※アップローダーにあげられていた物を転載しています。
※R-18注意
クリスマス・イヴ。
その日は恋人たちにとって特別な日である。
もっともその考えが浸透しているのはここ日本だけであるらしいのだが。
「ふぅ……さむいなぁ……」
そんな中、梓はひとりで近くの商店街まで来ていた。
今日はムギの家で放課後ティータイムの面々を招待した盛大なクリスマスパーティが催され、夕方の時頃におひらき、という形になったのだが。
『なぁ、梓。明日のクリスマス本番は二人ですごさないか?あたしの部屋でさ!』
パーティがおひらきになり、二人きりでの帰り道。
いやー寒いねー、今日は楽しかったですねーと、他愛のない会話を交わしていたとき、不意に律がそう言ったのだ。
恋人と、二人きりの、クリスマス。
断る理由などあるだろうか。
『はい!そうしましょう!』
と、即答したのだ。
『んじゃー、明日の12時くらいからどっかいこうぜ!クリスマスデートだー!』
きゃっきゃとはしゃぐ律を見ていると、心がふんわり暖かくなるのを感じた。
『そして夜は二人きりで……ぐふふ』
『……!もう!すぐそういうこと言って……!』
無邪気な笑顔ではしゃいでいるかと思ったら、次の瞬間には邪気たっぷりの笑顔をこちらに向けてくる律であった。
『じゃぁ、また明日なー!』
そう言ってその日は梓の家の前で別れたのだった。
帰宅して、今日のことを振り返りつつ明日の日に思いを馳せる梓の顔はだらしなくにやけきっていた。
が、ふと。
(そういえば……今日のプレゼント交換では律先輩の分は唯先輩のところに行っちゃってたなぁ…)
そういえば、恋人である律には渡してなかったことを思い出したのである。
(もしかして、それも考えた上で、言ってくれたのかなぁ……)
二人きりでデートに行けばお互いへのプレゼントも買える、と。
なるほど、先輩らしいや。と思いまたしてもにやついてしまう梓。
(そうだ!)
すくっと立ち上がり、再び外出する準備を整える。
(プレゼントを先に用意して、驚かせちゃえ!)
買いに行く前に、何が欲しいか聞く前に向こうがほしいものを準備しちゃえ!と。
ちょっとしたサプライズをしてしまおう。いつも私を気遣っている優しい恋人のために梓は商店街へ向かったのである。
(うーむむむー……)
と、意気込んできたものの。やはり恋人の欲しいものほどわからなくなるのが乙女心なのだろうか。
すでに1時間近く商店街をうろつき、ショーウィンドーで立ち止まり、を繰り返している。
(律先輩なら、喜んでくれる!)
という気持ちと
(でも本当にほしいものをプレゼントしたい!)
という気持ちの間でふらふらとしているのである。
(かといって…ここで律先輩に直接聞いたら、あの勘のいい先輩のことだ。サプライズ作戦に気づかれちゃう…)
もやもやといろいろ考えながら歩いていると、何度目かの商店街の終点に到着してしまった。
(むー……。よし、次で決めよう、次で…)
そう自分に言い聞かせ、踵を返そうとした瞬間。
「…律先輩?」
商店街の終点からさらにちょっと先。明日な、と言って別れたはずの人がいた。
だが、なんだか様子がおかしかった。
(…なんであんなにこそこそしてるんだろう)
パーカーとコートのフードをふかめにかぶり、オシャレ用と言って買った黄色いフレームのメガネ(伊達)をかけている。
そしてしきりに周りの様子を伺うかのようにきょろきょろしているのだ。
いつもの堂々とした律先輩らしからぬ行動である。
(怪しい……。あんな変装みたいなかっこで……)
時刻は20時。
場所は商店街の先。
食材や文具の買い出しならばいつものこの商店街を使うだろうし、それも違う。
そしてこっちの方角に、知り合いはいない、はず。
話しかけてみようか、いや、サプライズがバレる。
電話してみようか、いや、それでもバレる可能性がある。
(……恋人が一人でこっそりなにやってるか確かめるのも!彼女の役目だよね!うん!)
