RTR対戦成績


       ライジングヘリオス レッドロードスルー タッチインザバブル
札幌2歳S    1着    --     2着
朝日杯FS    1着    --     2着
皐月賞      2着    1着     --
東京優駿    2着    1着     3着
菊花賞      2着    1着     --
有馬記念    --    2着     4着
毎日王冠    5着    --     1着
天皇賞秋    --    1着     2着
有馬記念    1着    3着     2着
天皇賞春    3着    --     2着
宝塚記念    3着    4着     5着
有馬記念    --    ?着     ?着



RTR対決 前説


すべてはこの一言から始まった・・・

http://ex11.2ch.net/test/read.cgi/keiba/1158495581/
ラ イ ジ ン グ ヘ リ オ ス

59 :名無しさん@実況で競馬板アウト:2006/09/30(土) 19:44:51 ID:Bh8n7mgLO
新約ライジングヘリオス伝説書こうかな。
先代作品の良さをブチ壊さないようにしてなおかつ追加設定とか入れて。

主人公はヘリオスだけじゃなくRTRの3頭で。



RTR・夢の軌跡(新約ライジングヘリオス伝説)


序章「誕生」


20XX年。北海道の馬産地で一頭のサラブレッドが生を受けた。父はダイタクヘリオス、母はセンターライジング。

その二年後…巨大インターネット掲示板群「2ちゃんねる」の競馬板に一つのスレが立った。

『馬主になったら付けたい名前』
1.ライジングヘリオス
 理由:かっこいいから

立ってからというもの…「オレもライジングヘリオス。理由はかっこいいから。」「おまいらセンス無さ杉。オレが素晴らしい名前を考えてやる!ライ(ry」
などと、ループするだけのネタスレと化した。しかし、このスレが後に神スレになろうとは、この時誰も知る由も無かった。

ダイタクヘリオスとセンターライジングの仔は2歳になり、ついに音無厩舎に入廐されることになった。
しかし、この時点でまだ名前は決まって無かった。が、入廐時のやりとりであっさりと決まる。

「どうも、オーナー。」
「音無君、こいつを頼むよ。」
「ところで、名前まだなんですか…?」
「そう、まだなんだよ…いいのが浮かばなくてな。」
「いいのがあるらしいですよ?」

競馬関係者も2ちゃんねるをやる。ここ音無厩舎のスタッフも例外では無かった。

「ウチの若いのがライジングヘリオスってかっこよくないですか?って言っとるんですよ。この馬の父と母ならピッタリじゃないですか?」
「ライジングヘリオスか…ふむ、かっこいいじゃないか!」

こうして後に神馬と呼ばれる馬の名前が決まったのだった。

序章「誕生」 (了)


第一章「デビュー」

名前も決まったライジングヘリオスはデビュー戦に向かって調教を積む。じっくりと秋の阪神・京都あたりでデビュー予定だったが、成長が素晴らしく、八月札幌2歳新馬芝1200mでのデビューとなる。
鞍上は夏は北海道で乗ってて、音無厩舎の信頼も厚い横山典弘に決定。

その頃、2ちゃんねるではライジングヘリオスがリアルデビューするということで祭りになりつつあった。

「ちょwライジングヘリオスが今週走るぞww」「当然かっこいいんだろうな?」
競馬板は大いに盛り上がった。

そして迎えたレース当日。

血統はお世辞にも良血とは言えない。追い切りタイムも平凡。にもかかわらず、ライジングヘリオスは単勝一番人気に支持された。
おそらく2ちゃんねらーによる大量購入であろう。

あるファンは「別に外れてもいいよ。馬券は記念になるし。でも顔もフォームもかっこいいから買っちゃったよ(笑)」と証言していた。

レース直前。「乗り方は任せる」ノリにただ一言告げて音無は調教師席に戻った。
そしてスタート。
出遅れることなくヘリオスは先行集団に取りついた。
ジワリジワリとポジションを上げ…4角では先頭に立っていた。しかし、横山典はガッチリ手綱を持ったまま。
直線の半ばで手綱をしごくと弾けるように伸び、終わってみれば後続を5馬身差をつける圧勝であった。

