674 :軽音部員♪:2012/06/21(木) 07:20:28 ID:5sOTOjp60
すずめの鳴き声が朝を告げ、車のエンジン音が静かな町に響きわたる。
窓の外のたくさんの音を感じながら、部屋に差し込む日光を浴びる。
大好きな人の腕を枕にして過ごすこの時間が、私は何よりも好きだった。
「りーつせーんぱーい」
そう声をかけても、律先輩は深いまどろみに意識を預けたままだ。
「律先輩ってば」
ちょいちょいと頬をつつくと、気だるそうに体を動かす様子が可愛らしい。
私の方が朝は強いのだ。
いつも少し早く目を覚ましては、こうして律先輩をいじって遊んでいる。
これも大好きな朝の一時だ。
ふと、枕元に置かれた眼鏡ケースに目を留めた。
目が悪くなったからと言って、最近律先輩が買ったものだ。
赤いふちのスタイリッシュな眼鏡をかけた律先輩は、いつもより少し知的に見えるから不思議だ。
「似合わない」なんて言うと、首をしめて怒られるのだけれど。
それほど度は強くないのか、私がかけても目が痛くならなかった。
「うぅん……梓?」
律先輩は眠たそうに目をこすった。
「おはようございます」
「おはよ……ん、眼鏡」
「えへへ、ちょっと借りてます」
「返してくれ」
「似合ってますか?」
「はいはい、よく似合ってるよ。だから返せ」
「返事が適当だから嫌です」
「目悪くなるぞ」
「それが、案外私の目にも合うんですよね」
「たぶんお前も視力落ちたんだろ」
「かもしれませんね……ということで、この眼鏡もらっちゃおうかな」
「何がということでだ、返せこのっ」
「ひゃっ、返しませんよー?」
買ったばかりの眼鏡を巡って、律先輩と私との間で取っ組み合いが始まる。
そうしているうちに朝日が昇り、外はにぎやかさを増していく。
「ひぃ、ふぅ、やっと捕まえた」
「捕まった�・」
「チェックメイトだ、さあ返せ」
「それじゃあ……」
「んー?」
「キスしてくれたら、返します」
大好きな人とキスをして、今日も私の一日が始まる。
最終更新:2012年06月23日 23:49