書き手ロワ国編

(BR230/05/phase:00) 書き手ロワ国

山間部に存在する小国、書き手ロワ国。
古来よりこの地は交通の要所として栄え、自然と集落が作られていった。
戦乱のおり、この集落は独立国家として旗揚げし、乱世に加わった。
しかし多種多様な民族を抱えた不安定さ故か、国は戦乱を乗り越えられず小さな集落に戻った。
そんな過去があったため、この地が再び国家として名乗りを上げた時も、多くの大国はどうせまた潰れるだろうと高をくくっていた。
だが、そうはならなかった。この国に成長の余地ありと踏んだ一部の人間たちの援助、
そして3人の男の登場が、書き手ロワ国をひとつの国家として安定させたのだ。

三人の男たちは、別々にここへ来た。そして、別々に動いていた。
しかしその行動が、国の安定というひとつの結果として結びつくことになった。

一人は奇抜な発想で人々の度肝を抜きながらも、機を読む能力に長け成功を続けたため「ヨッミー」と呼ばれた。

一人は卓越した能力を持ち高い評価を得ながらも、決して自分の名を名乗らなかった。
山奥の泉を拠点に活動していた彼は、いつしか「古き泉のネームレス」と呼ばれるようになった。

そして最後の一人。彼は空気の如く自然にこの国に溶け込み、自然にこの国を発展させていった。
やがて王の座についた彼は、国民から「空気王」と呼ばれた。

(BR230/05/phase:01) 書き手ロワ国

書き手ロワ国の城、それは「ラピュタ」と呼ばれる超古代遺跡を改修したものである。
「ラピュタ」に使われている技術は現代のものを超越しているため、一から作るよりよほど安全で便利だったのだ。
その廊下を、端整な顔立ちの青年が何やら叫びながら走っていた。

「空気王殿!空気王殿はおられますか!」

彼こそは書き手ロワ国三本柱の一人、古き泉のネームレス。
三人の中でも特に社交性に優れる彼は、積極的に他国と接触し情報収集を行っていた。
そして彼は、アニロワ国でとんでもない情報を入手した。
それを王に報告すべく、彼は急いで自国へ戻ってきたのだ。

「騒がしいわねえ。どうしたのよ、ネームレスさん。」
「何か事件でもあったのですか?」
「おお、かがみん姫にみWiki姫!お久しぶりです!
つかぬ事を伺いますが、王はどちらに?」

ネームレスの前に姿を見せたのは、王の娘である二人の少女。
かがみんとみWikiだ。
二人とも姫とはいっても、ただのお嬢様ではない。
片や細身の体に似合わぬ一騎当千の武力を持つ「闘将」、片やあらゆる知識をその頭脳に収めた「知将」として他国に名を轟かせているのだ。
ちなみに、二人とも空気王の実の娘ではない。
身寄りがなく路頭に迷っていたところを、空気王に養子として引き取られたのである。
彼女たちと空気王の年齢差は親子というより兄妹の方がしっくり来る程度のものだったが、それでも二人は空気王を父親として認めていた。

「父さんだったら、野球を見に行ったはずだけど…。」
「やれやれ、またですか…。あの方の野球狂にも困ったものです。」

ため息をつき、ネームレスは額に手をやる。

「あの…私が呼びに行ってきましょうか?」
「いえ、僕が行ってきます。お二人はヨッミーさんをここに呼んでおいてください。」
「大事ね…。いったい何があったの?」

かがみんの問いに、ネームレスは真剣な面持ちで答える。

「戦争が…始まります。」

(BR230/05/phase:02) 書き手ロワ国

空気王について、ネームレスは多くのことを知らない。
知っているのはここから遠く離れた島国の、「モリオウチョウ」という町で生まれたらしいこと。
数年前に大陸に現れ、行商人として各国を旅していたらしいこと。
そしてアニロワ国で「大王」という名の店を経営するが、その店を売却し新たな可能性を求め今の書き手ロワ国にやってきたらしいこと。
情報と言えばその程度だ。
だが、過去を知らないのはお互い様。ネームレスも、自分のことをほとんど空気王に話してはいない。

