紅瀬桐葉@FORTUNE ARTERIAL】 [状態] 疲労 [装備] [所持品]基本支給品、日本刀、ランダムアイテム×1~2 [思考・行動] 基本:なるべく穏便に行動 1:休める場所を探す 2:……まずは、休める場所を探す 【備考】 ・体育祭後からの参戦 |No.014:[[少女と筋肉と遊園地]]|[[投下順]]|No.016:[[深夜の図書館、少女が二人]]| |No.014:[[少女と筋肉と遊園地]]|[[時系列順]]|No.006:[[何も為し得なかった世界]]| |COLOR(yellow):GAME START|音無伊御|| |COLOR(yellow):GAME START|森田賢一|| |COLOR(yellow):GAME START|紅瀬桐葉||

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