業務上過失致死罪とは

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(業務上過失致死傷等) 第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 ***業務上過失致死傷罪が成立するためには 1.業務上必要な注意を怠り 2.よって人を死傷させたこと が必要です。 ***業務とは? 「業務とは、本来人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為であつて(昭和二五年(れ)一四六号同二六年六月七日第一小法廷判決、集五巻七号一二三六頁参照)、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とするけれども、行為者の目的がこれによつて収入を得るにあるとその他の欲望を充たすにあるとは問わないと解すべきである。」([[最判昭和33年4月18日刑集12巻6号1090頁>http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=29683&hanreiKbn=01]])。 つまり、職業は関係ありません。 ***過失があって人が死ねば成立するのか 「その過失がなければ死傷するはずがなかった」という因果関係が存在することが必要です。医療過誤で患者が死亡した場合、たとえ医師に過失があったとしても、過失とは無関係の段階で救命可能性が低かった(適切な処置が行われたとしても死亡する可能性が高かった)と判断されれば、構成要件を満たさないため、本罪の適用を受けません。 日本の刑法では、単純な過失致死罪は「50万円以下の罰金」、過失傷害罪は「30万円以下の罰金又は科料」であるのに対して、業務上過失致死傷罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と、格段に重い刑が定められている。[[なぜ重い刑なのか?]] -[[業務上過失致死罪は必要か]] -[[因果関係の判断方法]] -例えば自殺者がたまたま自動車に飛び込んだ、誰もが予測できないような事態で人を轢いてしまった(ちょっと例が思い浮かびません)、などは犯罪にすべきでは無いと思います。 - 治療行為は言うまでもなく裁量の大きく左右する領域なのでしょうし、事後的に観察検討すれば「〇〇のタイミングで△△という治療法を選択すること」がベストであったと判明することもあるのでしょう。そして、その唯一のベストな治療方法以外の全てを「過失」と呼ぶのであれば、この意味での「過失」について法的責任を負うなんてやってられん、という感覚になるのは理解できます。医師の方が反発されるのは、「過失」をこの意味で捉えておられる方が多いからだろうか、と想像しています。&br() 法律家が考える「過失」は、より限定されたものです。すなわち、ある行為に裁量の余地があることは当然の前提とした上で、それでも通常であれば払うべき注意を払っていなかったと認められれば「過失」ありとして有責という結論を導いています。野球でいうと、三振したからと言って直ちに「過失」ありとはしないけれども、とんでもないボール球に手を出して三振した場合は「過失」ありと言わざるを得ないだろう、ということでしょうか。 -論がかみ合わない理由として私が考えているのは、法律家が三段論法を意識して議論しているのに対し、医師の方にはその意識が薄いのかな、という点です(もちろん、考え方の違い、アプローチの違いに過ぎないものであって、法律家の発想が正しいとか優れているとかいう問題ではありません。念のため。)。&br() つまり、弁護士や裁判官の基本的発想としては、&br()① 過失が認められた場合には法的責任を負う、過失がない場合は責任を負わない。    (大前提)&br()② 本件の医療行為には過失がある/ない      (小前提)&br()③ だから本件の医師は法的責任を負う/負わない (結論)&br() という枠組みがあるのですが、医師の方から寄せられる裁判批判には、①と②のどちらを問題にしているのかが明確でないものがあったように思います。実際には②のレベルに関する裁判所の事実認定に不満があるのに、それが①の点、すなわち一般的判断基準のレベルにまで及んでいる意見が多々見られました。 -「医療過誤の認定」といっても即座にできるものではなく、順に段階を追って考える必要があります。第一に、治療行為や患者の容態変化等、客観的な事実として何があったかの認定をします。第二に、そのケースで医師が払うべき注意義務はどのような内容のものであったか、を策定します。第三に、実際に行われた治療行為が上記の注意義務に反していないか、を判断します。&br() このうち第一の点については、完璧とは言えないものの、現行の司法制度以上に確度の高い認定方法は考えにくいと思います。証拠を強制的に取得すること、関係者に証言を求めることといった手段が整備されているからです。