ギャルゲロワ国前線編

(BR230/05/phase:02) ギャルゲロワ国
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美しい髪をたなびかせ、戦姫バトルマスターは一人、敵陣をジッと見据えていた。
その黄金の瞳が睨みつけるは、大胆不敵にも侵攻を開始した漫画ロワ王国の群れ。
雄々しい空気が彼女の鼻腔に届くたび、美しい顔が微かに歪む。

「汚らわしい」

空気を遮断するかのように、肩に担いでいた剣を一閃。
舞い散る風に、バトルマスターの身体から溢れる百合の香りを乗せる。
汗臭い臭いは一瞬で霧散し、後に残るは大人の階段を想像させる妖艶なフェロモン。
彼女は戦姫と呼ばれる要因として、この匂いもまた挙げられる。
辺りの空気を入れ替えた事に満足すると、傍に控えていた部下に視線を落とす。
バトルマスター直属のスピリット選抜部隊『ノーマル』。
個々の力のさることながら、全員が幼い女性で構成されており、また同時に戦姫に全てを捧げ終えている。
微動だにせず待機する面々を嬉しそうに眺めつつ、バトルマスターは傍の伝令に囁く。

「鬼畜と最速は? もう予定の位置に付いたのよね」
「そ、それが……」

言葉の歯切れが悪い。
前もって立てた作戦では、最大の火力を誇るバトルマスターが中央。
相手の虚を突く幅広い工作活動から、長距離狙撃をも手広くこなす鬼畜将軍が向かって左側。
陽動が得意で、単独行動と機動性に優れていた最速王が右側という布陣。
漫画ロワの戦力を中央に集めつつ、左右から包囲しようとする作戦だ。
が、伝令の口からはその報告がなかなか飛び出してこない。
小さく震えたまま無言で俯く伝令の耳を噛みながら、バトルマスターはふっと耳に空気を送り込む。

「怯えないで。さ、言って御覧なさい……ほぉら」
「ひゃん!」
「うふふ。このまま食べてしまいたいけれど、続きは貴女の報告が終わってから。ね?」
「ふぇ? あ、はい!」

他の部下からの嫉妬の視線を浴びつつ、伝令は顔を真っ赤にしたまま姿勢を正す。

「鬼畜将軍はgtmt動画とやらの新着が届いたとの事で、拠点へとお戻りになりました!
 しかも、鬼畜将軍直属の部下である『すて☆きちと愉快な紳士達』の皆様も、全員お戻りだそうです!」
「ちょ!」
「最速王は、なんでも愛らしい巨乳おにゃの子や、パンツ一丁のいい男を発見したようで、
  ご自慢の笛を吹きながら、「残念だったねぇ!」と喜びの声をあげつつ戦線離脱なされたようです」
「あ、あの昼行灯どもが……」

ギャルゲロワ王国の専属という立場では本当に数少ない。少数派でもある男性の武将。
その二人が自国の危機であるにも関わらず職務放棄と。
男とは言え古株のよしみで庇ってきたが、そろそろ野に放つ時期だろうか。
どちらも個の能力としては、前線に飛ばされるだけあって有能で役に立つ存在なのだが、
普段は、同じ仲間である紅蟹公と狗武者姫の尻を追い掛け回しては、反省すべしと牢獄に繋がれる毎日。
片方が衆道が堂々と立ち回れる環境を提供すれば、もう片方が隣国のいい男を漁りに外へ飛び出す。
また片方が妙齢の少年少女を城に招き入れれば、もう片方が笛を吹いて自分の領地に連れ込むと言う始末。
ぶっちゃけ戦時での功績を差し引いてもかなり酷い。

「とりあえず、二人に関しては保留ね。まずは現状を立て直すことから始めましょう……誰かッ!」
「はっ!」
「私の可愛い可愛い愛弟子と、私の可愛い可愛いもふもふわんこちゃんの所まで文を飛ばして頂戴」
「承知しました!」
「はい。さらさらっと……お願いね。さて、前線だけれど、ボイド一人ならば私一人で――」
「大変ですっ!」

入れ替わるように、偵察に出していた部下が大慌てで飛び込んでくる。
荒い呼吸をなんとか押さえつけると、バトルマスターにそっと耳打ちした。
この報告を受け、初めてバトルマスターの眉間の皺が寄る。

「敵将ドットーレと敵将エース。双方ともこちらに向かってくるなんてね。
  いえ、それよりもまさか、アニロワ王国の方にも手を出すなんて、ありえない作戦だわ」

これを我が国の軍師や武将達はどう見るだろうか。
少なくとも、好機と捉えるものは多いだろう。
しかし、もし万が一これが敵国の罠だった場合、取り返しの付かない事となる。
ふと、共に古きを戦ってきた、今は隣にいない女性をそっと思い出す。

「ツー。貴女だったらどうするかしらね」

風にたなびく髪と共に、その呟きは空へと舞って消えていく。
戦いは、もうすぐそこまで迫っていた。

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最終更新:2009年04月24日 21:37
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