というわけで、そう自分に言い聞かせつつ、距離を保ちながらこっそり後をつけることにしたのである。
―――――
(それにしてもどこまで行くんだろう……)
商店街を抜け、駅前を通り過ぎる。
この先はビジネス街で多くのクリスマスで浮かれた雰囲気はあまりない。
(……この先って……!)
ビジネス街。その近くには居酒屋やバーなどが立ち並ぶ通りが有り、さらに入り込むとそこは。
(ふ…ふ…風俗街に律先輩が…!!!?)
そういった感じの店がならぶ通りに出るのである。
約10m先を歩いている律は迷うことなくその通りに入り、進んでいる。
(なんで律先輩がこんな夜の街に!!?)
夜はここで働いている!?そんなまさか!ライブハウスに!?いや、だったらきっと私を誘うか、一人で行くにしても連絡はあるはず!え!?なんで!!?
いろんな考えが浮かんでは消え、消えては浮かんでいく。
その時、誰かが自動ドアを開けたコンビニの中から、曲が聞こえてきた。
この季節になるとよく聞くその曲は、その歌詞は梓の頭にあるひとつの嫌な考えを思いつかせた。
(マサカ……)
明日、二人で会おうといったのは、別れを切り出すつもりなのか。
そんな素振りなんか、見せなかったのに。いや、あの人は内面の感情を隠すのが上手い、ということを知っている。
ここに来たのはその、次の相手。いわゆる浮気相手とイヴを過ごすからなのではないだろうか。
ここに来るまでにこそこそしていたのは、そういうことだったのか。
(……違う!律先輩は……そんな人じゃ……!!)
自分が思いついてしまった納得のいく答えに、必死に否定を入れる。
そうこうしていると、ふいに律が裏路地に入る角に入っていった。
その角の電柱には。いかにもな名前の、休憩所とは名ばかりな、ラブホテルの名前の看板があった。
(嘘……律先輩……本当に……)
完成させたくなかったパズルのピースが、当てはまってしまう感覚。
梓は口を開けて放心状態になったまま、泣き出してしまいそうだった。
いてもたってもいられなくなった梓は携帯を取り出し、律に、恋人に電話をかける。
ひとこと、なにかひとこと言って欲しくて。
無機質なコール音は、1コールで途切れた。
「はいはーいもしもしー」
「うにゃあああああああああ!!!!!?」
いつの間にやら、ラブホテル方面に曲がっていった愛しの恋人は梓の僅か1mほどのところにいつもどおりの悪戯な笑顔で立っていた。
「あっはっは、驚きすぎ。なんか後ろから着いて来てたからさ、どっかで驚かしてやろうと思ってさー」
「え…ええと……」
理解が追いつかない。着いて来てた?驚かす?え?あれ?