「先生…こいつは大物かもしれませんよ」
まだ半信半疑だが、ノリは確かな手応えを感じ取っていた。

一方…競馬板ではライジングヘリオススレが単独で立った。
「ヘリオス(・∀・)カコイイ!!」「こりゃあネタじゃ済まんぞww」

祭りはまだまだ終わらない。

第一章「デビュー」 (了)


第二章「伝説の幕開け」


ヘリオスのデビュー戦勝利から遡ること約一ヶ月。
美浦の二ノ宮厩舎から一頭の馬が七月函館でデビューした。父がバブルガムフェローのこの馬の名はタッチインザバブル。

蛯名正義を背に芝1000m新馬戦に出走したが、3着に敗れた。

「どうやら馬混みに入れるとダメみたいですね。」
「じゃあ次は極端な競馬をしてみるか?」
そして一ケ月後の札幌での未勝利。逃げには定評のある蛯名はハナを切るつもりでいた。のだが…

ESP発動。

「あぁ!しまった!!クソッ!!!」
最後方からのレースを余儀なくされる。しかし、結果的に出遅れが幸いした。
4角で大外を捲り、直線では凄い切れ味の末脚でまとめて差し切った。タッチインザバブル初勝利である。

「マサヨシ、よくやった。」
「すいませんでした先生…でもこの馬は終まいの競馬の方が合いますよ。」

そして九月の札幌2歳S。ヘリオスとバブルが初めて顔を合わせる。

一気に600m延長がどうかと不安視されたライジングヘリオスだが、デビュー戦の内容を評価され、2ちゃんねらー以外からも票が集まり一番人気に推される。
バブルも距離延長は歓迎の見方をする者が多く、ヘリオスに次ぐ支持を集めた。

レースがスタートすると、二頭とも自身が勝った時を再現するかのようにポジションを取る。ヘリオスはまたも4角先頭で直線を迎えた。手綱をしごいて気合いを入れる横山典。
またも圧勝かと思いきや…新馬戦の時には居なかった、追い込んでくる馬。バブルが最後にいい脚で突っ込んできていた。
着差こそ3馬身あったが、ヘリオス陣営は「タッチインザバブル…長い付き合いになるかもな。」と一目置くようになった。

後に更なる名勝負を繰り広げる二頭の戦いは、ヘリオスの勝利で幕を開けた。


第二章「伝説の幕開け」  (了)


第三章「揃った役者」


2ちゃんねる競馬板。
「ヘリオス重賞勝ちキタ───(゚∀゚)───!!」「かっこよすぎwww」
盛り上がりは日増しに大きくなった。

時は流れて11月…ヘリオスの朝日杯へのステップは京王杯2歳S。候補は他にデイリー杯2歳Sもあったが、輸送を経験させる目的も込めてこちらに。
一方のバブルは東京の方がレースをしやすいことから、東スポ杯2歳Sを選択。再戦は朝日杯までお預けとなったが、両馬ともにステップレースを快勝。

そして朝日杯FS…の前に。12月1週の阪神芝2000mの新馬戦にデビューした馬が居た。名はレッドロードスルー。
現役騎手時代から馬を見る目は確かだった河内洋だったが、調教師になってからは預託馬のレベルの低さに苦しみ、成果を上げられずにいた。
その河内厩舎にやってきたのが皇帝、帝王と受け継がれてきた血がついに開花した大物。トウカイテイオー産駒のレッドである。

「ユタカ…こいつはタキオン級かもしれん」
こう言って河内は現役時代の弟弟子の武豊に手綱を託した。

レッドロードスルーのデビュー戦はかつてのフジキセキを彷彿させる内容だった。スタートは大きく出遅れ3馬身ほどの不利を受けたが、武豊は慌てない。
最後方から馬なりで進出すると、直線では流す余裕すらある楽勝劇だった。