&br() 第二の点が、医師の方に最も不満の多い部分だろうと思います。基本的には「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」を基準として求められる注意義務のレベルを決めるわけですが、この点については、「当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきである」(=全国一律に決まるものではなく、現場の実情に配慮すべき)とされる一方、「医療水準は、医師の注意義務の基準(規範)となるものであるから、平均的医師が現に行っている医療慣行とは必ずしも一致するものでなく、医師が医療慣行に従った医療行為を行ったからといって、医療水準に従った注意義務を尽くしたと直ちにいうことはできない」という判断も示されており、この部分が特に、現場で全力を尽くしていると自認しておられる医師の方には甚だ不満なのかと推測します(よく判決文を読むと、別に超人的な努力を要求しているわけではないことは分かるのですが・・・・)。いずれにせよ、ここはどの程度の医療水準を現場の医師に期待すべきかというsollenの問題であり、「正しい」「正しくない」という問題とはちょっと違うように思います。現場が崩壊するほど厳しい要求になるのであれば「妥当でない」との評価はできましょうが、自分の見る限り、そこまで無茶な要求をする裁判例が目立つとは思えません(※)。&br()※ ただし、これは法律家として、将来その判例の理論が適用されると見込まれる限界範囲(射程と言います)を概ね読み取れるからであって、射程の予測に慣れておられない医師の方が不安に感じるのも理解できます。司法は、判例の射程がどこまでかを分かりやすく明確に示し、医療機関に注意を喚起すると同時に無用な警戒、誤解を生じないよう努めるべきですが、医師の方の御意見を拝見しますと、現状ではそれが達成できていないと言わざるを得ないように思っています。
(業務上過失致死傷等) 第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。 ***業務上過失致死傷罪が成立するためには 1.業務上必要な注意を怠ったこと 2.人が死傷したこと 3.過失行為と、人の死傷と言う結果との間に因果関係があること が原則として必要です。 ***業務とは? 「業務とは、本来人が社会生活上の地位に基き反覆継続して行う行為であつて(昭和二五年(れ)一四六号同二六年六月七日第一小法廷判決、集五巻七号一二三六頁参照)、かつその行為は他人の生命身体等に危害を加える虞あるものであることを必要とするけれども、行為者の目的がこれによつて収入を得るにあるとその他の欲望を充たすにあるとは問わないと解すべきである。」([[最判昭和33年4月18日刑集12巻6号1090頁>http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=29683&hanreiKbn=01]])。 つまり、職業は関係ありません。 ***過失とは? 1.客観的予見可能性がある 2.予見義務違反がある 3.客観的回避可能性がある 4.回避義務違反がある 以上の4点を満たす必要がある。 ※福島大野病院事件福島地裁判決 「臨床に携わっている医師に医療措置上の行為義務を負わせ、その義務に反したものには刑罰を科す基準となり得る医学的準則は、当該科目の臨床に携わる医師が、当該場面に直面した場合にほとんどの者がその基準に従った医療措置を講じているといえる程度の、一般性あるいは通有性を具備したものでなければならない。」 ***過失があって人が死ねば成立するのか 「その過失がなければ死傷するはずがなかった」という因果関係が存在することが必要です。医療過誤で患者が死亡した場合、たとえ医師に過失があったとしても、過失とは無関係の段階で救命可能性が低かった(適切な処置が行われたとしても死亡する可能性が高かった)と判断されれば、構成要件を満たさないため、本罪の適用を受けません。 ***業務上過失致死罪の刑 日本の刑法では、単純な過失致死罪は「50万円以下の罰金」、過失傷害罪は「30万円以下の罰金又は科料」であるのに対して、業務上過失致死傷罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と、格段に重い刑が定められている。[[なぜ重い刑なのか?]] ***因果関係の判断方法 被疑事実行為(不作為含む)がなかったら結果回避可能性が「十中八九」未満で有る場合が必要です。 [[最判平成1年12月15日>http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25875&hanreiKbn=01]] [[業務上過失致死罪とは(C)]]

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