234 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:27:17 ID:YaABFC6o0
SS落とします。5レス程お借りする予定。
ちなみに、禁断の愛系でダウナー要素があります。
軽度とはいえ流血描写もあります。
苦手な方はお手数ですが、飛ばしていただけると幸いです。
235 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:29:09 ID:YaABFC6o0
律は寒さを感じていた。
上半身裸という今のファッションが原因では無い。
季節ゆえに、その恰好だけなら寒さは感じないだろう。
律が寒さを感じる理由は、気温では無く専ら状況にあった。
即ち、精神的な原因に依る寒気だった。
「梓とは何も無いって言ってたよね?
何度も何度も何度も何度も、ね。
四回目に私が問いかけた時なんて、しつこいって怒鳴ってたよね?」
冷たい澪の声が、律に寒気を齎していた。
「ごめん……」
「謝ったって遅いよ。いや、遅くなくても許さないけど。
恋人を裏切って、しかも妹分に手を出していたか。酷い話だ」
澪は写真を手に取って続けた。
「あれだけ意固地に否定していても、
こんな証拠見せ付けられたら白状するしか無いよな。
できれば私がこの証拠を見せ付ける前に、自白して欲しかったけど。
そこが悲しいよ」
そうだった。今までも梓との関係を、澪に看破されかけた事があった。
だが証拠の不在故、律はその追及を躱してきた。
ところが今回の詰問は、澪の方が一枚上手だった。
予め梓との現場を収めた写真、それを証拠として用意していたのだった。
「ごめん……」
「駄目だと言っている。なぁ、律。
どうして私が、この現場で乱入しなかったか分かるか?
本当は、その場で二人をグチャグチャのメチャメチャにしてやりたいくらい、
憎悪に滾っていたんだ。
それでも堪えた理由が、胃を痛めてまで堪えた理由が、お前に分かるか?
あと一度だけチャンスを与えてやりたかったんだよ。
もし正直に告白してくれれば、許そうって。
その仏心でさえ、お前は裏切ってくれたけどな」
律は申し訳なさそうに目を逸らした。
申し訳ないからこそ、律は澪の命ずるままに上半身裸になったのだ。
だが、その事を告げたところで、澪の怒りは収まらないだろう。
黙っている律を傍目に、澪は紙束を左手に取った。
右手にはやや大きいホッチキスを握りこんで、律に見せ付けながら言う。
「これ、40枚くらいまでなら綴じられるんだ。
ただ右利き向けだから、ちょっと使いづらくはあるけれども。
まぁ、見てな。この用紙、丁度40枚ある」
確かに澪が左手に持つ紙束は、そのくらいの厚みがあった。
澪は躊躇せずに、ホッチキスを紙束に挟んで針を打ち込んだ。
ホッチキス特有の音が響いた時には、紙束は綺麗に綴じられていた。
「ふーん。40枚っていうのは最大の枚数じゃなくて、綺麗に綴じる目安か。
実際の威力はもっと上だろうね」
そう言いながら、澪はホッチキスを律の小さな乳首へと宛がった。
「みっ、澪?冗談、だよね?」
律は震える声で言ったが、澪は取り合わなかった。
「私だって、お前の浮気が冗談だったのならどんなに良かったか。
痛いだろうなぁ、強力なホッチキスだから」
その言葉と共に、澪の手に力が込められた。
236 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:31:29 ID:YaABFC6o0
「痛っ」
律は乳首に痛みを感じ、咄嗟に叫んだ。
だが、その痛みは予想していた程、激しいものでは無かった。
少なくとも、針が打ち込まれた痛みでは無い。
乳首に走っている痛みは、圧された類の痛みだ。
また、ホッチキス特有の音も聞こえてこなかった。
律は怪訝に思って、問うような視線を澪に向ける。
その視線を受けた澪は、ホッチキスを律の乳首から離した。
そこに針が打ち込まれた形跡は無かった。
「空打ちだよ。一発しか込めてなかったしさ」
澪はホッチキスを開きながら言った。
確かに、針は充填されていなかった。
律は安堵の吐息を漏らす。
「私が大切で大事で大好きな律に、そんな酷い事できると思うか?
そんな人間じゃないよ。裏切られた事は憎いけど、律にホッチキスは打てない。
だから自分で打ってよ」
律は安堵から一転、再び寒気に見舞われた。
澪が改めて針を込めて差し出してくるホッチキスを、怯えた目で見やる。
「ほら、悪い事したと思ってるんだろ?
その反省、態度で示してよ」
「でも……」
律はホッチキスを受け取る事無く、視線を漂わせた。
罪悪感が負い目となって、正面きっての拒絶が憚られた。
それ故の、動作だった。
「あのさ、私は律にホッチキスを打てないって言ったよね?
その意味、分かってる?律には直接的な攻撃ができない、って言えば良かったかな?