「どした?そんなにびっくりしたのか?」
つい数分までの自分のぐっちゃぐちゃの考えはなんだったのか。
全部誤解だったのか。そんな安堵感と。
―なぜだか無性に腹が立ってきた。
「律先輩のばかあああああああ!!!!」
すぱーんというクリスマスらしい景気のいい音が夜の街に響いた。
―――
「んーなるほどなるほど、つまりラブホテル方面に曲がっていく私をみた梓は、私が浮気をしていたのではないかと思っていたわけだ」
事情の説明に要した時間は、梓の頭が冷静になる時間を合わせておおよそ30分であった。
「はい…。疑ってしまって、すみませんでした…」
「んー、気にしなくていいよ。そう見える行動してたあたしの方にも問題があったわけだしね」
そう言って、梓の頭を優しく撫でる律。
「うにゅ…。ありがとうございます。それで、律先輩」
落ち着きを取り戻したはずの梓の顔はそれでも赤くなっていた
「おう、どうした梓さんよ」
「……なんで私たちはそのラブホテルにいるんですか」
先ほどの角にあった、律が入っていったと勘違いしたラブホテル。
混乱した梓に叩かれた律はとりあえず中に入って落ち着こう、と梓に提案し梓もそれに乗った。
そして、状況を説明し、誤解を解く。
ベッドに腰掛けつつ話を聞いてみれば、なんのことはない。
律も梓のためにこっそりプレゼントを購入し、驚かせようと思っていたのだ。
冷静になった梓は、あることに気づいた。
ここに入る必要はあったのだろうか?と。
「だ、だって梓が突然泣きながら叩いてくるから、私もテンパっちゃって…てへ♪」
「~ッ!わ、私が混乱してる隙にラブホテルに連れ込むなんて!最低です!」
「え~でも、ちょっと内心ドキドキしてるんじゃないの~?」
「!!!」
やはり勘がいい。普段はその察しの良さに助けてもらうことの多い梓だが、今ばかりはちょっと困ったものだった。
「そ…そりゃぁ……恋人と?こういうところに入ったら?緊張もしますよ…」
律はふうん、と呟きつつ、梓を撫でている右手を首から肩に回し、そのまま押し倒した。
「え、ちょ、律先輩…?」
ぽふ、という音にならない毛布の音。
「あたしも、おんなじ」
え?という疑問文が頭に浮かんだがそれは言葉にはならなかった。
「んっ……」
唇を、唇で塞がれたからである。
舌をからめない、深くはないけど丁寧な、キス。
名残惜しそうに口を話す律。
「あたしも、ドキドキしてるんだ。梓と……好きな人とこんなところに入っちゃって、さ」
押し倒した、その姿勢のまま、首筋・ほほ・まぶたに優しくくちづけを落としていく。
「あ、あの、律…先輩…?」
そのくちづけを受け入れながらも、戸惑いを隠せない梓。
「ごめん、梓。雰囲気に飲まれちゃった。止まらない、かも」
「え、ちょ、その、律先輩…!?」
もう一度、口に。今度は深く口付ける。舌を絡ませ、唾液を交わらせる、深いキス。
「んっ…りつ…せんぱぁ…いぃ……」
「梓……かわいい…」
抱き合いつつ、お互いにくちづけを交わす。
貪るようなことはしない。大事に、大事に。優しく、優しく。
時間にして、1~2分だろうか。お互い、息は荒くなり、顔は紅潮している。
「あの…りつせんぱい…キスだけじゃいやです…」
きゅっと背中をつかみ、顔を赤らめたとろんとした顔でおねだりする。
「うん…あたしも、我慢できない…!」
律が興奮しているからか、焦った様子で梓の上着に手をかける。
上半身だけ下着姿になった梓を見つめ、その後スカートにも手をかけ慣れた手つきで脱がしていく。
「……」
あらわになったごくり、と思わず生唾を飲み込んでしまう律。
(あたしゃオヤジか…。)
「私だけ脱ぐの、不公平ですっ…」
律がそんなことを考えながら、下着も脱がそうとしていると、下のほうから梓の恥ずしさを押し殺した声が聞こえてくる。
「わ…わかったよ…」
「律先輩は、私がぬがせます」
「えっ…いや、いいよ!」
しかし梓は聞く耳を持たずに、律の服を脱がせにかかる。
結局そのまま、裸になる二人。
「りつせんぱい…きれい…」
