「修羅の雷」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
修羅の雷 - (2011/01/08 (土) 00:39:41) のソース
**修羅の雷 ◆.SDSaRdZEA 「お前、その本を読んでみろ」 と、そのガキは言った。 オーケー、落ち着け俺。取り乱すんじゃあない。ザ・サードマンはうろたえない。 そう……まずは俺の置かれた状況から考えてみよう。 まず、俺の名前は三村信史だ。 城岩中学校3年B組、出席番号19番。 身長172cm、体重59kg。自分で言うのもなんだが、中学生にしちゃ長身かつ均整の取れたスタイルだと自負している。 得意科目は英語に数学に技術家庭科、苦手科目は国語と社会科。 バスケットボール部に所属していて、運動神経には自信がある。 よし、俺は冷静だ。頭は回っている。夢を見ているわけでもない。 ……いや、待て待て。これじゃ自己紹介しただけじゃねえか? 落ち着け、落ち着くんだ! Be coolだ三村信史……! 2,3,5,7……そう、素数を数えて落ち着くんだ……11,13,17,19……俺の得意科目は数学……! 23,29,31,37……「素数」とは1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……41,43,47,49,53,……俺に勇気を与えてくれる……! ……ふう、落ち着いた。俺は冷静だ。どこから見ても超クール。よし、じゃあ続けよう。 俺が今置かれたこの状況……これは噂に聞くあの「プログラム」だろうか? 「戦闘実験第六十八番プログラム」……中学三年生のクラスを無作為に選び出し、最後の一人になるまでお互いに殺し合わせるクソッタレの殺人ゲーム。 だが、それにしては不可解な点もある。 俺は昨日、普通に自宅のベッドで寝ていたはずだ。それが起きてみたら制服を着ていて、見知らぬ部屋に一人放置されていた。 部屋にあるのはベッドと金庫だけ。机もテレビもない。入り口のドアには鍵が掛かっていて中からは開かなかった。 変わった点と言えば壁の一面が鏡張りになっていたことか。 そう、その鏡に変な奴が映ったんだった。 背中からチューブみたいなものを生やした奴が俺たちに殺し合いをしろと言っていた。 俺の首に巻かれている首輪とか、禁止エリアのこととか色々言っていたが……。 俺の知っている「プログラム」とは何かが違う、そんな気がする。 その何よりの証拠はいま俺の目の前にいるこいつ……紫色の瞳、銀色の髪に真っ白いマントを着た、小学生くらいのガキだ。 こいつはおっかなびっくり夜の街を歩いていた俺の前に、空から降ってきたのだ。 ……空からだ。地面に激突する! と思って助けようとした俺の目前で、白いマントが蛇のように伸びてクッションになり、こいつは平然と着地しやがった。 で、俺が口を開く前にこいつは分厚い本を俺の前に放り出し、最初のセリフを言ったわけだ。 状況把握は完了……が、まずいことにそろそろこのガキは痺れを切らそうとしているようだ。眉がどんどん吊り上っている。 俺が全く反応しないから当然か? と、とにかくまずは言う通りにしてみよう。別に俺に危害を加える気はなさそうだし。 「えーと……なんだこの文字? いや、だが読める……『ザケル』?」 俺が、その文字を読んだ瞬間……視界は閃光に満たされた。 それだけじゃなく、すぐ傍にあった民家が爆発したかのように吹き飛んだ。 「読める、のか。デュフォーではないというのに……」 「お、おい! おまえ一体……?」 その閃光の発生源はガキの右手だった。 閃光……いや違う。あれは電撃か? 「デュフォーはまだ生きているのに、他人が本を用いることができる……魔本を完全に制御しているということか?」 ぶつぶつと何事か呟くこいつは、この事態に戸惑ってはいても全く恐れてはいないように見えた。 まるで以前に同じような経験をしたことがあるというような。 「幸い、リオウやロデュウのような馬鹿どもは参加していない。魔物の子はほぼガッシュの仲間、それはプラスと考えていい……」 「おいったら!」 「……ん?」 俺が再度、強く呼びかけるとこいつはやっと俺の方を向いた。 「何だ、まだいたのか。オレに何か用か?」 「まだいたのかっておまえ……あのな、おまえは一体何者だ? さっきの雷は……」 と、ここで俺は自分のミスに気付いた。 こいつは外見こそはガキだが、首輪をしているところから見て俺と同じこの「プログラム」の参加者だろう。 つまり俺の敵になるかもしれないわけだが、俺は武器も持たず悠長に話しかけちまった。 