555 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:19:28 ID:g8dtXNOY0
「……異常なし、報告を終わります」
ベッドの中で定時連絡を終えると、連邦捜査官の滝沢アカネはため息をついた。
報告で嘘をつきたくはなかったが、刑務所内は異常だらけだ。
特に自分への扱いの酷さを考えると、頭が痛くなる。
(エリートの私が、犯罪者どもに馬鹿にされるなんて)
入所二日目にしてアカネの心は折れそうだった。
初日に晒してしまった痴態が、次の日には看守や囚人全てに知れ渡っていた。
それから囚人達の陰湿ないじめが始まった。
美人で黄色人種のアカネは、憂さ晴らしの格好の的であった。
「うっとうしいから消えろ」
「美人だからっていい気になるなよ」
「オマエ、自分が何様だと思ってるの?」
「ウンコ漏らした癖によく生きてられるな」
「死ねジャップ」
陰口を叩かれるだけなら無視していたが、暴力を振るわれたときはさすがに抵抗した。
だが、アカネが得意の格闘で反撃しようとすると、すぐに看守を呼ばれる。
「何してんだお前ら」
556 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:30:29 ID:g8dtXNOY0
入所時にアカネに目をつけ、刑務所内で最下層になる原因を作った黒人看守が飛んできた。
靴を舐めさせられたときの屈辱を思い出すと、はらわたが煮えくり返る思いだ。
「この人たちが暴力を振るってきたんです」
「お前がくっさい屁でもしたからじゃないか?」
ドッと周囲に笑い声が起きた。
思い出したくもない記憶を揶揄され、アカネの頬はかっと熱くなった。
そして、憎憎しく黒人看守の顔を睨みつける。
歴戦の捜査官であるアカネの視線には迫力があった。
だが、次の看守の一言でその立場は逆転した。
「何だその目は? また浣腸されたいのか」
「ひっ!?」
背筋が凍るような恐怖が瞬時に駆け上がり、アカネは無様にも悲鳴をあげて蹲ってしまう。
その姿に気圧されていた囚人達に再び嘲笑が満ちる。
浣腸と聞いただけで、動けなくなるほどアカネの心は折られていた。
もし、またあんなことをされたら、と思うと逆らうことなど出来なかった。
完全にアカネの心にトラウマとなって刻み付けられていた。
それからは抵抗も出来ず殴られるままだった。
557 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:42:09 ID:g8dtXNOY0
「オラッ」
バキッ
「シット!」
ドカッ
「ぐうぅ!」
サンドバッグのように棒立ちで立たされ殴られるアカネ。
防御姿勢をとろうとすると、注意をされ看守を呼ぶと脅された。
細身の体で、犯罪者達の殴打の衝撃を逃がすことも出来ず、確実に体力を削られる。
「しゃおらっ!」
ぼぐっ!
「うげえぇ!」
女子プロボクサー上がりという囚人の拳が腹に叩き込まれる。
胃を突き刺すよう痛みのボディブローに、胃液とヨダレを飛び出させてしまう。
内臓がかき回されるような気持ち悪さに、膝を着きそうになる。
だが、アカネにはそんな行動すらも許されなかった。
「おら、ちゃんと立てよ、看守に浣腸してもらうぞ」
「ひぃい、た、立ちますから止めてください」
頭痛も腹痛も気力で抑え、ぴしっと気をつけの姿勢を自らとる。
犯罪者どもに言いように命令され、言うことを聞くしかない自分が情けなかった。
エリート捜査員として輝くような人生を歩んできたアカネ。
それが今では最低の犯罪者達に奴隷のように扱われていた。
思わず眦に悔し涙を浮かべて、どうしてこうなってしまったのかと後悔する。
558 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 06:57:05 ID:g8dtXNOY0
「何泣いてんだよカス」
バギッ!