まだ分からない?あのさ、浮気って一人じゃできないよね?
もう一人には、何処までもできるって意味だよ」
律は弾かれたように澪を見上げた。
(あの梓に……ホッチキ)
梓の笑顔が胸に浮かんでくる。
──梓を守りたい
その一心が唐突に芽生え、律は毅然とした決意を込めて言う。
「やるよ。やるから、梓には手を出すなよ」
ホッチキスへと手を伸ばしたが、律が掴む前に澪は引っ込めていた。
「えっ?」
呆然とする律に対し、更に冷たさと鋭さを増した澪の声が落ちてくる。
「気に入らないね。
私に対する罪悪感なんてどうでも良いんだ?
梓さえ良ければ、裏切られた私の気持ちなんてどうでもいいんだ?
だからこそ、梓の名前を出した途端にお前は自傷しようとした。
私に対する罰だって言った時は、渋ってたくせに」
「あ、いや……。そういうワケじゃ……」
律の声は弱々しかった。
確かにこの展開だけ考えれば、澪の言は尤もだった。
律は反駁はおろか申し開きさえできないまま、口を閉じた。
「へー、そういうワケじゃないんだ?なら、信じてあげる。
だからこれ、梓の乳首に打ち込んで来てよ」
律は唖然とした表情を澪に向けた。
237 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:33:23 ID:YaABFC6o0
「何だって?」
「そういうワケじゃないって事は、私からの罰を受ける覚悟があるって事だろ?
梓さえ良ければ、って考えていないんだろ?
ならできるよね?
それに梓だって、私と律の関係を知っていた。
私を裏切ったのは、梓も同じだ。実の妹のように可愛がっていたのに。
だから、梓も罰を受けなきゃいけない」
澪の声は無機質で、そしてやはり冷たかった。
泣き付こうとも怒鳴ろうとも、その言を翻す事など不可能だろう。
それが分かっていながらも、律は涙を浮かべて首を振った。
「嫌……嫌だよ……。梓にそんな事、できないよ……」
梓の笑顔が、再びに胸に浮かぶ。
「泣くなよ、私が悪い女みたいじゃん。これだって仏心なのにね。
律が打ち込むなら、一発で許してあげる。
でも……私自ら出向くなら?さっきも言っただろ?
何処までもできるって」
そう言われてしまえば、律に選択肢など無くなる。
だが、それでも決断できない。
(梓にそんな事、できない……)
「許してよ……許してよ澪……浮気してごめんなさい……許して……」
涙で霞んで、澪の姿が良く見えない。
そのぼやけた輪郭に向かって、謝罪を繰り返した。激しい後悔を込めて。
「駄目だ。前も言ったはずだ。
もし浮気を考えるなら、相応の覚悟を決めろと。
私に殺される心算で、そして私を殺す心算でやれと」
霞んでいても冷たい澪の声を聞けば、どのような表情を浮かべているか大体分かった。
慈悲の欠片も無い、冷徹な憎悪に満ちた表情が浮かんでいるのだろう。
それでも律は、謝罪を続けた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……許して……許して……」
その時、ドアの開く音が聞こえた。
続いて澪の声が聞こえてくる。
「梓ぁ……」
冷たい声質から一転、燃えるような声が迸っている。
だが、澪の声質の変化よりも、律にはその内容の方が気になった。
「梓?」
ドアの方向へと視線を向けると、確かにその姿があった。
霞んでいても、梓の姿を見間違えたりはしない。
「助けに来ましたよ、律先輩」
梓がハンカチで涙を拭いてくれた。
「どうして?」
「律先輩に会いたくなったけど、電話に出てくれないものですから。
そういう事は今までもありましたが、今日は約束があったから不安になったんです。
何かあったんじゃないかって思い、家まで来たんです。
そしたら……バレちゃったみたいですね」
律は梓の説明を聞き終わると同時に、咄嗟に叫んだ。
「ばっ、逃げろっ。逃げて梓っ」
考えてみれば、この場に梓が居る事は最悪の展開だった。
事実、澪は梓を逃がす心算などないらしい。
「逃がさないよ」
「逃げませんよ」
梓はそう返すと、上着を脱ぎ始めた。
238 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:35:25 ID:YaABFC6o0
「全部までは知りません。でも……途中からなら分かります。
盗み聞きしてたワケじゃないんですけど……。
入ってくるタイミング、逸しちゃって」
その言葉を放ち終わったときには、既にブラジャーにまで手を掛けていた。
「ふーん?律が責められている時、タイミング程度の問題でもたついてたんだ?」
澪の放つ皮肉に対し、梓は申し訳なさそうな声で応じた。
