(BR230/05/phase:00) 戦隊国
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さらさらと小川が流れる風景に、いき通う行商人。
人が賑わう大通りは、大都市とは比べるとささやかだが、たしかな活気に満ちていた。
踏みしめられた田舎道の横沿いに田圃が並び、麦がしなって黄金の景色を形作っている。
労働に従事ている人々の顔には笑顔があり、おおらかなこの国柄を示しているようだった。
よく、この国に来ると『時間の流れがゆっくりに感じる』といわれる。
建国して間もないが、今現在の国の状況は予想以上に雰囲気がいい。
彼の王、まとめレッドは城下を見て回り、満足気に微笑んでいる。
この国の成り立ちは覚えている。
同じ地域の騎乗士の国が立ち上がり、その国力を増大させている様を見ていたこの国の民が建国を宣言した。
同じく、建国を宣言されたウルトラの国はあっという間に瓦解し、この戦隊の国も同じ道を辿ることが予測されたのだ。
もっとも、この国は騎乗士の国と同じく、産地も期待できない、水も豊富でない、鉱産も取れない、不毛な大地である。
その評価は当然といっていい予測だ。
騎乗士の国と同じく、テロリストたちが活発になる可能性もあった。
しかし、それを良しとしないものもいる。
彼の男は、この国の生まれる瞬間に立ち会った。
したらばイエローと自ら名乗る者の、国の成り立ちに始まる『OP』という演説が耳に入ったのが始まりだった。
彼の男がもといた国でもあった、テロを受ける可能性があるのに。
彼の男が行ったとおり、内政を行うのは大変どころではないのに。
したらばイエローの瞳には、彼の男のいた国にいた、仲間たちと同じ、国を盛り上げることに命を賭ける覚悟を持った色がある。
その瞳、彼の隣に常に立っていた男を彷彿させるそれに惹かれ、興味深くその演説を聞き入れにやりと笑う。
「この国を盛り上げる。ちょっとした冒険だな」
その言葉は、彼の男の本気を示す言葉であった。
(BR230/05/phase:01) 戦隊国
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「チ~フ~、議論所の草案をまとめるのを手伝ってくださ~い」
半泣きで助けを求めるしたらばイエローに、まとめレッドは頼りがいのある笑顔を浮かべる。
黒い髪を両脇で縛り、かわいらしい顔の少女。
彼女こそ、演説『OP』を行い、この国の建国を宣言した少女だ。
彼女の本気に惹かれ、いままとめレッドはここにいる。
「見せてみろ。うん、田畑が荒れているか。例の奴か?
とりあえず、今は議論所をおおっぴらにできる場所を建設中だっただろ? 奴にそこを見るように伝えるんだ。イエロー」
「了解!!」
一瞬で書類の内容を理解、ついで対処法を答える。
こうしたやり取り、まとめレッドにとっては手馴れたものだ。
もともと、この地域は荒くれ者が跋扈していたことが多い。
騎乗士の国が荒れているのも、その荒くれ者が国という体勢を受け入れず、暴れているからだ。
もっとも、この戦隊の国にはそんな荒くれ者が存在する比率は少ない。
人口のこともあるが、国民の気質もあるのだろう、とまとめレッドは思う。
「さっそく告知してきまーす!!」
「おいおい、そんなに急ぐと……言わんこっちゃない」
まとめレッドの制止も聞かず、イエローが飛び出し、足がもつれてこけた。
顔面を地面に打ち付け、鼻を押さえて痛みを堪えている。両目の端には涙が滲んでいた。
それでも立ち上がり、書類を抱えて元気よくかけていく。
その姿が微笑ましく、まとめレッドは思わず呟いた。
「やれやれ、その元気のよさ、まさに冒険スピリッツ」
まとめレッド、やたら冒険に絡めたがる性分が人気があり、また変人と思われるところだった。
もっとも、この人冒険好きで、そのために国をかき回しつつ、治めるという無茶が大得意だったりする。
(BR230/05/phase:02) 戦隊国
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「はい、みんな。これで今日の授業は終わりです。宿題を忘れないように」
ええーと、子供たちの悲鳴を耳に、男は微笑んだ。
整った顔つきは穏やかであり、白い衣装に身を包みながら教鞭を振るう。
彼の名はジョーカーinTHEブルー。武将であり、魔法使いの先生だ。
この国においては先生も兼ねるが、もともと人に教えるのが得意であるゆえ、困ったことはない。
帰りの挨拶をする子供たちを笑顔で見送り、THEブルーは城へと向かう。
こちらが本業のはずだが、最近は教師に専念したくなる。
とはいえ、彼の戦闘力も並ではない。
古代の残したグリップフォンによる強化スーツ『マジシャイン』と、彼自身の魔法、そして『サンジェル』への変身があり、戦隊国では一、二を争う実力者だ。
彼はまとめレッドと並ぶ武の達人の一人である。
城に辿り着いた彼は、城下を見下ろすまとめレッドを目撃して、微笑む。
「まとめレッド。こんにちは」
「THEブルーか。元気そうだな!」
「はい。なぜかゴールドのボクがブルーと呼ばれるのか、疑問は置いときまして」
「ブルーを嫁にしたキャラが元ネタだからじゃないか? 実に冒険だ」
「いや、そんな冒険いりませんって。ところで、心配ですか? 騎乗士の国が」
THEブルーが騎乗士の国、と告げた瞬間、まとめレッドが沈黙する。
