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87 :軽音部員♪:2011/01/23(日) 16:48:36 ID:8pmpxFFk0

『何十回、何百回のキスを』

ここは私の部屋。ベッドに寄りかかって、音楽雑誌を読んでいた。けれど、その雑誌に集中できない。ちらりと、隣を盗み見る。そこには、ついこの前恋人になったばかりの、梓がいた。梓も、音楽雑誌を読んでいた。


パラパラと雑誌をめくる音だけが室内に響く。


どうにも、落ち着かない。だって、だってだぞ?恋人がすぐ傍にいるんだ、これが落ち着いていられるはずがないだろ?そう、心の中で言い訳じみたことを思う。


それに・・・恋人になれるなんて、思わなかった。だって・・・梓は―――


―――唯のことが、好きなんだと思ってたんだ。



そう、思ってたのに・・・そう、思っていたから・・・梓のことは、諦めてたんだ。叶うことはきっと、ないだろうと。けれど、もうすぐ卒業。だから、せめて、せめてこの想いだけは伝えよと思って、放課後、梓を呼び出したんだ。


当たって砕けろ!まさにそんな勢い任せの告白。


88 :軽音部員♪:2011/01/23(日) 16:50:52 ID:8pmpxFFk0

『梓、好きだ!付き合ってください!!』


頭を下げて、差し出したのは、右手。払いのけられのを覚悟の上で、手を差し伸べた。どれくらい、たったころだろう?数秒か、数時間か・・・時間の感覚さえ分からなくなってしまった私の右手に、優しい温もりを感じた。


『え・・?』

おろどき、顔を上げると・・・そこには涙流しながら、私の手を握っている梓がいた。


『律先輩・・・・うれしい、です』


『私も・・・律先輩が、大好きです』


そう、涙ながらに言う梓の言葉が頭に届いた時、私の瞳から自然と涙がこぼれていた。


『ほん、とうなのか・・・?』

『ほんとう、ですよ・・・・』

梓の言葉に、気付いたら私は力いっぱい梓を抱きしめていた。そして、つぶやいた言葉は


『ありがとう』


の一言。その後は、私達はただ抱きしめあっていた。




そう、ほんとうについこの間。だからかもしれない。いまだに信じられないのは・・・


『梓は、ほんとうに私のことが好きなのか?』


そう、思ってしまっている自分がいる。ちらりと、また梓のほうを盗み見る。本を見る梓の横顔は、かわいくて・・・私は気付いたら、手を伸ばしていた。


「りつ、せんぱい・・?」

戸惑いの言葉を投げかける梓。そんな梓に、私は気付いたら言ってしまっていた。


「なあ・・・梓は、ほんとうに私のことが好きなのか・・・?」

私の言葉に、梓は一瞬瞳を揺らし、「はぁ・・・」とわざとらしくため息を吐いた。


89 :軽音部員♪:2011/01/23(日) 16:53:45 ID:8pmpxFFk0

「あの時も、言ったじゃないですか。本当に、律先輩が好きですって」

あの時とは、きっと告白した時のこと。『好き』の言葉を、何度聞いても不安になる、バカな私。


「・・・なら、キスできるよな?」
「へ?!き、きす?!」

真っ赤になって慌てだした梓に、私はどんどん近付いていく。


「梓・・・・」
「り、りつ、せんぱい・・・」


吐息がかかる距離で、私達は見つめあっていた。


「キスをしたら、信じてくれるんですか・・?」
「さあ・・・どうだろうな・・・」
「もう、なんですかそれ・・・・」


梓はそう呆れながら言葉をこぼし、少し離れていた私達の距離をいっきにちぢめ、そして―――私のくちびるに、そっとキスをした。


「なら、信じてくれるまで、何度だってキスをします。何十回でも、何百回でも」


―――そうしたら、いつかちゃんと信じてくれますか?


梓の不安げな問いかけに、私はなんと愚かなんだろうかと痛感した。梓はこんなにも私と向き合ってくれているのに・・・『ごめんな』と、『大好き』を伝えたくて、私はふたたび梓にキスをした。そして、素直じゃない私の口から出たのはこんな言葉。


「ああ、いつか信じてやる。けど、その代わり・・・私だって、何十回、何百回とお前にキスをするからな」
「もう、なんですか、それ・・・・」


梓は呆れながら涙ぐみ、だけど、最後は笑ってくれた。ごめんな、もう信じてるよ。お前の気持ち。だけど・・・何十回、何百回のキスも捨てがたいかな、なんて・・・な


おわり



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最終更新:2011年01月25日 22:31