未だ薄暗い丑三つ時。
梅雨時という事もあってか、しとしとと小雨が降り注いでいる。
雨に濡れる事など気にした様子もなく、ある墓前に一人の少年が立っていた。
少年の視線の先には、墓石に刻まれた斉藤道三の文字。
それは美濃の蝮と呼ばれた戦国武将の墓であった。
「父上、今日は父上が亡くなられた日ですね」
誰に聞かせるでもなく、少年はポツリと呟く。
いや、黄泉の国で眠る道三へと聞かせているのだろう。
その声色は、生前の父親の事を思い出しているのか、少し震えている。
雨に濡れていて分からないが、おそらく涙も流している事だろう。
それも当然だろう、戦国の世を生きているといえどまだ幼い子供なのだ。
ましてや父親の墓前。
「僕は、父上が僕の父だと嘘をついていても、父上と一緒に居られて幸せでした」
例え本物の親子でなくとも、偽りの間柄であっても、共に過ごしてきたという事実は変わらない。
「今日は父上に紹介したい人がいるんです」
その言葉と共に少年の背後から、一人の青年が現れる。
「僕の兄上……長宗我部元親です。父上と顔を合わせる事はできませんでしたから」
少年は青年が墓前で立ち止まるのを見ると、そう言葉にした。
その言葉に続くように、元親は口を開く。
「あんたが弟、親泰を守ってくれてたんだってな。心から礼を言う。
もしあんたが居なかったら俺達は再会できなかったかもしれない」
元親は杯に酒を注ぎ、それを墓前に供える。
異名になぞらえたのかマムシ酒だ。
「できれば生きてるあんたと酒を酌み交わしたかったんだがな」
その場に胡坐をかき、自身の杯にも酒をなみなみと注いだ。
「まぁ弟を養子にやるわけにはいかないがな、ハハハハッ!」
そう言って元親が笑うと、道三を尊敬している親泰は困ったように苦笑する。
元親のお陰で、しんみりとしていた空気が多少和らいだようだ。
その時だった。
『西海の鬼、そして香宗我部親泰……機嫌は如何程ぞ!』
「ッ……!!」
それはあの第六天魔王-織田信長-からの放送だった。
何故? バトロワでないのに放送とは意味不明すぎる。
二人は周囲に敵が居るわけでもないのに、息を殺して放送を聴いた。
『余の放送に不思議がっている鬼も居るだろう。だが安心するがよい。余は貴様等にちょっとした余興を与えようと思っているだけだ』
余興……?
『その余興というのは……花火だ』
……?
何を言っているのだろう、こいつは。意味不明にも程がある。
……いや、織田信長にとってこれは楽しい余興なんだ。意味があるに違いない。
『今日は花火の日ぞ! そこで余はこの話に花火を捻じ込む事にしたまでよ。
ついでに道三の義理の息子である姉小路頼綱がBASARA3に参戦する記念も兼ねておる。
ちなみになぜ我かというと、蝮めは濃の父親だからよ』
そう言われれば納得せざるを得ないが、このキャラ崩壊、おまえアニロワ出典じゃないだろ絶対。
『北を見よ。余興の始まりぞ……是非も無し!』
ヒュウゥゥゥ…バッ…!!
一つ目の花火‐紅‐が空に放たれた。
二つ目は黄…三つ目は紫…四つ目は翠…――。
そして…
ヒュウゥゥゥ…
蒼。
バッ…!!
前半のシリアスな流れがぶち壊しだが、もうどうでもいいやと筆者は思った。
というか花火の日だからってプラネタリウムはないよなと思った。
◆◆◆ 完 ◆◆◆
最終更新:2010年06月01日 06:24