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766 :軽音部員♪:2011/02/26(土) 16:13:09 ID:wsT8zSgU0
どこからか聞こえるクリスマスソング、光り輝くイルミネーション。
日常から切り離されたきらびやかな世界。
そんな聖夜の雰囲気を二人で楽しむ。
だけど数週間前から続いたお祭りも今日で終わり。
幻想的な街並みにも現実世界が見え隠れし始めている。

大声でラストスパートとばかりに売り込みをかけるトナカイ姿のお兄さん。
傍らには陳列の段階で後ろに回されたばかりに半額の烙印を押されてしまった哀れなクリスマスケーキたち。
味は先に売れてったやつと変わらないだろうし、廃棄という悲惨な運命からひとつでも助け出してやるとしますか。

「すみません、ケーキひとつください」

サンタの格好した女の子から丁寧に梱包されたケーキを受け取る。
クリスマスの日にバイトお疲れ様、とは心の中で言っといた。
あ、向こうから見たら私たちも女子同士の慰め合いみたいに思われてるのかな。
だとしたらおあいにくさま、この子は私の大切な人なもんで。

「それじゃ梓、うちでこのケーキ肴に飲み明かすか。と言っても安いカクテルか酎ハイくらいしか出せないけど」
「別にいいけど、私つい先月二十歳になったばっかなんだからまだ飲むペースとかわからないよ」
「酔い潰れても優しく介抱してやるって」

頭をポンポンと叩いてやる。
周りの目を気にしてか、梓はどこか照れくさそうな表情を見せた。

「ただ、酔い潰れちゃったら手が出せなくなるからそこら辺は考えといてな」

耳元でそっと忠告する。
直後梓から無言の肘鉄が私の脇腹へと突き刺さった。
これが返事ってことですか。
それにしても先輩に対してとる態度とは思えないね。
まあこんなことしてくれるようになったって考えりゃ、この痛みもまた感慨深いもんだな。

「……気をつけとく」

おっと、物思いに耽って肝心な答えを聞き逃すところだった。
よく見りゃ耳まで真っ赤にしちゃってるよ。


767 :軽音部員♪:2011/02/26(土) 16:15:41 ID:wsT8zSgU0
「ああもう可愛い奴め!」

衝動的に梓を抱きよせる。

「にゃっ! ちょっと律やめてよ!」
「いいじゃん。こんなに可愛い梓が悪いんだぞ」
「あ、ありがと。で、でも外で抱きつくのはやっぱダメ!」

梓はするりと私の腕から抜け出した。
ホント、まるでネコみたいなやつだ。
しかしちょっと残念だなあ……なんてことを考えていると不意に指を掴まれた。

「抱きつくのはダメだけど、手をつなぐのなら……」

恥ずかしさからか斜め下に視線を落としたままの梓。
その姿がまた可愛くて、ついつい抱きしめたくなるけどここは我慢。
……でも、これくらいなら許してくれるかな?

「あっ……」

無意識に漏れたであろう梓の驚きの声。
私は何も言わず白い歯をこぼす。

「……もう、特別だからね」

絡めた指にぎゅっと力を込められる。

「へへ、ありがと」

お返しとばかりに私もその手をより強く包み込む。
頬を紅く染めながら、梓は優しい笑みを浮かべている。

心まで温かくなって一段と相手を想う気持ちも強くなる。
どうやらそんな不思議な力が『恋人つなぎ』にはあるみたいだ。


終わり




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最終更新:2011年03月14日 02:37