「なぁ、翠星石…」
「あむっ…なんですか?はむっ…ジュン」
「何で僕が楽しみにとって置いたプリンを食べてる?」
「あぁ、そんなことですか」
少しムッとした僕の顔の前に、翠星石のひとさし指が向けられる。
「昔っから言ってるじゃないですか。
おめぇのものは翠星石のもの。翠星石のものは翠星石のものって」
女ジャイアンめ。そんな言葉を喉の奥に封じ込めた。
…どうにも悔しくなった僕は翠星石を少しからかうことにした。
「……そうだな」
「!? きょ、今日は随分物分かりが良いですね…
いつもだったらもっと怒るですよ?」
翠星石の訝しそうな瞳を見据えながら、僕の口は心にも無い戯言を紡いでゆく。
「だって正しいじゃないか。僕のものは翠星石のもの…
僕の心も、身体も、全部お前のものだよ」
「…ジュン!?ややややや、やっぱり今日のおめぇは変ですぅ!
熱でも有るんじゃないですか!?おでこ出すですっ」
翠星石のおでこと僕のおでこが触れ合う。想定の範囲外だ。
翠星石の唇までわずか数cm。──冷静だった僕の理性が決壊した。
「翠星石」
「何ですか?ジュ──っ!?」
ああ、甘いな。プリンのせいか?
『プリン、返してもらうぞ』とでも言わんばかりに翠星石の口内を侵す。
僕の唾液と翠星石の唾液が絡み合う。
僕の舌と翠星石の舌が絡み合う。
僕らの口が繋がった…そんな錯覚さえ覚える程だった。
翠星石が積極的になってきたところで僕は後ろに引いた。
「ジュン…何でやめるですかぁ…?」
切なげな、とろんとした瞳。いかんいかん。翠星石のペースに持っていかれる。
「僕のもの…いや、僕はお前のものだ。──お前はどうしたい?」
「…すっ、翠星石は……ジュンが欲しい…ですぅ…
心も…身体も…全部よこせですぅ……!」
「そうか。…じゃあ、貰ってくれ」
優しく、トランプが倒れるように、僕は翠星石を押し倒した。
僕はお前のもの。でも同時に、お前は僕のものだ───。