業務上過失致死罪とは

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業務上過失致死罪とは - (2008/07/17 (木) 17:50:17) の編集履歴(バックアップ)


(業務上過失致死傷等)
第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

  • 本罪にいう「業務」は社会生活上の地位に続して行う行為であって、生命身体に危険を生じ得るものをいう(最判昭和33年4月18日刑集12巻6号1090頁)。
  • 本罪の構成要件には「その過失がなければ死傷するはずがなかった」という因果関係が存在することが必要である。医療過誤で患者が死亡した場合、たとえ医師に過失があったとしても、過失とは無関係の段階で救命可能性が低かった(適切な処置が行われたとしても死亡する可能性が高かった)と判断されれば、構成要件を満たさないため、本罪の適用を受けない。
  • 日本の刑法では、単純な過失致死罪は「50万円以下の罰金」、過失傷害罪は「30万円以下の罰金又は科料」であるのに対して、業務上過失致死傷罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と、格段に重い刑が定められている。業務上の過失犯がなぜ単純な過失犯より重く処罰されるのかという理由は、通説・判例によれば、業務者は人の生命・身体に対して危害を加えるおそれがある立場にあることから、このような危険を防止するため政策的に高度の注意義務を課す必要があるため(最判昭和26年6月7日刑集5巻7号1236頁参照)、と説明される(政策説)。業務者は重大な結果を招きやすいのだから、注意を怠った場合には重く処罰されることを予告して、より慎重な行動を促すということである。この他にも、業務者は注意能力が普通の人に比べて高いのだから、注意義務違反をした場合には違反の程度も高いため重く処罰される、などとも説明される(義務違反重大説)。
対して、重過失致死傷罪等による過失の各加重類型が整備された現在、業務概念の意味を解釈する作業は裁判所に実益のない努力を強いるものであり、また業務を冠することにより単純過失致死罪に比べて刑の加重類型とする理由を直ちに導き得るとは言えず、むしろこのような業務を理由とする加重類型の存することは、裁判所をして「余りにも喜ばしくない形式に堕せしめ、また実質上理由なき区別に没頭せしめた」との批判もある(最判昭和60年10月21日、補足意見)。