図星のようだが、THEブルーには何もいえない。
もともと、まとめレッドが騎乗士の国の名将だったことを、THEブルーは知っている。
猿顔―― 車を軽快に走らせ、アクセルチェンジャーで『レッドレーサー』なる強化スーツを身にまとう兵。暴走気味なのと体力がないのが玉に瑕 ――により、他国の情報を手に入れていた。
特に、騎乗士の国を気にしているのを知っている。
もっとも、他国を心配する余裕がないのはまとめレッドが一番知っているだろう。
この国はまとめレッドの手腕で活気が出てきたが、とにかく人が足りない。
特に中心であるまとめレッドとTHEブルーが抜けてしまえば、どうなるかは明白だ。
ゆえに、故郷の状況を知って胸を痛めているだろう、THEブルーはまとめレッドの心中を察した。
「ふっ、心配はないさ。ブルー」
「え?」
まとめレッドの瞳は、いつもの冒険スピリッツ。
彼が自信に満ち溢れた瞳に、勇気付けられたことが何度あっただろう。
「あの国には、俺と共に冒険を果たし、やり遂げた仲間がいる。
あいつらの冒険スピリッツがある限り、騎乗士の国は滅びはしない。俺はそう信じている!」
まとめレッドの断言。THEブルーは己の失言を恥じた。
騎乗士の国の武将たち、彼らは先の大戦をくぐり抜けたのだ。目の前の、名将と共に。
なら、自分ごときが心配するなど、うぬぼれが過ぎた。
「分かりました。まとめレッド。私も信じましょう。あなたの仲間たちを」
まとめレッドの輝く笑顔が、THEブルーに返ってきた。
(BR230/05/phase:03) 戦隊国
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THEブルーが退出した後、一人残ったまとめレッドは過去の記憶に想いを馳せる。
かつて、大戦を共にかけた武将たちの姿を。
いや、一人の正義の戦士、仮面ライダー書き手を。
彼の大戦での彼の戦いに、まとめレッドは肩を並べ、背を預け、共に力を振るった。
『最終回』なる決戦においても、彼は獅子奮迅の活躍を行い、まさに英雄だった。
両の拳が血に塗れながらも。
人々は彼を称え、まさに英雄に相応しい戦いだった。
自分はNo2に置いてこそ、力を発揮できると公言した甲斐があるというものだ。
その前夜に呟かれた言葉を忘れるほどに。
―― まとめキング。俺は……間違っていたのか?
―― 何を言う?
仮面ライダー書き手、騎乗士の国におけるまとめレッド―― かつてはまとめキングと名乗っていた ――の相棒。
彼は、決戦の少し前の戦いにおいて国民の反感を買ったのだ。
それに、長く騎乗士の国にいたからだとも思う。
騎乗士の国では先ほども思考したが、荒くれ者が多い。
国という体勢に適応できず、暴力に走りやすい者が多い。彼は長く、そして派手に騎乗士の国にいすぎた。
矢面に立つ者、そして自分の思い通りにならないものに冷たい者が声にして叫ぶ。
他国なら罰を与えられてしかるべき行為すら、『国』が行うことには反発をする。
そういう人間が多い国なのだ。
もっとも、今はそうでもないらしいが。ギャグ将軍、彼女の手腕もあるのだろう。
代わりにテロが活発したらしいが、まあ、そういう国だ。
それに、仮面ライダー書き手も引き続き、武将として活躍をしているらしい。
正義感に溢れる彼なら、問題はないだろう。まとめレッドはそう結論をつける。
やや力を過信している傾向があるが、まとめレッドの知る仮面ライダー書き手は、『仮面ライダー』という称号に相応しい正義感が喧嘩を売っているような青年だ。
テロリストを相手にしても、彼ならその正義と強さで、立ち向かってくれる。
(少し、その真っ直ぐさが羨ましかったがな)
苦笑いと共に、彼の知るかつての彼を思い浮かべる。もう、その彼は変質しているというのに。
まとめレッドは、その事実を知らない。
とはいえ、彼の所属する漫画国がギャルゲ国に戦争を仕掛けていることは耳に入っている。
どうにかするような力も国力もここにはない。
他国との戦争をすれば、一戦線も持たないだろう。それくらい、国力も武将も、兵も不足している。
外交で戦に巻き込まれないようにするのが、まとめレッドのすべきことだろう。
大陸の地図を目に、まとめレッドは方針を定めた。
(BR230/05/phase:04) 戦隊国
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思うところがあり、まとめレッドは街へと降りる。
人々は笑い、平和に暮らしている。
「 百鬼夜行をぶった斬る!! 」
突然、響いた緑の龍神の声。
彼は犬の獣人。この国において警察を一手に任せられている、正義の使者。
その声を聞くに、不埒な犯罪者が現れたらしい。まあ、せいぜい食い逃げだろう。
しかし、まとめレッドの顔がにやける。
久しぶりに身体を動かすのも悪くはない。
「ボウケンジャー、スタートアップ!」
まとめレッドはアクセルラーのタービンを回転させ、その身を赤いスーツ『ボウケンレッド』を身にまとう。
地面をふわりと跳躍し、すでに食い逃げ犯と対峙している『デカマスター』をまとう緑の龍神の傍に立つ。
幼い子供の歓声が上がり、人々の好意的な視線が集中する中、まとめレッドが大見得を切る。
「溢れるパロロワスピリッツ! パロロワ戦隊、ロワレンジャー!!」
瞬間、まとめレッドの背後が爆発する。
彼はまとめキングにして、まとめレッド。
風来坊の冒険野郎だ。
最終更新:2009年04月24日 19:49