三日目-2
さぁ! ついにやって来たわ!この修学旅行のメインイベント!今、日本で愛されているキャラクター達の集まった夢のテーマパークよ!デートスポットとしても有名で、何度も雑誌に特集が組まれているのだわ。まずはクラスで記念撮影。センターポジションを取ろうとしたベジータが仗助君にぶっ飛ばされたり、水銀燈が私に胸を強調させるポーズをとらせようとして私がぶち切れたりと、てんやわんやの撮影会だった。 その後に梅岡先生からフリーパスとミールクーポンを受け取る。これが無いと園内で過ごせないから、無くさないようにしないと。そしてその後は諸連絡。先生が注意事項を述べているが、もはや誰も聞いてない。完全に浮かれ切ってるわね。ベジータ「いよっしゃあああああ!! 今日はとことん遊びつくしてやるぜぇぇぇ!」ウルージ「待ちなされッ!」ベジータ「うげっ!」ウルージ「他のお客様に迷惑であろう」ベジータ「へいへ~い……」笹塚「はは……」火の玉と化したベジータは、唸るようなダッシュでゲートをくぐろうとしていた……が、ウルージ君に首根っこを引っつかまれていた。笹塚君がそれを見て苦笑している。ロッククライムの時といい、ベジータは首をつかまれてばかりだ。仗助「おーい、人が多いな。はぐれないようにしようぜ」薔「……うん」仗助「グレート……」そう言って仗助君の腕にだっこちゃん人形の様にしっかりと抱きついている薔薇水晶。私も人のことを言えた物じゃあないけれど……なんというか甘甘だ。
翠「さぁさぁベジータじゃないですけど、翠星石たちも遊びつくすですよぉー!」金「おー!」苺「なのー!」蒼「あははは。さ、僕達も行こうか」雪「私は……オススメグルメを食べたいですね……ジュルリ」蒼「真紅がいなくて大丈夫かな……はぁ」拳を上げて意気込んでいるのは翠星石や二人のお子様たち。『猛獣』雪華綺晶はさっそくマップを開いてレストランの目星をつけているようだ。蒼星石はみんなをまとめきれるかしら……銀「それじゃ真紅ぅ……」紅「何?」銀「ま、楽しんできなさい」紅「……分かってるわよ」銀「そ、じゃあねぇ」水銀燈たちもひらりと手を振ってゲートをくぐっていった。さて、私達も時間がもったいないわ。行きましょ。紅「ジュン、今日は沢山楽しみましょうね」ジュン「ん、そうだな」私は水銀燈の(余計な)気遣いのお陰でジュンと二人で過ごす事に。友達には気を遣わないで心置きなく楽しんできなさぁい……と言ってくれた。ありがたくその気遣いを受けた私達は、手を繋ぎながらエントランスゲートをくぐり、中へと入っていく。園内に入ると、まずは着ぐるみの洗礼を受ける。さすがにくんくんは居ないわね……
ジュン「なあ、まずはどこに行こうか?」ジュンがマップを広げながら聞いてきた。紅「この、『ホワイトホールタワー』がいいわ」ジュン「ここから近いし、それにするか」私の提案を二つ返事で快諾したジュンと一緒に『ホワイトホールタワー』へと足を運ぶ。向かっている途中でも、さまざまなアトラクションに私達は目を奪われる。どれもこれもとても面白そうなアトラクションばかりだ。紅「ああ! どれもこれも……一日じゃあ足りないわね」ジュン「『ルイーズマンション』なんてどうだ? あっ、怖いのは駄目だったな。アハハハハ!」紅「……」ジュン「いてっ! ごめん!ごめんなさい!だからもう叩くのはやめて!」紅「余計な事は言わない事よ」ジュン「……はい」『ホワイトホールタワー』の前は開園直後なのか、比較的人は少なかった。ジュン「ほら、パスを取ってきたぞ。これですぐに入れるな」紅「あら、気が利くわね。ありがと」いつの間にやら、ジュンがパスを二枚買ってきてくれていた。係員にパスを見せ、絹の様に真っ白な塔の中へと入る。ジュン「へぇー……『心臓の弱い方はご遠慮下さい』だってさ」
係員「では、出発しまーす」
ゴゴゴゴと音を立ててコースターが動き出す。私はしっかりと前に据え付けられてあるバーを掴み、これから来るであろうあらゆる恐怖に備える。隣を見ると、ジュンもバーをがっちりと掴んでいた。ふふ、似たもの同士ね。コースターはどんどん上に昇っていく。そして、急降下。内臓が口の方に引っ張られるのを感じた。
ジュン「うおっ!?」紅「ひっ!」
ビュンビュンと激しく加速していくコースター。私はあまりのスピードに目を瞑ってしまう。
紅「きゃあああああああっ!」ジュン「うおおおおおおおッ!」
ああっ!次は三連ループ! 私の髪やらいろんなものが揉みくちゃになるのが分かる。そして大きく一回転。うっぷ……内臓がかき回される。しかしまだまだコースターは止まる気配を見せない。
ジュン「ふああああああああああああ!!」紅「いやああああああッ!」
私は最初にこれを選んだことを後悔しながら、次はもっとほのぼのしたアトラクションに行こうと心の中で誓った。ああ、早く終わって頂戴!
プシューようやく終わったようね。うぅ……クラクラするのだわ……。私はフラフラと揺れる足に鞭をうち、アトラクションから出る。私とジュンはベンチを見つけ、やっとこさそれに座った。ああ疲れた。紅「はぁ、あれは最後の方にしたほうがよかったわね。もう、髪がぐちゃぐちゃなのだわ」ジュン「ああ……そうだったな」ようやく、人心地つけたわね。ジュンも元々ボサボサの髪がさらにボサボサになっている。まるで浮浪者よ……おっと、彼氏にそれは失礼ね。さしあたっては、この髪を何とかしないといけないわ。私はポーチから櫛を取り出し、ジュンに手渡す。紅「ジュン、髪を梳いて頂戴」ジュン「はぁ……?」紅「いいから早くしなさい」
ジュンは仕方ないなぁ……と言いながらも私の手から櫛を取り、私の背後に回る。そしてその優しい手つきで私の金色の髪を梳いていく。さらさらとジュンの指が、櫛が私の髪を元に戻していく。ああ、良い気持ちね。紅茶でもあったらベストなのだけど……あれ?だんだん眠たくなってきた……。ジュン「おい、終わったぞ」紅「え? ……あら、そう。ありがとう」ジュン「何だ、寝そうだったのか?」うぅ~……ジュンの言う通り、どうやらまどろんでしまっていたようだ。まだまだ一日はこれからだと言うのに、私ったらもう……。私はガサガサとポケットからマップを出し、次に行く場所を決める事にした。紅「どこがいいかしら? さっきは激しかったから、ゆったりしたアトラクションがいいわ」ジュン「……実は僕、行って見たいところがあったんだ。そこでいいか?」ジュンの行って見たいところ、一体どんなアトラクションかしら。ちょっと興味が出てきたわ。紅「いいわ。そこにしましょ」ジュン「そんじゃ、行きますか」二人で手を繋いで歩く。ジュンの柔らかくて暖かい手の感触が心地良い。手首につけた勾玉が太陽の光に反射してキラキラと光る。余談だけど、ジュンも勾玉を着けてきてくれていた。散々みんなにからかわれたのは、また別の話よ。
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