金庫に入っていたリュックサックには武器と言えるものがなく、適当な民家で調達すればいいかと考えていたんだが。 まさか、その前に他の参加者と遭遇しちまうとは……。 が、まだだ。まだ運は尽きていない。 まだいたのか、とこのガキは言った。 俺と接触したのは、さっきの電撃が出るかどうかを確かめたかっただけなんだろう。 それを果たした後は俺に興味を失っていた。とするとこのガキは殺し合いに乗る気がない、と考えていいかもしれない。 ゴクリ、と唾を飲み込む。クールだ、クールになれ……! 「お、俺は三村信史だ。おまえの名前は……なんて言うんだ?」 「……ゼオン・ベル」 こいつはゼオンと名乗った。 名簿を確認したとき、その名前は確かにあった。参加者であるのは確定だろう。 しかしどう見ても大東亜共和国人ではない。外人だろうか? そして、ベルという姓。名簿にはもう一人、ベルと書かれた名があった。 「じゃあ、ガッシュって奴はおまえの知り合いか?」 「ガッシュか。弟だ、オレの」 「弟? 兄弟で参加させられたっていうのか」 「おまえはガッシュの居場所を……知らんだろうな。戦いは始まったばかりだ」 「ああ、悪い。俺が会ったのはおまえが初めてだ」 ゼオンはそうか、と呟き思考を巡らせている。 弟だと言った時のこいつの顔は、本当にガッシュって奴を心配してるんだろう、そう思わせるくらい張り詰めていた。 俺に兄弟はいないが、家族を心配する気持ちはわかる。俺だって叔父さんが参加させられていれば……。 「おまえ、ガッシュって奴を探すんだろ?」 「ああ。あいつは王になる子だ。決して死なせるわけにはいかん……いいや、それは建前だな。 オレは兄としてあいつを守る。この身がどうなろうと、あいつを清麿の元へ返してみせる……絶対に」 「だったらさ、俺が手伝ってやるよ。一人より二人の方が、できることは多いだろ?」 だから、俺はゼオンを手伝ってやろうと思った。 俺の知り合いは七原秋也、杉村弘樹、桐山和雄、相馬光子の四人。幸いと言っていいのか親友の豊はいなかった。 秋也と杉村は心配っちゃ心配だが、あいつらなら自分のことは自分でなんとかするだろう。 桐山と相馬は正直友達ってほど深い関係でもない。いや、正直あいつらならこの殺し合いに乗ったっておかしくはねえんだ。 つまり俺が率先して探す相手はいない。自分の命を守ることを第一に考えていればいいわけだ。 もちろん最終的な目的は、この殺し合いを仕組んだ奴に強烈なカウンターパンチを食らわせてやることだ。 そのために、手から電撃を放つ力を持つゼオンと同行するのは決してマイナスではない。 こいつと一緒にいれば俺が生き残る確率も上がる……って打算もあるけどよ。 こんな小さなガキが弟を心配してるんだ。手伝ってやりたくなるのが男ってもんだろ。 「信史、だったか。いいのか?」 「ノープロブレム。さっきの電撃だって、俺が……ってか、他人がいないと使えないんだろ? なら、俺を使えよ。損はさせないぜ」 「それはありがたいが……」 「ゼオン、おまえだって弟を殺してまで生き残りたくはねえだろ? じゃあ、俺と一緒にこんな殺し合いはぶち壊して、あのチューブ野郎に一泡吹かせてやろうぜ!」 「主催者に反抗する……そうだな、ガッシュの奴もそうするだろう。なら、オレも……」 「へっ、決まりだ! よろしくな、相棒!」 手を差し出す。 ゼオンは戸惑ったように俺の手を見つめていたが、やがてしっかりと握り返してきた。 「相棒……パートナー、か」 「あいにく俺には電撃を出したりはできねえが、運動神経には自信があるぜ」 へへっ、なんだよ。案外幸先いいじゃねえか。 自分で言うのもなんだが俺とゼオンはいいコンビだと思う。 俺は運動神経に自信があるし、多少は頭も回る。ゼオンは電撃が出せるし、マントを変形させて盾にできる。 俺がゼオンを抱えて走って、ゼオンが電撃で敵を倒す……おっ、これって最強コンビじゃね? ゼオンと一緒にガッシュ、秋也、杉村を探して、他にも殺し合いなんてしたくねえってやつを集めるんだ。 54人もいれば、誰か一人くらいはこのうっおとしい首輪を外せる奴だっているだろ。 首輪さえ外れちまえばこっちのもんだ。あのスカしたチューブ野郎の横っ面に強烈なパンチをお見舞いしてやるぜ! ……って、いてて。おいゼオン。もういいから手を放してくれ。 こいつ、とんでもない馬鹿力だ。握手ってのはそんなに力を込めないでいいんだよ! 「信史……すまない」 「いや、いいから。わかったから手を放せって。お前の力はわかったから」 「いいや……わかってない。わかってないよ、信史」 「え?」 「ザケル」 がっ……! な……何……!? 