(BR230/05/phase:00) ニコロワ社会主義連邦共和国
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ギャルゲロワ共和国首都に一つの屋敷が建っている。
屈強な兵によって警護されたその正門にはギャルゲ国とはまた別の国の国旗が掲げられていた。
この屋敷はGR国にあってGR国の領土に非ず。
未だ謎のヴェールに覆われた北方の大国、
ニコロワ社会主義連邦共和国(通称:ニコ連)の大使館であるのだから――
ニコ連の詳しい成り立ちはよくわかってはいない。
ただ複数の人種が集まってできた多民族国家である事のみだった。
GR国から北にいくつもの険しい山脈を越えた先にある雪と氷に覆われた極寒の地。
その地形的特性のため大陸南部の主要国とはほとんど交流が無かったのだ。
よってその文化レベル・軍事レベルも謎に包まれたまま。
現在は『閣下』と呼ばれる一人の指導者がニコ連のトップにいるが詳細は不明である。
長らく謎に包まれたニコ連に突如転機が訪れる。
昨年、ニコ連はGR国と国交を樹立すると宣言した。
得体の知れない謎の大国の申し出にGR国の重鎮達は衝撃が走ったが、
人の良いお姉さまは二つ返事で国交を結び、大使館を国内に置くことに決まったのである。
(BR230/05/phase:01) ニコロワ社会主義連邦共和国
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大使館の薄暗い執務室内で一人の少女が机に座っていた。
肩まで伸ばした黒髪に黄色のヘアバンドが花を咲かす。
気の強そうなその瞳は机の上に鎮座された青白く光る板を見つめていた。
彼女の名前は「C.M.超展開はデフォなのか? 」(略してCM)
ニコ連本国から派遣されたギャルゲロワ共和国駐留大使である。
彼女は『閣下』の懐刀と称された才女であり、対GR国外交の全権を委任されているのだ。
CMが見ているもの、それは『ニコ動』と呼ばれる長距離通信網。
遠く離れた人間とほぼリアルタイムで会話を可能とするニコ連が生み出した技術の結晶である。
国家機密であるそれはGR国にすら存在を秘匿されているものであった。
「ハーイ、聞こえるかしら『閣下』?」
『感度は良好よ同志CM』
青白く光る板に一人の少女の姿が映し出される。
頭に結んだ二つのリボンを除いては一見すると地味な印象な少女。
だが常に薄開きの目と不敵に歪めた微笑が、言いようのない威圧感とカリスマを彼女に与えている。
彼女の名前は「人外アドベンチャー~OZbjG1JuJMのウォーゲーム~」(略してOZ)
彼女こそニコロワ社会主義連邦共和国大統領、通称『閣下』として恐れられるニコ連の最高指導者なのである。
「もう聞いてるかと思うけど……漫画国がGR国に侵攻したわよ。宣戦布告もせずにね」
『ええ、聞いてるわ。全く穏やかではないわね……宣戦布告もしないで侵攻とは』
「さすが世紀末覇者だらけの漫画国よね」
『それでGRの対応は?』
「あろうことかバトルマスターを始めとしたGRの名だたる将全員を前線に投入したわ」
『へぇ……無謀と言うか何と言うか……背後がガラ空きね』
「現状は膠着状態、もしかしたら鬼械神の投入もアリかもね」
『ふふふ……それを投入したらまさに全面戦争、そうなると漫画も虚無魔法を使わざるを
得ないでしょうね。落としどころの見えない泥沼の殲滅戦、お互いが滅びるまで続く戦いが始まるわ』
「で閣下、ニコ連はどうするの? アニロワはまだ公式発表の無いもののGRの支援を表明したわよ」
『そういえば……確かGRには我が国が友好の証として送った「千早」があったけど……あれの稼動状況は?』
ニコ連が国交樹立を結んだ際にGR国に寄贈した物がある。
空を羽ばたく鋼鉄の蒼鳥「千早」。雷の如く鳴き声を発し風よりも速く空を舞う鉄の鳥。
空を飛ぶ兵器はGR国にはいくつかあるがそれは全て古代の遺失物を改修したものに過ぎず。
未だ自前でそれらを開発できる技術力には至ってはいない。