「おぐぅ!」
今度はアカネの美貌に元ボクサーの鉄拳が飛んできた。
首が取れるかと思うほどの衝撃に、頭が一瞬真っ白になる。
口内に鉄さびの味が広がり、唇を切ったことを理解する。
この程度の格闘をかじった程度の犯罪者に手傷を負わされるなど、以前の彼女には考えられなかった。
「こいつ、腕っ節が強いとか言っていい気になってたぜ」
「へぇ、じゃあどこまで耐えられるか楽しみだね」
(くっ、馬鹿にして、今に見ていなさいよ)
アカネと同室の少女が、ボクサーに耳打ちする。
初日に「私に関わるな」と脅しつけたのを根に持っていたらしい。
だが単純そうなボクサーはさらにやる気になって殴打を続ける気だ。
アカネは内心で自分を殴ってきた人間の顔を覚え、復讐の方法を考えていた。
教団の教祖の脱走を阻止するのがアカネの任務だが、その共犯者ということにしてしまおう。
そんな情けないいじめられっこのような思考しか出来ない自分に気付いて、暗澹たる気分になる。
「おららぁ!」
「ひぃ!、ひいいぃ!」
ボクサーはワンツーと連打でアカネをひるませると、ラッシュを仕掛けてきた。
顔が歪むかと思うほどの衝撃で脳が揺さぶられ、胃がひっくり返るほど腹をへこまされる。
身動き一つとることができず、足腰から力が抜け脱力して倒れ臥す。
今度は誰も注意をしようとはしなかった、全員でアカネを踏みつけてきたからだ。
「お、おう、おごおおおおおお!」
胃の内容物を吐き出し、美人捜査官は美貌を歪めてもだえ苦しむ。
囚人達のリンチはアカネが気絶するまで続いた。
559 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:08:35 ID:g8dtXNOY0
そして夜になって意識を取り戻し定時連絡を終え、ようやく一息ついた。
就寝の時間だけが、アカネにとって安息の時間だった。
(明日からは本格的に捜査も始めなきゃ……お腹すいたなぁ)
二日目にして捜査官としての活動など出来るはずもなく、任務は何も果たされていない。
それ以前に夕食も足を引っ掛けられて落としてしまい、栄養も足りなかった。
薄く切られたミートローフを思い出し、腹を鳴らしてしまう。
毀れたソースをお尻に塗られて「また糞を漏らした!」と笑われてことを思い出す。
その後、白人看守に床に落ちた夕食を犬のように舐めさせられた。
そんな屈辱的な行いまでしたのに、肝心のミートローフは口にさせてもらえなかった。
プライドの高いアカネは毛布の中で涙を流して、嗚咽をこぼした。
「うっ、ううっ、ぐすっ」
(なんで、なんで私がこんな目に……)
任務のためだと自分を納得させようとしても、涙はあとからあとから溢れてきた。
明日からは浣腸すると言われても堪えてみせる。
だから今だけ、今日泣いてしまえば全部忘れる。
初日の夜と同じように、アカネはそう決意した。到底守れない決意を。
だが、アカネは泣くべきではなかった。
悪夢の時間が始まる。
560 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:18:47 ID:g8dtXNOY0
泣きつかれて夢うつつになっていたアカネは、誰かが自分の上に覆いかぶさっていることに気付いた。
(誰!?)
同室の少女だろうか、昼間あれだけ蹴っておいて睡眠の時間まで自分から奪うつもりか。
アカネはカッと頭に血を巡らせ覚醒する。
手足の二三本を折ってでも、少女に自分の立場を分からせてやるつもりだった。
だが、ベッドの中から起き上がることは出来なかった。
(し、縛られてる!?)
どうやら毛布の上からベッドごと、麻縄か何かで縛られてしまったようだ。
背中に冷や汗が浮いてきた。
また、また昼間のように抵抗することなく殴られるのか。
きつく縛られているようで、状態すらも満足に動かせない。
唯一自由な口で、真夜中の闖入者に対話を試みる。
「誰よ、何でこんなことするのよ!」
「テメェが毎晩めそめそウルセェからだよ」
声を聞いて息が止まりそうになった。
昼間、アカネが半殺しになるほど殴りつけてきた元女子プロボクサーの声だった。
なぜ別室の彼女が自分達の牢にいるのか。
さらにアカネは恐るべき事実に気付いてしまった。
部屋の中には元ボクサー以外にも複数の女性の気配や息遣いが聞こえてきた。
アカネの牢の鍵は何者かに開けられ、そこから他の部屋の囚人が侵入してきたのだ。
561 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:30:19 ID:g8dtXNOY0
「ひっ、な、なんで私の部屋に」
「テメェの泣き声や腹の虫がうるせぇからよ、注意しに来たんだよ」
アカネのおびえた声にボクサーが答える。
どうやら初日の自分の泣き声や、今日の空腹の音が聞かれていたらしい。
自分の弱い部分を聞かれていたことに、恥ずかしさで顔を赤らめるアカネ。
完璧主義者のアカネは、今まで他人に弱みなど見せたことはなかった。
だが、どうせ自分が脱糞してしまった事実は囚人全員に知られているのだ。
今更何を恥ずかしがる必要があると自らを鼓舞し、アカネは会話を続ける。
「ご、ごめんなさい、気をつけるわ、だから縄を解いて」
「口の利き方がなってねぇな、新入りのくせによ」
「その前に糞たれ女だろ」
「豚女が、身の程をわからせてやる」
周囲の服役囚たちがわらわらと寄ってくる気配を感じる。
ああ、どうせ殴られる運命にあるとアカネは観念した。
だが、心までは折れたりはしないと先程誓った決意を思い出す。
どんなに殴られ蹴られようとも諦めたりしない。
凄腕捜査官としてアカネはそう覚悟を決めた。
562 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:39:14 ID:g8dtXNOY0
そして毛布の上からの殴打なら、それほどダメージはないという打算もあった。
ゴッ!
