真っ白になっていた頭が色を取り戻していく。
暗がりに慣れた視線の先にあるのは無機質な天井。
そんなものを見続ける必要性が見いだせず、もぞもぞと体を動かす。
寝がえりをうった私の目に映るのは、一糸まとわぬ姿でベッドにうつ伏せる梓。
さっきまでの余韻に浸っているのか、その息はまだ乱れていた。
彼女の黒髪をそっと撫でる。
頭へ覚えた感触に、梓の焦点が私へと合わされる。
「……律先輩?」
ようやく耳に届くほどの声。
いまだ意識半分といったところか。
枕元にある電気スタンドのスイッチを入れ、互いの表情をより見てとれるようにする。
「大丈夫か?」
「……はい」
弱々しく答えると梓は体ごとこちらを向いて「でも、少し疲れました」と、自嘲のこもった笑みをのぞかせた。
その様子と明日のことを考えて、私は質問を投げる。
「どうする? 今日はもう寝るか?」
「そう……ですね。もう一回っていう体力はないかもです」
「そっか、シャワーはどうする? 浴びとく?」
「そうですね……いえ、やっぱりそれも朝でいいです」
「ん、それじゃ寝るか」
電気スタンドのスイッチを切り、乱れたブランケットに手を伸ばす。
寝転んだままの梓へふわりとかけてやると、彼女が静かに口を開いた。
「あの、律先輩」
「どした?」
「えと、その……ぎゅってしてくれませんか?」
普段の梓からは思いもよらない、恥ずかしさやためらいの混じった願い。
そんな梓の希望に少しでも早く応えたくて、何も告げずに腕を背中へ回し彼女を優しく包み込む。
いきなりのことに梓は小さく驚きの声を上げたが、すぐにその身を私へと預けてくれた。
「……あったかいです、律先輩」
「なんか今日は素直っていうか、やけに甘えてくるな」
「私だってこういう気分のときもあるんですよ」
私の胸に顔をうずめているから、梓の表情はうかがいしれない。
でもきっと、自分で言うのもあれだけど、喜びに満ちた表情を浮かべているんだろう。
だってこうやって梓を抱きしめてる私自身が、もう幸せで幸せで仕方がないんだから。
終わり
最終更新:2011年08月28日 18:46