大戦の喧騒からは遠く離れた、静かな山奥の湖畔に佇む荘厳な建物。
大きいながらも成金趣味を感じさせないそれは、別荘というより史跡のような印象すら与える。
ここに此度の大戦の動向を左右する人物がいるとは、にわかには信じられない。
私は意を決すると、その家のドアを叩いた。
最初に出迎えたのはメイドだった。
「0100111010001110」
彼女はそう言ってにっこり微笑み、私を案内し始めた。
多分、『ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ』とか言ったんだと思う。
長い廊下を歩いていると、ある部屋から
「ああっ、お姉ちゃん、もっとぶって!!」
という声と、鞭で尻を叩くような音が聞こえてきた。
まあ、人の趣味はそれぞれだ。口は出すまい。
「110110001110001010」
案内された部屋の前で息を整え、ノックをしてから扉を開ける。
部屋の中には一人の男と一人の少女がいた。いずれもインターネットなどで何度も見た顔だ。
少女のほうはさっきのメイドと似た顔で、なぜか裸マントという頭のおかしい格好をしている。きっと変態なんだろう。
「戦火の中、よくぞここまでいらしたな。まあ前置きはいい」
男のほうが口を開く。
6/。表世界では作家として通っているが、大戦下では両陣営に武器を融通する組織の元締めという顔も持つ。
もっとも6/という名前の大戦関係者は一人や二人ではない。彼は一般的には「七期6/」などと呼ばれている。
「単刀直入に行こう。要求は?」
「はい。イナバ物置を五十個、エアを三本、エクスカリバーを二本。それを発注させてもらいたい」
「ふん、それくらいならすぐでも用立てできるが……こちらも商売だ」
「存じております」
私はそう言うと、懐から分厚い封筒を取り出して机の上に放り投げた。
七期6/はそれを拾い上げて中をあらためた。次第にその顔がほころんでいく。
「おお!!これはまさしくみなみんのスク水!!こっちはブルマ!!寝顔まで!!」
「マスター、もう少しは知的な顔ができないですか?」
裸マントの少女が呆れたようにつぶやく。
「だいたいそれ犯罪ですよ」
「武器商人に今更犯罪もクソもあるか」
「……同じ犯罪でも、もうちょっとスケールが大きい感じにですね」
「ふん、中途半端に胸のある貴様には貧乳の絶対美などわからんか」
「なっ!!」
話が心底どうでもいい方向に行きかけたので、私は起動修正する。
「それで、取引の件は?」
「ああ、この報酬なら特別サービスでイナバ物置は二百個にしよう」
「マスター!!何言ってんですか、大赤字ですよ!!」
「お前は黙っていろ」
「ああ、また明日から、池で釣った魚と森で取った木の実だけを食べる生活に……」
力なく泣き崩れる裸マントの少女。気の毒だが、こちらも勝敗がかかっている。
「では引き渡しは明日の朝、そちらの前線基地近くで。俺と同じ6/という名前の男が商品を持っていく」
「わかりました。彼は有名ですからすぐにわかりますよ」
なにしろ、常に周囲に美少女をはべらせているというからな。
「それにしても……」
と、七期6/は笑いをかみ殺したような顔で言った。
「あんたは一体、そのナリでどうやってこの商売を運ぶつもりだ?ーーーブリさん」
【ブリ@東側陣営】
イナバ物置×200、エア×3、エクスカリバー×2を獲得
最終更新:2009年08月30日 22:00