「いぎゃ!」
そんな覚悟も打算も一瞬で吹き飛んだ。
何か硬い石のようなもので、腹部に激突させられてようだ。
鳩尾を的確に狙われ、息がつまり呼吸できなくなる。
昼間の暴行の恐怖がよみがえってきて、思考が千々に乱れる。
(なんで、武器? そんな、毛布が、痛い、死ぬ!)
ぼぐっぼぐっぼぐっぼぐっぼすっごがっがぎっ
「ひぃいい! いたい、痛いよう!」
そして周囲の囚人も風切り音をさせて、謎の武器でアカネに殴打を加えてくる。
どれも昼間の拳打など目にならないくらいの痛みだ。
骨や関節に硬い拷問具が当たると、痛みで声も出せない。
薄い毛布の皮膜も、筋肉の薄壁も、何の役にも立たなかった。
子供のように泣き喚いても、誰一人行為を中断しようとはしなかった。
「ははは、石鹸くらいでそんなに泣いてんじゃねぇよ!」
(石鹸!)
563 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 07:47:36 ID:g8dtXNOY0
ようやく拷問具の正体が分かった。
映画で見たり知識で知ってはいたが、すぐには思い至らなかった。
石鹸。
シャワーの時間で使う石鹸をタオルで巻きつけ、振りかぶって殴る。
拷問やリンチとしては程度が低いと思っていたが、これほど威力があるとは思わなかった。
効果的にダメージを与えるために考案されたと、身をもって実感していた。
「やめて、痛い、本当に痛いんです、許してください!」
おもわず敬語で許しを請うアカネ。
捜査官としての決意など既に頭の片隅にもなかった。
この痛みから逃れるためなら、なんでもする。
初日に黒人看守の靴を舐めたような状態にまで追い詰められていた。
身を縮こまらせていると、殴打の嵐が止んでいた。
(ゆ、許してくれた!?)
自分の必死の懇願が功を奏した、と嬉しさに包まれる。
お礼を言おうと、負け犬根性の染み付いた思考で口を開こうとすると、
ごぎゃ!
「うべぇあ!」
鼻の頭に石鹸の弾丸が放たれた。
鼻骨が飛んでいってしまったかと思うほどの衝撃に、絶望が再び訪れる。
なぜ、許してくれたのではないのか。
鼻の奥からどろりとしたものが流れ込み、鼻血が溢れてきた。
だが、アカネにはそんな些細なことはどうでもよかった。
564 :名無しさん@ピンキー:2010/02/03(水) 08:00:36 ID:g8dtXNOY0
「やめて、私が悪かった、もう殴らないで!」
「うっせ!」
遠心力に任せて、武器を振りかぶる囚人達。
何が面白いのか笑いながらベッドの上のアカネに殴打を加える。
どの部分に攻撃が加えられるか視認できず、恐怖に震えるしかない。
必死で命乞いをしても弾丸の嵐は自分の体を離れない。
「お願いします、なんでもします、死にたくないんです!」
ぴたりと砲弾の乱射が停止する。
今度こそ許してもらえた、と思ったらまた笑いながら砲撃が開始される。
アカネはもう気がつくことすら出来なかったが、これが拷問の真の姿だった。
いつ殴打が再開されるか分からない。
その緊張で力を抜くことも出来ずに、いつまでも恐怖におびえる。
時には長く、時には短く。
囚人達の残酷な思考で休憩時間は調節され、アカネが安心したときリンチが始まる。
アカネは幼女のように許しを請い、泣くことしかできなかった。
「ふぅ、もう朝か、教祖様の言うとおり効果覿面だったな」
(あ……さ……)
「と油断させてもう一撃!」
ばぎ!
「おごお!」
日の光が昇る時刻まで拷問は続いた。
朝の点呼の時間、いつまでも起きてこないアカネの牢に黒人看守が入る。
ベッドの中で惰眠を貪る服役囚に罰を与えようと、警棒を振りかぶり毛布を剥ぐ。
ベッドの上にはあまりの恐怖に小便をたらし、体中を痣だらけにしたアカネがいた。
看守が話しかけようとすると必死で媚を売り、尿で濡れた股間を隠さず命乞いをする。
敏腕捜査官、滝沢アカネの三日目の捜査が開始された。
最終更新:2010年06月06日 14:23