無題①パート2

ケーキをごちそうになってから約2ヶ月、12月31日の夜のこと。
ピンポーン、青野家玄関の呼び鈴がなり、月音の母かすみがドアを開けた。
「はーい、あら橙条さん!いらっしゃい!」
「こんばんは、今日はお呼び頂いてありがとうございます」
礼儀正しく瑠妃は頭を下げる。
「そんなにかしこまらなくていいのよ、さ、あがってあがって」
「はい、お邪魔します」

二人して廊下を歩きながらかすみが口を開く。
「月音今着替えてるから、橙条さんも準備しましょうか」
「本当によろしいんですか?お母さまのをお借りしても…」
「もちろんよ、気に入ってくれるかわからないけど…月音はお父さんの部屋で着つけしてるから、月音の部屋を借りましょう」
今日瑠妃は青野家の年越しのパーティーに呼ばれていた。
父と母がパーティー準備をしている間に、若い者同士月音と二人で初詣に行って来てはどうか、というプランである。
着物を持ち合わせていません、と瑠妃が残念そうに言うとかすみは自分のを貸すと申し出てくれ、今に至る。

「今着物持ってくるからちょっと待っててね」
月音の部屋で待っている瑠妃はする事もなく辺りを見回してみる。
と、ベッドの下に何か四角い物の角が見えた。
いけないと思いつつ瑠妃は気になって手に取ってみる。少し厚い本だ。まだ何冊かベッド下に隠されてある。
「…あ…これって…」
いわゆるソレ系の本だった。手に取った本は軽いSM系の内容らしい。
瑠妃はこの系統の本を見るのは初めてだった。
自然と胸が高鳴り頭の中で自分と月音に置き換えた妄想が自然と出来ていった…

パラパラとSM雑誌を流し読みしていてふと瑠妃に疑問が浮かび上がった。
(月音さんって……Sかしら?それとも…M…?)
こういう本に目を通しているのだ、どちらかの気があるのだろう。
だが瑠妃がどうひいき目に見ても、月音はSに見えない。きっとMだろうと自然解釈した。
(月音さん…こういうのが好きなのかな?)
瑠妃が今開いているページには、女性が男性を激しく攻め立てている様子が載っている。
写真の男女を月音と自分に脳内変換してみるが、あまりに刺激が強く、恥ずかしすぎて途中で妄想が途切れた。
(月音さんが喜んでくれるなら……あぁでも私こんなの…それにもし万が一嫌われたりしたら…)
頭の中で思考がごちゃごちゃになる。とそこへ…コンコン。
ノックの音にビクゥッ!っと思考が止まり、反射的に開いていた本を急いで閉じて戻した。
「遅くなってごめんなさいね橙条さん、ほらこれよ、どうかしら?」

『瑠妃さん着物姿も似合うなぁ…いつもの服も好きだけど、何だか新鮮な感じがするよ』
「ホントですか…?つ、月音さんもよく似合ってますよ」
母が用意してくれた着物は綺麗なオレンジ色で、瑠妃も一目で気に入った。
お参りに向かう神社は月音の家からずいぶんと近い所らしく、徒歩で数分ほどだが、緊張のためか瑠妃には距離と時間が長く感じた。
月音を見る度に胸の鼓動が早くなる。さっきの本の事が頭から離れない。
ちょっと油断すると、本の通り自分が月音を攻める光景が浮かんでしまう。
『ほら、あっちだよ瑠妃さん』
月音が指さす先にはもう既にたくさんの人がざわついて集まっている。
「人が多くてはぐれちゃいそうですね」
『う~ん…はぐれちゃうといけないし、手つなごっか』
「は、はい…」
手を差し出す月音と、ぎこちなく手を握り返す瑠妃。
嬉しい申し出だったが余計に冷静でいられなくなった。
手をつないでいる月音にも心拍が伝わりそうな気さえする。
心を落ち着かせるヒマもなく二人は人混みに入っていった…
何度も人波にのまれながらも、月音と瑠妃はどうにかさい銭箱の前までたどり着く事が出来た。
『ハァ…ハァ…る、瑠妃さん……大丈夫?』
「はい…なんとか……後ろも大分つかえてるみたいですね」
『ササッとお参りして帰ろうか。そろそろ家の方も準備出来てるだろうし』