「河内さんが惚れこんだ理由がよくわかりましたよ」

武豊はレース後にこう言っている。幾多の名馬に乗った天才もレッドの素質を高く評価していた。

ヘリオスとバブル、そしてレッド。後にRTR世代と呼ばれる世代のトップ3が出揃った。

第三章「揃った役者」  (了)


第四章「載冠」


2歳王者決定戦、朝日杯FS。重賞連覇中のライジングヘリオスが一番人気に推される。そのヘリオスの2着に入り、東スポ杯2歳Sを快勝したタッチインザバブルが二番人気に。オッズは札幌2歳Sの再現となった。

ライジングヘリオス陣営は何も不安は無く、自信満々でGⅠの舞台に上がる。それに対し、タッチインザバブル陣営はある賭けに出ようとしていた。
「バブルの末脚は世代屈指。だが小回りの中山で最後方からの競馬では届かないだろう。マサヨシ、なんとか馬群に入れて折り合いをつけてくれ。」
二ノ宮の頼みは無謀にしか聞こえなかった。しかし、着を拾うだけの競馬ではなく、勝つための競馬をするにはこれしかない。苦渋の決断だった。
「やります、先生。」

そして運命のゲートが開く。

ヘリオスはいつものように先行集団に入る。対するバブルは中団。いつもより前で馬群の中に入っていた。
ムキになって行きたがるバブルを蛯名は必死になだめて折り合いをつける。イチかバチかの賭けは土壇場で功を奏した。
「いける!この位置なら坂の直後に交せる!」
蛯名は確信を持った。

そして最終コーナー入口でヘリオスと横山典が動く。ワンテンポ遅らせてバブルと蛯名が仕掛ける。直線を先頭で駆けるヘリオスにバブルが襲いかかる!
差は3/4~1馬身まで詰め、脚色はバブルの方が上。ヘリオスは交されるかに見えた。しかし、ここからは抜かせない。
「クソッ、届かない!あと1馬身が遠い…!!」
蛯名の懸命の追いも報われず、最後は1馬身半差に広がって入線。

ライジングヘリオスGⅠ制覇。その勝負根性は群を抜いていて着差以上の完勝だった。
音無は「戦う度に強くなってます。クラシックが楽しみですね。」と記者にコメント。その強さに翌年の三冠を期待し、「三冠馬有力」とスポーツ紙の一面を飾り、またある紙面には「神馬」とまで評していた。

そして朝日杯FS後の2ちゃんねる競馬板。あまりの盛り上がりに、ついに鯖が跳んだ。


第四章「載冠」  (了)


第五章「もう一つの衝撃」


2ちゃんねる競馬板・ライジングヘリオススレ。
「ヘリオスがGⅠ馬にww」「SUGEEEEEEE!!!!」「冗談抜きでかっこいい件について」
鯖が復旧しても盛り上がりは収まる気配はしない。
「日本競馬の歴史が変わる」「三冠獲って当たり前」「英ダービー逝けよ」
スケールがどんどん大きくなる。

それから2週間。世間の興味が有馬に向けられてる中の、土曜日のラジオたんぱ2歳S。河内師と武豊のタッグでレッドロードスルーが出走した。
デビュー戦は大きく出遅れたスタートも、今回はスムーズに決めた。馬群で怯むこともムキになることもなく、武豊はレッドを手の内に入れる。
直線では走りは圧巻だった。一瞬で先頭に立つと、ラスト3F33.1の豪脚で4馬身ちぎり完勝。阪神競馬場がどよめいた。
かつてこのレースでアグネスタキオンに騎乗して観客の度胆を抜いた河内は「タキオンを超えるかもしれへんな」と笑っていたが、これは後に冗談では無くなった。