「あー…あれね、動くことは動くけど飛ばす技量を持ったパイロットがいないわ。
GR国は今だ一人の将が一騎当千の働きを以って戦場を制すると考えているのよ。
これから戦争は高度に情報化された兵が戦場を制するのにねえ?」
『しょうがないじゃない、GRには戦略を戦術レベルで覆す非常識な連中がゴロゴロしてるもの
自らの力に慢心して溺れ死ぬが良いわ。現状我が国は静観、GR・アニ・漫画の疲弊を待ちましょう』
「スパロワ国もロボロワ国も不穏な動きを見せてるしね、勝ち馬に乗るのは私達ニコ連よ」
(BR230/05/phase:02) ニコロワ社会主義連邦共和国
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CMからの報告を受けた閣下ことOZは通信を終え、窓に目をやった。
五月なのに降り続ける雪、雪が溶けるのは短い夏の間だけ。それ以外は雪と氷に閉ざされた国土。
いずれ三国のパワーバランスが崩れる時が来る、その時が絶好の南進のチャンスである。
温かい地の獲得はニコ連の大願なのだ。
コンコンと執務室のドアをノックする音。
『閣下~私だよ~』と外から少女の声がした。
「開いてるわよ、入りなさい」
「こんちゃーす」
入ってきたのは青い髪を腰よりも長く伸ばした小柄な少女。
頭に生えた一本のアホ毛と左目の泣き黒子がチャームポイントな彼女の名は、
「愛媛の0RbUzIT0Toは大変な演説をしていきました」(略して愛媛)
こう見えても二コ連の国防長官のポストに付いているニコ連の重鎮である。
「聞いたよー閣下、漫画がGRに侵攻したんだってね」
「ええそうよ、耳が速いのね。それで用件は? まさか世間話をするためここに来たわけじゃないでしょう?」
「まあね、とりあえずニコ連南進についての基本骨子を閣下に聞いてもらいたくて」
「また気が早い話ね」
「備えあれば憂い無し! だよん」
「まあ聞かせてもらうわ」
「知ってのとおりニコ連は大陸南部とは険しい山脈に隔てられた辺境の地。
だから陸路ではとてもじゃないけど侵攻はできない。まあ無理すりゃできるだろーけどねー」
「仮に陸路で山脈を越えるとなるとその影響は?」
「そだねぇ……五万の兵を向かわせるとして……生きて山脈を越えられるのは三割も満たないだろうね
まあ兵が畑で取れるような国ならそんなの無視してガンガン侵攻しちゃってもいいけど、
戦場に辿り着く前に兵が半分以下になるような事態が国民に知られたら、確実に閣下の政権が傾く可能性が大だよ。
ある程度は情報操作で誤魔化せるけど、まあお勧めはしないね」
「なら空路は?」
「ウチ自慢の航空戦力でアニやGRに戦略爆撃を敢行できるけど……爆撃をいくらしたところで
その都市を占領できる地上戦力がいなければ意味ないからね~。輸送機で運べる人員はたかが知れてるし。
となると結局は海路によるオーソドックスな上陸戦かな。我が国は艦隊を率いてGR国東部沿岸地区を強襲。
強化外骨格『ドアラ』を装備した歩兵とボーカロイド部隊で上陸のち占領。後はそこを足がかりにしてGR首都を目指す。こんなところかな」
「勝率は?」
「向こうさんが通常戦力で応戦するなら八割はカタいね。だけど向こうには紅蟹公やバトルマスターを始めとした脳筋軍団と、鬼械神が控えているんだよね……そいつら相手ではさすがに分が悪い」
「ま、戦略を戦術でひっくり返す事ができる化け物揃いなわけだしね……」
「戦後処理とか考えず敵国を殲滅するだけの兵器ならこっちにもあるけどねー、支配する土地も民も失っては意味が無いし。で、聞きたいんだけど閣下」
「何かしら?」
「一応建前上はGR国は友好国であるわけだけど、支援のほうはどうする?」
「いずれ侵攻する国相手に支援を送るつもりは無いわ、やるとしたら戦後、友好国の戦災復興と治安維持の名目で進駐軍を送り込むぐらいかしら」
「うわー……えげつない手を使うね……」
「ニコ連はGR・漫画の戦争が次の段階になるまで静観。三国の動向に注視するのよ」
「りょーかーい!」
最終更新:2009年04月24日 19:44