はい、と瑠妃の返事と同時に二人はさい銭を入れ、それぞれの新年の願いを込めてお参りをした。


帰り道、参拝者らしき車が幾度か行き来している。
人混みを引き返す際にまたつないだ手が、今もまだ離れていない。
『新年のお参り…瑠妃さんはなんてお願いしたの?』
「私のお願いは…萌香さんや紫ちゃん、みんなと楽しく過ごせますようにって」
『あ、オレと一緒!みんな今何してるかなぁ…』
「きっとみんなご家族と楽しく過ごされてますよ。…私は…もう家族居ませんから一人ぼっちですけど…」
目には見えないが空気が一変して重く悲しくなる。
『……ねぇ瑠妃さん。瑠妃さんさえ良ければウチの家族にならない?』
「?ウチの家族って…?」
『あ、いやそんな難しいことじゃなくてさ、えっとその…』後半になるにつれて口調がもごもごして聞き取れなくなった。
最終的に黙り込んだ月音の顔を見やり、瑠妃は言葉の意味を考えてみる。
(ウチの…家族…………。…………!!)
難しく考えず言葉のまま捉えるなら…まさか。
「つ、月音さん…それってもしかして…」
それ以上追及も出来ず、ただ互いの手の握り合う力が強くなった。



『ふぅ……もう食べらんないや』
「信じられない量でしたね…でもすごく美味しかったです」
元の服に着替えも終え、月音の部屋でベッドに腰掛けて語らう。
帰宅した二人を出迎えたのは、かすみが腕を振るいに振るって作りあげた手料理の大群だった。
月音、瑠妃と両親が4人がかりで食べても一向に減らない量で、「ちょっと作りすぎちゃったわね」との母の弁に皆が頷きたくなったほどだ。
『お客さんが来ると張り切りすぎるんだよな母さんは…響ちゃんなんかも顔真っ青になったりしてさ。』
「なんだか尊敬します。大らかというかなんというか…私もあんなお母さんになりたいです」
『瑠妃さんがお母さんか…』
自分視点のかすみを瑠妃に重ねて想像してみる。
『うーん…なんだか想像出来ないや。…ってオレと瑠妃さんが親子じゃ想像出来なくて当たり前だよね』
アハハ…と笑う月音に瑠妃が問いかける。
「じゃあ…私たちの夫婦姿は想像できますか?」
瑠妃の目は真剣だった。
「月音さん、さっき言ってたウチの家族に、というのは私への告白…プロポーズですか?」
瑠妃を見据えて真剣な顔で月音は返答する。
『…うん。まだまだ先の話になりそうだけどいつかきっと…』
「…わかりました。その日が来るのをお待ちしてま…」
そこまで言いかけて突然SM本の事を思い出した。
M(推定)の月音は、待っているだけの女性より、猛烈にアタックして攻めに回る女性の方が好きなんじゃないか?
幸いそういう手本になりそうな人物には一人心当たりがある。ここは積極的に行こう。
『瑠妃さん…どうかした?』
(落ち着いて…落ち着いて…よしっ!)「つ…月音さーーんっ!」
勇気を振り絞りながら瑠妃は、自分のキャラに合わないと自覚しながらも某サキュバスのごとく月音に飛びつくのだった……