年が明けてJRA表彰。最優秀2歳牡馬はライジングヘリオスに輝いた。当然と言えば当然だが、レッドの強烈なパフォーマンスの後でも満票で獲得したのだった。

そしてRTR世代は3歳クラシック、もっとも重要な年を迎える。


第五章「もう一つの衝撃」  (了)


第六章「宿命の対決」


後に史上最強世代とも呼ばれるRTR世代は3歳を迎える。2歳王者ライジングヘリオスは弥生賞からの始動を発表。
無敗のレッドロードスルーはスプリングSか若葉S、タッチインザバブルは流動的で中山のいずれか、とそれぞれ発表された。

まず最初にターフに姿を現したのはライジングヘリオス。初めての休み明けが心配されたが、狂い無い仕上げで王道競馬を貫いた。
逃げるトゥザヤナギムシを直線であっさり捉えると、最後は3馬身半差。本番の皐月賞と同じコースで完璧なリハを見せた。

その2週間後の中山競馬場。スプリングSにレッドロードスルーが出走。デビュー戦のように出遅れて場内がどよめいたが、タニノギムレットのような鋭い末脚で一気に差し切る強い内容。ヘリオス同様、無敗で皐月賞に臨む。

タッチインザバブルは…残念ながら弥生賞前週に馬房で脚を打撲してソエを痛めてしまった。無念にもトライアルも皐月賞も使えず、関東の雄は戦えずに4月を終える。

3歳牡馬クラシック第一弾・皐月賞。
RTR三頭の戦いの中でも、このライジングヘリオスとレッドロードスルーの対決は、後に宿命の対決といわれる。

無敗の二頭が皐月賞で初めて顔を合わせた。人気は二分されるかと思われたが、ライジングヘリオスの勝利を予想する者が大半で、いかにかっこよく勝つか見るレースとまで言われた。
単勝オッズはライジングヘリオス1.3倍。レッドロードスルー6.8倍。ヘリオスの人気が際立っていた。

レース前、ライジングヘリオスの音無師は「いい状態で出せます。」と言えば、横山典騎手も「不安は何もありません。オーナー、先生、スタッフ、そしてファンの皆さんの期待に応えたい。」と語る。
対するレッドロードスルーの河内師は「一頭強いのがおるから…ジョッキーに託す。」と少し泣きを見せれば、武豊騎手も「上手く乗ればチャンスはあります。」と控えめだった。

そして11万人が見守る中、皐月賞はスタートする。

スタート直後に歓声で場内が沸いたあと、少しどよめく。大外18番枠に入ったライジングヘリオスのスタートがいつもほど良くなかったのだ。とはいえ、ひどい出遅れでもないのでファンは安心しきっていた。
レースは平均ペースで進んだ。そして最終コーナー。
包まれるのを避けて一番外を回るライジングヘリオスと横山典弘。しかし、ここでノリにとって二つの誤算があった。
一つは馬場の内側が荒れてたため、各馬が内を避けた分、予想以上に外を回されたこと。
そしてもう一つの最大の誤算は、その荒れた内ラチ沿いを走る馬が一頭だけいたこと。その馬こそがレッドロードスルーだった!

「クッ…!届くか!?」
直線で出し抜けを図る武豊を猛追する横山典弘。大歓声が起こる中、一完歩ごとに差を詰めるライジングヘリオスだったが、僅かにクビ差及ばず。
ゴールの瞬間に歓声が悲鳴に変わった。ライジングヘリオス三冠への挑戦は皐月賞であっさりと終了したからである。
ゴール後の両騎手は対照的だった。ムチを天にかざして喜ぶ武豊に対し、横山典弘は呆然としていて、インタビューも上の空だった。

しかし、河内師が「よう乗った、ユタカ!!」と言ったように、レッドの勝利は武豊の好騎乗であるところが大きいことは、ほとんどの者がわかっていた。
そして、最後にヘリオスが見せた末脚は確実に超G1級であるということも…