「別にオレは、本がなくても術は使えるんだ。さっきお前に読んでもらったのは、パートナーでもない他人が本当に読めるのかを確かめるためでな」 ゼオンが何か言っている。だが、声が耳に入ってきても意味が理解できない。 全身が焼けるように痛い。なんなんだよ、これは……!? 「だが、やはり本を使った方が威力は出るようだな。自力で術を使えば、心の力もオレ自身のものを消費する……注意が必要だ」 何を……どういうことなんだよ、ゼオン……! くそ……身体が、動かねえ……! 言葉が出ねえ……! 「おまえに言ったことは嘘ではない。ガッシュを守る、オレの目的はそれだけなんだ。ザケル」 ぐああああっ……! 「あいつはやさしいからな。この殺し合いの中で、他人を殺すことなんてできるわけがない。ザケル」 や、やめ……! 「だからオレが代わりに殺す。あいつを傷つける者、傷つけるかもしれない者、すべてを……ザケル 」 ぎっががっ……! や、止めてくれ、ゼオン……! 「おまえには本当にすまないと思っている。おまえは多分、良い奴なんだろう。それははっきりとわかっている。ザケル」 ぎゃ、ぐがああああぎいいぇあああっ! 「だが、駄目なんだ。おまえがガッシュと会えば、あいつはおまえをも守ろうとするだろう。自分の身を犠牲にしてでも……ザケル」 やめ、助け……ぃぃいがあああっ! 「あいつは自分が死んでも他人を守ろうとする奴なんだ。それ自体は高潔な志だが……そんなことは、俺が絶対にさせない。ザケル」 ああぁぁぎゃあああぁぁっ! 「幸い、ここに清麿はいない。パートナーを奪う訳にはいかないからな。他の魔物の子には悪いが、ガッシュのために死んでもらう。ザケル」 あ、あ……頭が……いてえ、いてえよ……! 「そして、オレとガッシュが生き残って。最後にオレが死ねばガッシュが優勝ってことだ。あいつは元の世界に帰れる。ザケル」 ぐ、あ……ぎぃいやああああああああああ! 「恨んでくれていい。オレの個人的な理由でおまえやおまえの友を殺すと言っているのだからな。ザケル」 …………ぁ………… 何も、見えなく 秋也、 杉、村 叔父、さん ゼオン…… ゆ か ………… 「……ザケルを10発も食らって、まだ息があるか。やはり大幅に威力が制限されているな」 このオレの、「雷帝」の雷をもってすれば、魔物の子のような耐久力のないただの人間など3発も当てれば消し炭になるはずだ。 なのに、三村信史は全身黒焦げになったもののまだ生きている。 オレが自分の力で放つザケルは、三村信史に本を読んでもらって放ったザケルに比べればまさに児戯のようなものだった。 魔本の役目は威力増加と負担軽減、というのはもはや疑いないな。 が、完全に自分のタイミングで術が使えるというのはアドバンテージと考えていいだろう。 デュフォーや清麿クラスのパートナーでなければ、オレにとっては逆に足手まといとなるからだ。 「心の力の消費……ふん、魔界にいた頃は当然だったが。久々に味わうと中々うっとおしいものだな」 なんにせよ、これでほぼオレにかけられた力の制限は理解できた。 これなら戦闘中に限界を見誤るということはないだろう。 「……すまんな、信史」 そして、オレはいまも足元で弱々しい呼吸をつづける三村信史へと謝罪した。 術の実験台にした、哀れな人間。 人間を殺すのは初めてだ。だが、思いのほか俺は冷静だ……クールだ。 ガッシュを守る、という強い決意があるからだろうか? 仮に、ガッシュのパートナーである清麿と、オレのパートナーのデュフォーが参加させられていれば、オレも違う方法をとっただろう。 だが、その二人はいない。嫌な言い方だが、俺が躊躇う相手はガッシュ以外にはいないのだ。 信史、おまえの言葉を信じなかったわけではない。 だが主催者とは、、いまだ人間界で戦っているはずのガッシュや、すでに敗北し魔界に帰り、あまつさえ身体を失っていたこのオレさえも連れてくることができる奴なのだ。 そんなことは、父上……魔界の王でも不可能だろう。それだけ得体のしれない相手なんだ。 正直なところ、おまえのプランは達成できない可能性の方が高いんだ、信史。 そんなあやふやな可能性にガッシュの……オレの弟の命を賭けるわけにはいかない。 もちろんあいつは、ガッシュはこんなオレを認めないだろう。だがそれでいい。 オレは参加者を殺し続け、あいつの敵を減らす。 そして残ったのがガッシュとその仲間だけになったら、オレがその仲間を殺す。 あるいは、そいつらが主催者を倒せるほどに強力な力を持っているのなら、オレがガッシュに討たれればいい。 