「何故……どうしてこんなことになったでござるか!!」
サスケはただ涙していた。
目の前にはゴエモンの死体、そして激しく戦うエビス丸とヤエの姿。
人を疑うことを知らない純粋な彼にとって、それは耐えられない地獄絵図だった。
「このクロススレでまで……どうしてこうも血生臭い戦いに……!」
「ほにっ!」
エビス丸の大火炎の術が、ヤエへと襲い掛かる。
その炎の間を縫って、飛んでくる4つの手裏剣。
うち3つはヤエをホーミングし、残り一つは地形を反射しながらトリッキーにヤエを追い詰めていく。
「やらせるものですかっ!」
ヤエのバズーカが手裏剣を、そしてエビス丸をロックオン。迷うことなく撃ち放つ。
弾丸は手裏剣を消し飛ばし、エビス丸へと飛び込んでいく。
しかし、弾が当たる直前にエビス丸の姿は消失し――明後日の方向へと虚しく飛んで行った。
「どないでっか!」
再び姿を現すエビス丸。バズーカの弾が自分に当たる直前、ちびエビスンの術でミクロ化し回避したのだ。
「ほうれ、タートルアタック!!」
エビス丸が身体を回転させ、丸いボールとなってヤエに向けて跳びかかる。
避けきれない――そう踏むや否や、ヤエは衝撃に備えつつ背後へと跳んだ。
「もろたっ!」
ヤエの華奢な身体に、エビス丸の鈍重なボディが炸裂する。
一瞬顔を歪めるも、その口元には僅かに好機を手にした笑みが過ぎっていた。
ヤエの後ろには、海――
「引っかかったわね!水の中は私の独壇場よ!」
エビス丸の身体を掴んだまま、共に海へとダイブするヤエ。
水の中に飛び込んだ瞬間、彼女の身体は人魚へと姿を変える。
「ほげっ!?」
焦りを見せるエビス丸。彼はカナヅチだ。このままでは確実にトドメを刺される。
それを察すると、エビス丸は一切の躊躇なく、術を解き放った。
「ピカりんの術!!」
落雷が海へと落ちる。電撃は水を伝って、二人にダメージを与える。
「うあぁっ!?」「ほにぃっ!?」
この戦い、双方共に手段を選ばず、容赦もない。
死ぬ。どちらかが確実に――サスケはそれを察し、覚悟を決めた。
自分が、自分でなくなる覚悟を――
「さすがにやりまんなぁ、ヤエはん」
「エビス丸さんも、まさかここまでやるとはね……!」
不敵に笑いあう二人。既に双方ともボロボロだった。
恐らく、次が最後の攻撃になる。共に、それを察していた。
敵を討つため。マーダーの意地を通すため。
二人の忍者が、雌雄を決しようとしていた――
その時。
「うあああああああああッ!!!」
突如その場に響き渡った絶叫に、思わず二人は振り返る。
そこには、一体のからくり忍者が、まっすぐに二人に向けて走ってくる。
その瞳は――正気を映し出していない!
「くない激炎破!!」
叫びと共に、サスケは炎を纏ったくないを撃ち放った。
「ひょえっ!?」「危ない!」
死角からの攻撃にバランスを崩すエビス丸を襲うくない――
咄嗟に、ヤエは手持ちの刀を投げ、くないを弾いた。
「ヤエはん!?」
今の今まで殺し合っていた彼女の行動に、驚くエビス丸。
しかし、状況は二人に猶予を与えない。
サスケは飛行の術で空高く飛び上がり、二人の頭上から次の攻撃を繰り出した。
「花火爆弾ッ!!」
無数の花火爆弾が雨となって二人に降りかかる。とても避けきれるものではない。
「こらあかんっ……シーウ!」
エビス丸が身を守るための術を唱えた。彼の、そしてヤエの身体をバリアーが覆い、爆発花火から守る。
「エビス丸さん!」「ほにっ♪」
ヤエの言葉にVサインで返すエビス丸。それだけで、再び仲間としての絆が戻るには十分だった。
「りふおる!」
ヤエの放った回復の術により、双方の傷が全快する!
「ほな、いきまっせ!」「いくわよっ!」
サスケが殺意と共に、一直線に二人へと駆けてくる。
撃ちだすくない激氷破を、火炎の術で迎撃するエビス丸。
その隙を逃すことなく、サスケは一気に接近し、エビス丸目掛けて斬りつけた。
金属同士が打ち合う軽快な音が響く。
サスケのくないは、エビス丸の右手の笛で受け止められていた。
刹那――左手に構えたハリセンが、サスケの右頬を捉える。
心地よい音と共に小柄で軽い身体が宙を舞った。その無防備な瞬間は、決定的な隙となった。
「今よっ!」
サスケの吹っ飛んだ先には、ヤエの姿。
空中でバランスの取れないサスケの背を捉えるのは、訓練されたくのいちにはわけないことだった。
ポチッ、と軽い音が鳴り……
サスケの背中の「善悪スイッチ」を、ヤエは「善」に切り替えた。
それだけで、全ての勝負が決した。
「サスケさん!しっかりして!」
倒れたサスケに、ヤエは必死で呼びかける。
そんな彼女に、サスケはしてやったりとばかりに笑いかけた。
ヤエは謀られたことを悟る。最初から、サスケさんはこれが目的だったんだ。
「ヤエ殿……やっと、元のヤエ殿に戻ってくれたでござるな」
サスケの言葉にいつしか、ヤエは昔の自分に立ち戻っていることに気付く。
その感覚が、先程まで張り詰めていた時が嘘のように心地よく、安堵を覚えていることも理解できた。
「ほにっ」「ござる!」
エビス丸とサスケが、昔と変わらない笑みを返してくれた。
裏切った自分を、まるで何事もなかったかのように、仲間として迎え入れてくれている。
「ふふっ……」
ああ、私は大切なことを忘れていた。ここが、私の居場所なんだということ。
私はもう少しで、それを傷つけてしまう所だった――
ルイージ「いや傷つけるどころか殺してるでしょ、あんた」
マリオ「何この胡散臭い戦い。やっぱりゴエモンへのあてつけにしか思えないんだけど」
ルイージ「りふおるで瞬時に全快ってあたりにやらせ臭さがきついよねー」
ほったらかしのゴエモンの死体を見ながら、マリオブラザーズは流石に哀れみながら呟いた。
最終更新:2009年08月30日 22:05