第六章「宿命の対決」   (了)


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その他の同世代たち

RTR世代を彩る脇役馬達(クラシック春の陣)
関東馬ナリタオペラパサー…3戦2勝2着1回。青葉賞へ
関東馬エアヒシドーベル…皐月賞5着、共同通信杯賞1着、スプリングS3着。プリンシパルSへ
関東馬ムテキステキアニキ…若葉賞1着、皐月賞6着、プリンシパルSへ

関西馬トゥザヤナギムシ…皐月賞7着、シンザン記念3着、毎日杯3着、弥生賞2着。京都新聞杯へ
関西馬ジョンブルスマイル…きさらぎ賞勝利後、筋肉痛で休養。ダービーぶっつけ出走へ
関西馬ゲイキングチャイナ(ゲイは冠名)…皐月賞4着、毎日杯1着、きさらぎ2着。ダービーへ。

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第七章「パフォーマンス」


ライジングヘリオスは敗れた。三冠への挑戦権を獲得したのはレッドロードスルーである。だが、ヘリオスの戦いはこれで終わったわけではない。
次の日本ダービーで必ず借りは返す。音無師は闘志を燃やしていた。落胆して翌週で人気馬を飛ばしまくる横山典弘に、
「おい、ノリ。いつまでも落ち込むな。競馬に絶対は無いんやから。な?」
「はい…。」
「ダービーでは完璧に仕上げるから頼むで!?」
と、ノリに笑顔を戻させた。

皐月賞から3週間。「あの馬」が朝日杯FS以来、ターフに帰ってきた。タッチインザバブルがNHKマイルCに出走である。
ソエの痛みも完治し、5ヶ月ぶりのレースでも完璧に仕上げてきた。圧倒的ではないにせよ一番人気に支持されるバブル。
スタートで蛯名騎手が未勝利戦の時のようにやらかしてしまった。ESP炸裂である。場内からため息が漏れたが、直線で驚くべき出来事が起こる。
道中最後方にいたタッチインザバブルは、直線だけで他の17頭をまとめて差し切って見せた。上がり3Fは32.9。驚異の数字だった。
圧巻のパフォーマンスでタッチインザバブルは初のG1制覇。蛯名騎手に久々のGⅠをプレゼントした。

次走は3歳で安田記念挑戦というプランもあったが、一生に一度の日本ダービーを選ぶ。こうしてRTRが夢の舞台で初めて三頭が揃い踏みする。


第七章「パフォーマンス」   (了)


第八章「夢の競演」


三歳牡馬クラシック第二弾にしてホースマンの夢・日本ダービー。
この週はどの厩舎もピリピリした空気になる。

まずは栗東、皐月賞馬レッドロードスルーの河内厩舎。満足の仕上げが出来たようだ。河内師も「皐月賞馬に恥じない競馬ができるはず。あとはダービー男のユタカに託すだけや(笑)」と手応えを掴んでいた。
打倒レッドに燃えるライジングヘリオスの音無厩舎。この週の坂路一番時計を叩き出し、音無師が「渾身の仕上げをしました。」と宣言するほどの充実ぶりだった。
何より横山典騎手が「ヘリオスが僕の夢、ダービージョッキーにしてくれるでしょう。負けられません。」と覚悟の発言をしていたのは絶対の自信の表れか。
一方、美浦のタッチインザバブルの二ノ宮厩舎。叩き二走目で状態は更に上向き。ただ、「距離が…ねぇ。マイルであんな強い勝ち方されたら2400はちょっと長く思うよ。」と二ノ宮師は弱気だった。

