民事訴訟のルール

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民事訴訟のルール - (2008/07/22 (火) 12:08:37) の編集履歴(バックアップ)


  • もし民事判決をご覧になられる際には、以下のことを頭の片隅に置いてください。民事裁判では弁論主義という仕組みがとられていて、原告と被告が争わない事実については、訴訟上真実と認め、それを前提に裁判を進めることになっています。上記の裏返しですが、裁判官が判断を下すのは当事者が争った部分だけです。そして、裁判官が判断を下す範囲は、当事者が訴訟において主張した事実についてのみであり、その事実が当事者の提出した証拠によって裏付けられているかを裁判官は判断します。
    極端なことを言えば、医学界において正しいことも、被告側が反論しなかったり、あるいは反論しても証拠で証明できなければ、判決には反映されない制度になっております。
  • 医療訴訟は不法行為または債務不履行による損害賠償請求であり、原告患者側としては訴訟前の出発点は「損害がある(マイナス)」状態です。このマイナスを、ゼロになるまで回復することを求めているのですから、訴訟でお金をもらったからといって、儲かったという意識はありません。損害賠償の趣旨は損害額(マイナス)が填補されることですから、最大限もらってもゼロになるだけで、プラスにはならない-焼け太りは許さない-のです。一方、被告病院側は訴訟前は儲けはないのでゼロであり、敗訴するとお金を支払わされてマイナスの状態になります。このように、損害賠償をするということは、責任のないAのマイナスを、責任のあるBに移転するという意味であり、このことを、「損害額の公平な分担」と言います。
  • 民事訴訟は当事者が提出した証拠から認定をするわけでして、裁判官が自分で付け焼刃的な勉強をした知識から勝手な理屈をひねり出しているものではありません。
    「裁判官は特に知識や学問に対しもっと謙虚に」とありますけど、今回の件について言えば、双方から出された医師による見解と証拠のうち、原告側のものを採用したということであって、言うなれば、「原告側協力医の専門家としての見解に対して謙虚な姿勢を示した」ということでもあります(鑑定をしていたのであれば、鑑定医の見解に謙虚に従った、という評価もできます)。
    医療訴訟では、通常、原告被告の双方に専門的見解を提示する医師がいて、その主張を法律的に構成する弁護士もいるわけですので、単純に「法律家 vs 医師」という構図を描いて議論するのは、あまり適切とは思えません。
  • 「患者のほうは、例えばどこの病院で手術を受けて、多分それが原因で調子が悪くなったのだろうと言えば、それで十分です。後は、調停所のほうで調査いたします。患者にそれ程の負担をかけることは求めておりません。したがって、患者の方が申し立てる内容は、いつそれが発生したのか、医師は誰だったのかという 2点をはっきりさせてくれれば、足ります。それ以外のことは、こちらで調べますので細かいことを聞くことはいたしません。」(畔柳前掲66頁)
    もちろん、多くの紛争処理制度が弁論主義を採用しているのにはそれなりのワケがあるのであって、単に「法曹が変えたくないと思っているから変えられないのだ」というわけではありません。ただ、FFF先生も言及なさっておられますとおり、職権探知主義を採用している例外的な制度もあり、ここに集っていらっしゃる医師の皆さまの多くは「医事紛争処理制度もその『例外』であるべきだ」とお考えなのでしょう。