「さて…。早く見つかるといいのですがね…。」

今、ネームレスの眼前には巨大な施設が存在していた。

国立KuKio球場。
王に就任した空気王が真っ先に取りかかったのが、この施設の建設だった。
「野球」という、この大陸では決してメジャーとは言えないスポーツ専用の施設。
それの建設を何よりも優先するというのは、わがまま以外の何物でもない。
しかし今までの功績もあって、そのわがままはあっさりと認められた。
そして王の熱意もあって、野球は書き手ロワ国の民の間に少しずつ浸透していった。

「平和だねえ…。」

球場の外野席で、カレーを食べながら空気王は呟く。
この大陸においてカレーは神話の時代数々の悲劇を引き起こしてきた食べ物として知られているが、彼は気にしない。
美味いものは美味いのだ。
大好きなカレーを食べながら、大好きな野球を見る。まさに至福の時。
だが、それも長くは続かない。

「ようやく見つけましたよ、空気王殿…。」

聞き慣れた声に反応して、そちらに視線を向ける空気王。
そこには、汗だくになったネームレスがいた。

「よう、ネームレスの旦那じゃないか。」
「まったく、あなたという人は…。野球を見るなとは言いませんが、一国の主が護衛も付けずに出歩かないでください。」
「大丈夫だって、自分の特技は空気に溶け込むことなんだから。誰も自分が空気王だなんて思わないって。」
「まあ、確かに違和感はまったくありませんが…。」
「で、何か用?」
「用なんてものじゃありませんよ。緊急事態です。今すぐ城にお戻りください。」
「えー?今、いいところなんだけど…。もうちょっと待ってくれない?」
「駄目です。今すぐ戻ってもらいます。」
「せめてこの回が終わってから…。」
「だ・め・で・す。」
「…にょろ~ん。」
「かわいくないんでやめてください。」

(BR230/05/phase:03) 書き手ロワ国

書き手ロワ城、会議室。今、ここには五人の人間がいた。
君主である空気王。三本柱の残り二本であるネームレスとヨッミー。そして空気王の娘にして側近、かがみんとみWikiである。

「要約するとだ…。爆弾の旦那が戦争を起こそうとしている。それでいいかい、ネームレスの旦那。」
「要約しすぎのような気もしますが、その通りです。」

けだるげな空気王の発言を、条件付きながらネームレスが肯定する。

「優秀な人なんだけどねえ、爆弾の旦那も…。どうしてこう血の気が多いのか…。」
「ぼやいている場合ではないのである、我が王。
大陸全体が再び戦渦に巻き込まれるようならば、我々も平和をむさぼってはいられないのである。
今後の対応を考えねば。」

渋い顔でそう発言するのは、ヨッミーである。

「それに、我が国は爆弾様にただならぬ恩義がありますし…。」

みWikiが言うように、爆弾の協力なしでは今の書き手ロワ国はなかった。
この国の地図を作ったのは他ならぬ地図氏であるし、それ以外にも彼からは有形無形の様々な援助を受けてきたのだ。

「やはり、爆弾様への恩を返すとなると…。」
「そうだな…。」

会議室の空気が、一気に濃くなる。誰もが、王の次の言葉を待つ。


「だが断る。」

『あれ~?』

予想外の言葉に、思わず脱力する一同。

「ちょっと、父さん!話の流れから言って、そこはアニロワ国に協力して戦争に参加、とか言う場面じゃないの?」
「いや、確かに爆弾の旦那にはいろいろ世話になったけどさ…。
それを言ったら、スパロワ国のマダオの旦那や、LSのボマーの姐さんも一緒だぜ?
爆弾の旦那一人に肩入れするわけにはいかねえだろうに。」

かがみんのつっこみに、空気王は悪びれずに答える。

「それに、うちは商業と観光の国だよ?商売人がお客様殺してどうするんだよ。」
「つまり、たとえ戦争が起ころうとも我が国は参戦しない。そういうことであるか?」
「YES!YES!YES!」