そしてもう一頭の新興勢力、青葉賞を2分24秒で圧勝したナリタオペラパサー(栗東・角居厩舎)は脚部不安で無念の回避。
ダービーは三強決戦が濃厚となった。

スタートはまずまず揃う。
ハナを取るのは逃げ宣言をしていた皐月賞6着の⑪トゥザヤナギムシ(栗東・池江泰厩舎)の安藤騎手かと思われたが、
なんと内から②タッチインザバブルの蛯名騎手が前へ出る。追い込みが身上のバブルにとっては未知の距離に玉砕覚悟で挑んでいるように映った。
そして⑭レッドロードスルーもなんと先行集団にいた。⑤ライジングヘリオスもいつもよりは後ろ目の位置。予想外の各馬の位置取りに場内の18万人の観客がどよめく。
逃げたタッチインザバブルは絶妙にペースを落として蛯名はレースの主導権を得た。1000mの通過ラップは1分3秒7。
良馬場とは思えない遅さとまさかの奇襲で武豊と横山典に迷いが生じる。特にノリは、「遅い…よな?イヤ、先に動いてユタカにやられては…」と動揺を隠せない。
残り700mくらいで武豊が仕掛けた。天才の判断とほぼ同時に横山典が動く。
「これまでの自分の騎手経験を信じるんだ!そしてヘリオスなら確実に差せる!!」
迷いは完全に消えた。ゴーグル越しに気迫が伝わる。ここから炎の猛追が始まった。
タッチインザバブルが17頭を引き連れて直線。自身のNHKマイルCと全く逆の展開だった。しかし手応えに余裕がある。
逃げ込みを図る蛯名をレッドロードスルーの武豊が追う。一気に交わすかと思ったが、バブルも朝日杯FSでヘリオスに食らい付いたように勝負根性はある。
なかなか抜かせなかったが、残り100mでついにレッドがバブルを競り勝った。しかし、先頭に立った刹那、大外からライジングヘリオスが飛んでくる!
皐月賞の二の舞は御免とばかりにライジングヘリオスがついにレッドロードスルーに並ぶ。そしてほぼ同時に入線。ゴール前では完全にヘリオスの勢いがレッドを上回っていた。

「やった…!やったぞ!!」
ノリには捉えた確信があった。
「どうよ、ユタカちゃん?」
「負けたかなぁ…」
弱気なのは武豊。最後の勢いがそのまま両者の表情を象徴していた。

しかし…長い長い写真判定の末、電光掲示板の表示は一着⑭二着⑤。

場内が歓声と悲鳴に包まれる。
「そんな…!」
膝から崩れ落ちる横山典弘。
「えっ?勝ったの?」
笑顔が弾ける武豊。まさに天国と地獄がそのまま入れ替わった瞬間だった。

ダービー馬には「運」が必要だて誰かが言った。しかし、無情にもライジングヘリオスは運に見放された。頭の上げ下げのタイミングの差で栄冠を逃した。
皐月賞同様、最も強い競馬をしながらも2着。対するレッドロードスルーは二冠達成。
「ここまできたら当然(三冠を)狙いますよ」
と武豊はインタビューで宣言した。
一方の横山典弘はインタビューを拒否。音無師も「まだ菊がありますが…」とだけ述べるにとどまった。
RTR夢の初顔合わせの日本ダービーは明暗をくっきりと分けて終わったのだった。

レース後のコメント

1着レッドロードスルー(武豊騎手)
流れが落ち着いたので思い切って捉えに行きました。先に動いた分、最後は際どかったですがよく我慢してくれた。ここまで来たら三冠を獲りたい。
2着ライジングヘリオス(音無調教師)
よく伸びてくれたし勝ったと思ったが…この後は放牧に出して立て直して菊花賞に臨みます。
3着タッチインザバブル(蛯名騎手)
スタートが良ければ行くつもりでした。最後は一瞬夢を見ましたがダービーは甘くなかったですね。
4着トゥザヤナギムシ(安藤騎手)
ハナを取れませんでしたがよく粘ってくれた。距離は長い方がいいでしょう。


第八章「夢の競演」   (了)
最終更新:2006年10月18日 15:27