655 :軽音部員♪:2010/12/27(月) 01:58:33 ID:8KOV8gO.0
はあ、とひとつ息を吐く。
目の前に立ち上る白いもやは、すぐに消えて見えなくなった。
「寒いですね」
「ん、そだな」
二人並んで寒空のもと特に目的もなく街を歩く。
昨日まで世界を彩っていたクリスマスソングやイルミネーションはたった一夜でほとんど姿を消していた。
「昨日までの喧騒がウソみたいだな。クリスマス狂想曲、演奏終了ってとこか」
マフラーを直しながら律先輩がつぶやく。
「私たちもそのクリスマス狂想曲の演奏に参加してましたけどね」
「まあな、今年のクリスマスパーティーも楽しかったな」
イブの夜に開催された、毎年恒例となっている軽音部関係者のクリスマスパーティー。
もうすでに私含め全員卒業してるから厳密にいえば元軽音部なんだけど。
「それにしても、いまだにクリスマスにあの頃のメンバー全員集合ってのもな。仲がいいといえば聞こえはいいけど」
「いいんじゃないですか。かの武者小路実篤も『仲よきことは美しき哉』って言ってましたし」
「そりゃ私が美しいってのは否定しないけど」
「はいはい、律先輩は美しいですよー」
律先輩の軽口を受け流すと突然肩に腕を回された。
そのまま引き寄せられ、もう片方のあいた手を口にあてがわれる。
「先輩に対して失礼なこと言うのはこの口か!」
ギュッとほっぺたを押さえつけられた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、律先輩は眉目秀麗、才色兼備ですからやめてください」
「ようし、そこまで言うなら許してやろうじゃないか」
律先輩に抱き寄せられたままちょっとした三文芝居を演じ合う。
許しを貰い腕から解放されたあと、ふと律先輩と目があった。
なんだか可笑しくなって、どちらからともなく笑いだす。
――イベントがあるわけでもない、世間的にはただの平凡な一日でも。
「ははっ、クリスマスの次の日に街中で何やってんだろな、私たち」
「ふふ、そうですね」
――あなたが隣にいるだけでそんな一日がかけがえのないものになるんです。
「それじゃ、行き当たりばったりの散歩の続きといきますか」
――普段は性格が邪魔してなかなかこの想いは伝えられないけど。
「あの、律先輩」
「ん、何だ?」
――たまには素直になってもいい、かな。
「私、律先輩といると、なんだかとっても楽しいです!」
終わり
クリスマスはもう二日前か。
最終更新:2011年01月26日 19:40