ヨッミーの確認に、首を縦に振る空気王。

「中立を保つ…。それもひとつの選択肢だとは思いますが…。下手をすれば他国から集中攻撃を受ける危険性もありますよ?」
「まあ、それもそうだけど…。今のところどこの国とも友好的な関係築けてるし、大丈夫だろ。
それに、うちにはチャット大聖堂もあるしな。うかつに攻められないだろ、他の国も。」

チャット大聖堂。それは人の和を司る神・チャット神を祀った建物である。
数年に一度この建物に各国の中心人物が集まり会議を行うのだが、これは書き手ロワ国の領土内に建てられているのだ。
チャット大聖堂を汚す者は、どんな仕打ちを受けても文句は言えないというのが各国間の暗黙の了解である。
現に先日大聖堂を荒らした不届き者は、捕らえられたあと大陸追放という重い処罰が科せられている。
うかつに大聖堂の周辺で戦闘を行い、破壊でもしてしまったら、他国からどんな扱いを受けるかわかったものではない。

「なるほど…。あなたの考えはわかりました。我々はあなたに従いましょう。」
「けど、そんな消極的な姿勢でいいのかなあ…。この機に乗じれば狭い国土を拡大できるかもしれないのに…。」
「血気盛んだなあ、かがみん。だから、うちは商業国だから軍事的には駄目駄目なんだって。
いくらかがみんが一騎当千天下無双強力無比文武両道眉目秀麗容姿端麗でも…。」
「褒めすぎです。しかも、どさくさに紛れて外見まで褒めないでください。」

空気王の親バカ発言に、ネームレスが冷静に突っ込む。

「まあ、多少言い過ぎたのは認めるにしても、うちが戦力不足なのは事実だ。
武器はあっても、それを使う人間がいないんじゃな…。」

そう、書き手ロワ国には貿易で得た各国の主力兵器がごろごろしている。
しかし、肝心のそれを使う人間が足りないのだ。

「せめて、我が国に先日まで客将として滞在していた漆黒の龍殿が今もいてくれたなら、まだましだったのであるが…。」
「帰っちゃった人をどうこう言ってもしょうがないでしょうが、ヨッミーの旦那。
あっちはあっちで大変なんだし。
それに、自分は戦争やるつもりはないと何度言ったら…。」
「ああ、済まぬ。失言であったな。」
「とにかく、結論としてはだな…。」

急に真剣な表情になる空気王。それにつられ、他の四人の顔も引き締まる。

「我が書き手ロワ国は、積極的な戦争への介入は行わない。ただし、他国からの侵略を受けた場合は全力でこれを排除する。
今後の政策としては、各国との貿易はこれまで通りに続ける。
ただし、バランス配分は今まで以上に気を遣おう。下手に偏って、難癖を付けられたらやっかいだからな。
それから、食料と薬は多めに確保しておけ。戦となれば、武器と同様かそれ以上にこいつらは重要だ。高く売れる。
あとは…そうだな。ラジオ国との関係を強化しておこう。
あそこは一種の聖域だ。仲良くなっておけば、他国が攻めてきづらくなる。
まあ、とりあえずはそんなところか…。」
「御意である。」
「仰せのままに…。」
「それじゃあ、今日はここで解散!」

(BR230/05/phase:04) 書き手ロワ国

数十分後、会議室には二人の人間が残っていた。

「お疲れ様でした、父上。」
「おお、サンキュー。」

みWikiが差し出したお茶を、空気王はちびちびとすする。

「やっぱりみWikiの淹れたお茶はうまいね…。」
「そんな…。お茶っ葉がいいからですよ。」
「もちろんそれもあるだろうけど…。アニロワ国原産の、みくるブランドか?」
「正解です。さすがは父上。」
「はっ、自分の扱ってる商品のことがわかってなくちゃ、商売人なんてやってられねえっての。」

不敵に笑いながら、空気王はもう一口お茶を飲む。

(爆弾の旦那…。自分は素直にあなたには従いませんよ…。
まあ、頭のいいあなたのことだから、それも計算済みかもしれませんが…。
とにかく、自分は自分の国と家族を守る。危害を加えようとするならば、あなたとて容赦はしない…!)


BR230年、書き手ロワ国に「表向きは」目立った動きなし…。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年04月24日 19:05
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。