オレのこの雷の力、すべてあいつに渡して……凶悪な殺戮者を倒したあいつは、仲間から信頼されることだろう。 結果としてガッシュが助かるのなら、オレは死んだっていいんだ。 「苦しいか、信史。そうだろうな……いま、楽にしてやるよ」 信史、おまえに罪がないことは分かっている。 それでも、俺はおまえを殺す。 オレはもう一度、修羅になる。 ガッシュを憎み、殺そうとしていたあの頃のオレに。 そのために……そのための覚悟を手に入れるために。 さよならだ、信史。 「ザケルガ」 &color(red){【三村信史@バトル・ロワイアル 死亡】} 【D-3/市街地/一日目・深夜】 【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!!】 [状態]:疲労(小) [装備]:魔本@金色のガッシュ!!、ゼオンのマント@金色のガッシュ!! [道具]:基本支給品×2、不明支給品×2(ゼオン、三村(武器ではない)) [思考・状況] 基本行動方針:何としてもガッシュを生還させる 1:ガッシュを優勝させるため、他のすべての参加者を殺す 2:ガッシュとその仲間が主催者に勝てそうなら、自らガッシュに討たれる [備考] ※自身にかけられた制限をほぼ完璧に把握しました。 ※魔界に帰った後からの参加。 「あわわわ……!」 馬鹿と煙は高いところが好き、と言うが。 レオパルドン・パピプリオもまたその例に漏れず高いところが好きだった。 遊園地で身長制限に引っ掛かったときマジギレするくらいには。 まあ、パピプリオがここ桜見タワーにいるのは自身の意志ではなく、単にここに転送されてきたというだけだったが。 「あの電撃……! 知ってる、あれはガッシュだ、ガッシュの奴の電撃だ……!」 そして、彼は臆病である。パートナーであるルーパーもいない。 一人であることに怯える自分をごまかすように、パピプリオはタワーに備え付けてあった望遠鏡で近くに誰かいないか必死に探していた。 そして、北を向いた一瞬。 見覚えのある電撃が炸裂し、彼の目を引いた。 ガッシュは何よりも他人が傷つくことを嫌う、そういう性格をしている。パピプリオは一度ガッシュと戦ったことがあるからそれを知っていた。 だからガッシュと合流すれば、自分を守ってくれるだろう。 そう思って、うきうきと彼の姿を探してみた。 しかし場所が悪かった。 その望遠鏡からはガッシュと話している人間の姿しか確認できず、肝心のガッシュは建物の陰に隠れていて見えなかった。 もうちょっとこっち来いよ……と、念じていたら、出てきたのはガッシュではなくあの電撃だった。 そして、パピプリオは見た。 10度に渡る電撃が人間の体を執拗に焼き尽くす瞬間。疑いようもない圧倒的な殺意、その顕現を。 とどめとばかりに放たれた一際大きい電撃は、すでにほぼ炭化していた人間の身体を跡形なく焼き尽くし……根が臆病なパピプリオが見ていられたのは、そこまでだった。 「が、ガッシュの奴も殺し合いするっていうのかよぅ……!」 頼れると思った奴が殺し合いに乗っていた。 その事実は、パピプリオを恐慌に走らせるには十分に過ぎた。 「伝えなきゃ……あいつ、ティオに、ガッシュが危ないってことを伝えなきゃ!」 パピプリオは走り出す。 彼が知っている魔物の子はガッシュを除けば遊園地で戦ったティオだけだ。 パピプリオの不幸は、ゼオン・ベルの名を知らなかったことだろう。 彼がゼオンと出会うのは、彼の時間からはもう少し先……ファウードの事件のときであり、ここにいるパピプリオはゼオンと会ったことがない。 だからこそ、電撃使いがガッシュの他にもう一人いると、考えることができなかったのである。 【E-4/桜見タワー/一日目・深夜】 【レオパルドン・パピプリオ@金色のガッシュ!!】 [状態]:健康、恐慌状態 [装備]:魔本@金色のガッシュ!! [道具]:基本支給品一式、不明支給品 [思考・状況] 基本行動方針:死にたくない、ルーパーの所に帰りたい 1:ガッシュが人を殺しちゃった! 2:ティオを探してガッシュのことを伝える。あと守ってもらいたい [備考] ※19巻、レインと戦った直後から参加。 |[[Reanimate/再活性]]|投下順|[[鎌鼬の夜]]| |[[Reanimate/再活性]]|時系列順|[[鎌鼬の夜]]| |&color(aqua){GAME START}|ゼオン・ベル|[[]]| |&color(aqua){GAME START}|レオパルドン・パピプリオ|[[]]| |&color(aqua){GAME START}|三村信史|&color(red){GAME OVER}| ----