『えぇっ!?ちょ…瑠妃さん!?』
不意に抱き倒されて月音はパニック状態に陥った。
某サキュバスならともかくとして、まさか瑠妃がこんな行動を取るとは……かと言って以前のように強引なわけでもないので、なんというか可愛いらしさを感じた。
「月音さん…月音さんっ……」
ギュウウッと抱きつく瑠妃の力が少しずつ強くなる。
『瑠妃さん…そんなにくっつくと…胸が当たって……』
「いいんです!月音さんにならこれくらい…!」
今度は身を乗り出して月音の頭に抱きかかった。瑠妃の胸に月音の顔がめり込む。逃げようにも押し倒されている状態なので逃げ道がない。
『んむぅっ!胸が!胸がーーっ!』
「月音さん…どうです?気持ちいいですか?」
『むぐぐ…ん…!』
「あっ…そんなに暴れられると…何だか私…」
瑠妃が腕を離し、体を起こした。解放された月音は呼吸が出来ていなかったのか息を荒げている。
「なんだか暑くなってきましたね、月音さん」
胸部のファスナーを降ろし、首筋のヒモをほどく。パサッと音と共に瑠妃の服が脱げ落ちた。上半身が露わになるが、腰の部分でかろうじて支えているため下半身には影響は出てない。
ようやく呼吸が整った月音の目が瑠妃の裸体(上半身だけだが)に釘付けになった。
真っ白な肌に、くるむにはわずかに一歩ゆずるが十分に豊満な乳房、その頂点の綺麗な桃色をした突起。そして今スカート部分を支えている、くびれた腰付き。
魔法など使わずともこの身体で人を簡単に魅了出来そうな気さえしてきた。
「月音さん……今度は直接行きますよ」
瑠妃の腕が素早く月音の頭部に回り、そのまま顔を引き寄せつつ体ごと倒れ込む。
『うわっ!』
瑠妃の身体に魅入っていたせいか、振りほどく間もなくまたも抱き包まれて呼吸をほぼ封じられてしまった。
『瑠妃さ…苦し……』
谷間の辺りで必死に訴えるが、瑠妃には聞こえていないらしい。
瑠妃も瑠妃なりに月音に満足してもらおうと必死になっているのだ。
しかし胸の感触を直に味わえるのは確かに嬉しいが、命の危機となればさすがに楽しんでばかりはいられない。
(死…死ぬ…ぅ…こう…なったら…ごめん瑠妃さん!)
月音は両腕に最低限の力を込めて瑠妃を突き放した。
吹っ飛ばされた瑠妃がベッドそばの壁に激突し、ドーーーン!!大騒音が響く。瑠妃は力無くベッドに落ちた。
十分加減したつもりだったが、バンパイアともなると、危機的状況で女性を優しく突き放すなど至難であった。
『る、瑠妃さーん!』
呼吸を整えつつ、ベッドにうつ伏せに倒れた瑠妃のそばへ寄る。
(良かった…気を失ってるだけだ。ケガも特に……わわっ!)
外傷がないか確認のため身体を仰向けにひっくり返したが、胸を直視してしまい気恥ずかしくて慌てて目を逸らす。
(って、ちゃんと確かめないと…ダメだよな…)
そーっと視線を戻し、ササッとケガがないのを確認する。そしてまたすぐ視線を外す。
(…これで一安心…。…………………)ダメだダメだ!と思いつつも目が勝手に瑠妃の方へ向かう。(………普段あんまり気にしなかったけど……瑠妃さんの……大きいな…)
ふと思えばさっきまで呼吸困難に陥ってばかりでロクに触れてない事に気づく。
(……ちょっとだけなら…いいかな…)月音の手が瑠妃の胸へと伸びていった…
【一方その頃 青野家玄関】
「さっきの音…月音の部屋からかしら?」
ピンポーン
「はーい!あら、いらっしゃい赤夜さん!」
「こんばんは。せっかくお呼び頂いたのに遅くなってすみません」
「そんなのいいのよ、急に呼んだ私が悪いんだから…お料理は無くなっちゃったけどせめて月音に会っていってね」

「んっ…」片方の胸に触れた時、瑠妃がわずかに反応したように見えた。
しばらく手を止めていたが、まだ目覚める気配が無いとわかると、もう片方の手も胸を掴んだ。
(もっとやっても…大丈夫かな)
起こさないようゆっくりと胸を揉みしだいてみた。
先ほどまで顔面で味わった弾力は今、月音の手で弄ばれている。
(柔らかくて…温かくて…それになんか…)
瑠妃の様子が変わらないのを確認し、片方の手を離す。
(瑠妃さんの…『美味しそう』っていうのかな…これって…)
しばし見とれた後、月音は無防備な方の胸に食らいついた。
ピンク色の先端に吸い付き、舐めまわす。
当然母乳が出るはずがないので明確な味はない。強いて言えば、瑠妃も激しく動いていたので汗の味だろうか。
「ん………私……いつの間に気を失っ……って月音さん!?」
舌の感触が効いたか、瑠妃が目覚めた。が、目覚めた事に気づいても月音の手と舌は止まらない。
「やっ…月音さんそこはダメです!は…ぁ…まだ…出ませんよ……」
『…瑠妃さん…出るようになったらまたしていいの?』
「っ…そ…それは……きゃっ!」
瑠妃が戸惑っているスキに片手の指が下着の内の秘部に侵入する。
「はぁっ……ん…月…さ…っ…ズルいです…」
上下同時の攻めに瑠妃は喋る力すら奪われていく。
上は舐めまわされ、下はかきまわされ、そうしたまま数分が過ぎる。
「月…音さん…私…もう……限界です…」
『…瑠妃さん…』「…は…ぁ…っ…あ…あぁぁっ!」
フッと瑠妃の体から力が抜け落ち、秘部から愛液が流れ落ちる。
『瑠妃さん…すごいや。ほら、瑠妃さんのがこんなに…』
愛液のかかった手を瑠妃に見せる。
「ハァッ…ハァ…月音さん…何もそんなの見せなくたって…フフッ」
『ハハハッ…』
コンコン!ガチャッ
「こんばんはー!明けましておめでとう月……音……」
『も…萌香さん……!』
2人の、いや3人の時間が凍った。
「待って萌香さん…あの…これは…」
「月音の……エッチ!バカァァァァァッ!!」

その夜月音は激怒した萌香に血を吸い尽くされたとか…

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最終更新:2008年04月06日 10:34
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