「いえ……怒りもご尤もだと思ったんです。
だから、律先輩も罰される必要があった。私もですが。
お姉ちゃんに」
「黙れっ」
梓の言葉は、澪の怒声によって遮られた。
「お前にお姉ちゃんなんて言われる覚え、もう無いんだよっ。
そんな資格、もうお前に無いんだよっ。
今のお前は妹なんかじゃない、不埒で淫猥で恥知らずな泥棒猫だっ」
半狂乱に喚く澪に対してかける梓の声は、優しかった。
「……ごめんなさい、その通りです。私は……裏切っちゃいました。
だから、要求通りの罰を受けます。
だから、また姉と呼ばせてください。今でも貴女は、私に取っての憧れです」
梓は言うや否や、澪の手からホッチキスを引っ手繰った。
そして自身の乳首に──躊躇いなど一切見せず──針を打ち込んだ。
凄まじい音が響き、梓の顔が痛みに歪む。
「梓っ」
律は悲しげな声で叫んだ。
澪は呆然とした表情で、梓を眺めている。
「ああ、まだ足りませんか?ああそうか、こっちもですか」
梓は瞳の端に涙の粒を溜めながら言い、もう片方の乳首にもホッチキスを宛がった。
しかし、針が打ち込まれる事は無かった。
澪が寸前で引っ手繰っていたのだ。
「もう……いい。もういいよ、梓……」
澪の声は沈んでいた。
「でも、お姉……澪先輩に対して、申し訳が立ちません。
私は……妹のように可愛がってくれた貴女を裏切ったのだから」
「分かってた、分かってたんだよ……。
律を責めようと、梓を責めようと、どうせ私の所に律はもう帰ってこないって。
だから、もういい……」
澪は疲れ果てたように呟くと、座り込んで頭を抱え込んだ。
「澪……」
律はその前に座り込んで、頭を下げた。
「本当に、ごめん」
「もういいよ、謝らなくていいよ。聞きたかったのは、その言葉じゃないから」
律はそれ以上何も言う事ができず、黙り込んだ。
「梓……。お前、痛くないのか?
乳首にこんな強力なホッチキス打ち込んで、痛くないのか?」
続いて澪は、梓に問いかけていた。
たった今針を外したが、その際にも肉が少し抉れている。
「正直に言えば、痛いです」
今なお、疼痛は続いているだろう。
「なら、私を恨んでいるか?そんな要求をした私を、恨んでいるか?」
239 :軽音部員♪:2011/06/19(日) 21:37:09 ID:YaABFC6o0
「とんでもありませんっ。逆です。
償いきれない罪を申し訳無く思っています。
だって……お姉ちゃんの胸の痛みは、こんなものじゃ無かったはずだから」
「ぅえっ」
澪は顔を伏せて慟哭した。
慟哭はすぐに嗚咽へと変わり、澪の肩が激しく震える。
律はその姿を見て、澪の言っていた事を思い出す。
──浮気をするなら私を殺す心算で──
比喩だと思っていた。
だが今の澪を見れば、あれは決死の発言だったのだと思い知る。
一頻り泣いた後、澪は顔を上げた。
瞳は赤く、その周辺には涙の跡が残っている。
「ごめんな、居座ったりしてて。
お邪魔だろうから、私はもう帰るよ。後は二人で仲良くやってくれ。
祝福……するよ……だから……幸せに……なれよ……」
最後の言葉は、相当無理して付け加えたように感じられた。
だが、その事を指摘したりはしない。
苦労してまで繕った態度を、守ってやりたかった。
「澪、ありがとう」
だから礼を述べた。
梓も律に倣った。
「お姉ちゃん、ありがとう」
澪は笑顔を無理矢理繕って見せると、部屋から出て行った。
「やっちまったな。償いようも無いや」
澪の姿が見えなくなった後、律は悲しげに呟く。
「そうですね……本当に申し訳ない事しちゃいました。
取り合えず、服は着ましょう」
「その前に、それ消毒しないと」
血の滴る乳首に視線を向けて、律は言った。
「いいですよ……こんなの、傷ついたままで。
お姉ちゃんの事を思えば、傷なんて癒されなくていい」
「いや、悪いのは私だ。お前は癒されろ」
律は梓の傷ついた乳首を、口に含んだ。
「駄目ですよ……私にそんな資格、無いのに。
律先輩こそ、癒されて下さい。律先輩を盗んだのは、私なんですから」
梓が優しく髪を撫でてくれた。
「私が勝手に裏切ったんだよ。梓は悪くない」
一旦口を離して、律はそれだけ言う。
梓は軽く首を横に振っただけだった。
二人、互いの罪を否定しながらも、分かっていた。
二人とも、贖われない恋の罪に塗れている事を。
それでも別れようとは思えないくらい、互いを愛していた。
悲しいくらいに、愛してしまっていた。
律は再び梓の乳首を口に含めて、傷を癒す行為を再開した。
血の味でも乳の味でもなく、罪の味が律の舌に残った。
<FIN>
最終更新:2011年09月06日 15:16