天に煌く無数の光。
ランプのようにぼんやりと光るもの、
豆電球のように小さくはあるが周りの輝きよりも自己主張が激しいもの、
赤、青、緑、発光ダイオードのようにそれぞれ様々な色になって光り続けている。
「綺麗ね」
空に浮かぶ幾多の光の粒を見つめ、南春香は溜息を漏らす。
掴んでしまいそうになるほど小さい、それでいて届くことのない煌きは、彼女の心を掬い上げるには十分だった。
「そうだな」
アカギは低いトーンの声のまま、半ばだるそうに返す。
彼女の声に吊られて天を見上げたら、様々な星々が輝き続けていた。
流石に地に差すほど強い光ではないものの、夜の闇をかき消す程には光っている。
「やっぱり正解だったでしょ、たまにはこんなところに来るのも」
こんなところ、つまりは小高い丘の上、本日は晴天だったせいか、適度な湿り気を帯びた草花が辺り一面を覆っている。
そして夜になり、太陽が眠ったことで埋もれていた光が目を覚ましたのだ。
それらを遮る無粋な雲も無い今は、絶好の観測日和、夕食を済ましたアカギと春香はこの丘にやって星を眺めていたのだ。
「そうだな」
同行者が何人かいたはずだが、恐らくは周囲の人々に紛れて何処かに行ってしまったのだろう。
辺りにはネギを持った少女やら妙な仮面をつけた男やら紫のツインテールの少女やら尻丸出しでパンツレスラーに叩かれている少女やら実に様々な人間がいる。
「ねえ、ちゃんと聞いてる?」
「そうだが」
投げやりな返答に呆れたのか、春香は先ほどとは別の意味で溜息を付いた。
だがアカギは、春香に振り向くことはなく、空を眺めている。
「ならば南春香」
「え?」
そして漏らした彼の一言、機械的に言葉を返していただけの声に高低ができた。
アカギからの質問に、今度は逆に春香が返す。
「ここで輝く星を見て、何を思う?」
春香は呆気に取られた。
彼の口から放たれたのは、唐突でいてシンプルな質問。
だが、それだからこそ面と向かって言われるとすぐに答えられない。
一般社会に生きる人間、常人なら皆誰もがこう思うであろう。
「それはまあ、さっき言ったみたいに綺麗だなって」
そこで春香は言葉が詰まる。
確かに美しいと思うだろう。 大気圏を越え、銀河系を超えた先から数え切れないほどの光を放っているのだから。
だからこそ人間がちっぽけな存在だということを身に染みらせる。
「この星空は・・・・・・まるで人間だな・・・ッ!」
性質も大きさも異なる多数の星が集まり、中には星座、あるいは星団、銀河を作り出して星雲を生み出す。
生まれたばかりの新星は、産声上げるように烈火の如く輝き出す。 天を流れるのははぐれ者の彗星だ。
そしてそれらのごく一部が地球という微小な惑星に星空という形で映し出されているのだ。
たとえ大地に届かなくても、暗がりの空深くから、己の寿命を削ってまで身を晒し、最後には極光を放って消滅する。
宇宙の歴史から星が消える瞬間、その後には何が残るのだろうか。
何も残らないかもしれない、そんなことはわからない、でもそれでも彼らは生きている。
生きて存在を示しているのだ。
「じゃあ私は・・・・・・」
春香の彼に答えを返そうと口を開く。
薄く赤くなった頬をかき、はにかみながら言葉を発する。
「妹達や赤木さんと一緒に居られる、そんな星座になりたいな」
夜空に新しい輝きが生まれた。
何万光年もそれ以上も離れた宇宙で、星々がそれに負けぬ極光を放つ光に衝突する。
否、黄金の光を纏った人影が星を殴り飛ばしているのだ。
「アカギに! 流れ星を見せるために! 天体を! 叩き落す!」
「誰だか知らないけどお前人間じゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「野比ちゃぁぁぁぁぁぁん!!!」
「時報はもういやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
流れ星。
それは天からの贈り物。
【タケシ@クロススレ 死亡確認】
【野比玉子@カオスロワ 死亡確認】
【富竹@クロススレ 死亡確認】
死因:流星群
最終更新:2009年08月01日 19:11