スパンキングロワイアル・第1話

 荒涼とした大地を踏みしめ、意志の強い瞳で空を向く。
 黒いライダースーツに身を包み、圧倒的な存在を前にしてボロボロの滝は仇敵・大首領を睨みつける。
 ボロボロのマントを風になびかせ、黄金のZXの外見を持つ大首領は虫でも見るように滝を見下した。
 滝は自分と背丈の変わらないはずの存在に、ただ圧倒されるばかりであった。
「どうした? 我をスパンキングするつもりではなかったのか? 虫けら(ワーム)よ」
「ほざいていやがれ。絶対お前だけは……俺の手で……!」
 本郷も一文字も、目の前の大首領になすすべもなく尻を叩かれていた。
 もはや残っているのは自分だけ。いや、違う。
「その戦い、ちょっと待ってもらおうか」
「なにしにきやがった。似非ライダー!」
 整った顔立ちに線の細い身体。生意気な態度が滲み出た表情。
 滝の気に入らない要素がすべて詰まった青年。仮面ライダーを名乗り、変身する男。
 滝は認めていない。
「危ない!」
「なっ……」
 その男、士が動いて滝を突き飛ばす。大首領の衝撃波で地面が抉られていた。
 あのまま喰らっていれば、尻をスパンキング!されるのは必至。
「てめー……」
「ほう、虫けら(ワーム)同士で手を組むか? くだらん。その男は先ほどまで、キサマを軽んじていたのだぞ」
「くだらないな。馬鹿にされたから助けないんじゃない」
 士という青年が滝を庇うように前に出る。
 右腕から流れる血が滝の視界に入った。
 歯を食いしばる。

「そこに危険に晒された男がいる。だから助ける。ただそれだけだ、宇宙人」
「ほう、この我を愚弄するか。何様のつもりだ?」

 その決意。その思い。ああ、そうだ。その信念こそが、その思いこそが、外見でも力でもない。

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ! 変身!!」

 本郷たち、仮面ライダーの証明であった。


「くっ!」
「威勢がイイのはいいが、その程度か? ディケイド」
「まだまだこれか……」
 ディケイドが強がるも、大首領も攻撃が速い。
 ディケイドが念力で吹き飛ばされ、壁に激突する瞬間。
「おっと、俺を忘れるな!」
「お前……」
 髑髏のマークがついたヘルメットを被った滝が庇った。
 ぐえ、と呻きながら助ける滝に、ディケイドは呆れたため息を吐いた。
「なにをしている。俺は似非ライダーじゃなかったのか?」
「へっ。もともと仮面ライダーなんてのは、勝手に名乗っているもんだ。
だから、今日はお前と俺でダブルライダーをやってやるよ」
 そういって照れくさそうにディケイドの前に出る滝の背中を見つめ、つい微笑む。
 ここで新たな絆をえた。そう確信したとき、ディケイドの手に新たなカードが生まれる。
「おい、滝。ちょっとくすぐったいぞ」
「あ……? って、ちょ……」
 ディケイドが新たなカードをディケイドライバーに差し込み、電子音が荒野に轟いた。

『Final Form Ride Tatatataki!!』

 巨大な尻叩き用の棒をディケイドは掴む。
 空に悠然と浮かぶ大首領を見つめ、ディケイドは地面を蹴った。
「あとはお前のパンツとズボンを下ろすだけだ。覚悟しろ!」
「ククク、やれるものならやってみるがいい……」
『俺とディケイド、ダブルライダーの魂を受けやがれ! 大首領!!』
 二人の仮面ライダーの魂。
 尻叩き棒に希望と共に乗せ、黄金の大首領のズボンへと右手を伸ばした。

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最終更新:2009年08月30日 21:51
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