「う、うるせっ…」
カチューシャも外され、前髪が梓の顔に少しかかる。梓はその前髪を愛でるように手ぐしでなでていく。
「じゃ、じゃぁ梓…いいか?」
「…はいっ」
律は梓の体に覆いかぶさるような体勢になり、控えめな胸を愛撫していく。
「ふっ…くぅ」
少し、胸の先端に手のひらが触れただけで、梓の口から甘い声が漏れる。その声が、その反応が律の理性をさらに蝕んでいく。
梓が、自分の手で気持ちよくなってくれている。その事実が更に律の感情を高ぶらせる。
「あっ…り、つせん、っぱい…」
ちぅ、とその胸の先端を吸い上げる。背をそり、嬌声を上げる。
しばらく律は、執拗に胸を舐めたり口の中で転がしたり甘噛みしたり吸ったりしていた。
「せんぱい…!もう、我慢できないですぅっ……!」
もどかしくなったのか、切ない声を上げながら口でされていない方の胸を弄っている手をつかみ、下へ持っていこうとする。
「わ、わかった…」
そっと、彼女の下腹部に手を伸ばす。
「……ッ」
ぴりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりりり
「!!!」
突然、鳴り響く携帯の着信音。
律(の脱ぎ捨てたズボンのポケット)から流れてきている。
ディスプレイには「家」の一文字
「うわっ!やっべ!!!」
時刻を見てみればすでに22時である。
裸のまま、電話に出る。
「もしもし?あ、聡?え?わかったよ、んじゃな!」
「ど、どうしたんですか……?」
シーツで体を隠しながら梓が身を乗り出しながら聞く。
「うーん、そういえばあたし、今家族パーティ中でさ……。飲み物の補充を、ね?」
「え?」
裸のまま、バツの悪そうな顔でほほをかく。
「え、え、え、じゃ、あんなキョロキョロしてたのは……」
「…こんな時間に空いてるスーパーを探して、ね?」
「メガネをかけてたのは…」
「家ではかけてるんだよ、テレビとか、本とかみる時」
そういえば、梓は律がなぜ外出してたのかを聞いていなかった。
「じゃ、じゃぁなんで私の誤解を解くときにそういう説明をしてくれなかったんですかー!!」
「そ、それはほら!梓を落ち着かせるので必死だったからさー!」
なんだろう。説明と説明後の行動が逆だった気がする。これがラブホテルという非日常的な場所の魔力なのか。」
「じゃぁ!なんでこんなことしてるんですかー!」
「梓が可愛くて…つい」
「かわっ…えぅっ…ついじゃないですよ!あやうく場の雰囲気に流されて…!」
一線超えるところだった、とは言えなかった。…意外と、それを望んでいる自分がいたのだから。
「なぁ、梓」
「は、はいぃ!?」
そんな自分に赤面していると、真面目な顔をした律が、おすおずと質問をしてきた。
「その、私とさ、あー、やる、の。どうだった?」
「そ…それは…」
少し冷静になり、先ほどまでの自分を思い出す。恥ずかしい。
「は、恥ずかしかったです…けど」
そこでふぅ、と息を吐き
「き、気持ちよかったし、それに嬉しかったです…!こんな体に、体を、欲してくれたっていうのが…」
一息でそこまで言うと顔を真っ赤に染め、布団に倒れた。
「梓……」
その頭をそっと撫でる律。
「うん、ありがとう」
梓の頭を優しく撫でながら、その感謝の声は安堵に満ちていた。
―――――――
その後。立ち直った梓を着替えさせ、急いで帰路に着く二人。
「ねぇ」
もう少しで梓の家に着くころ。少し気まずい沈黙を破ったのは律だった。
「は、はい。なんですか」
「あしたさ、クリスマスデート行ったあと、さ」
一拍置き、とことこと梓に近づき
―さっきのつづき、終わりまで、しようか―
と、耳元で、囁くように。
「~~~~ッ!!!!」
街灯しか付いていない暗がりの通りでもはっきりと分かるほど、顔を耳まで真っ赤にする梓。
「り…」
「律先輩のばかあああああああ!!!!」
すぱーんというクリスマスらしい景気のいい音が、再び夜の街に響いた。
おわり
最終更新:2013年01月13日 12:27