紅「主文。被告・翠星石、被告・蒼星石。両名を、懲役3年から5年の不定期刑に処する。」
三●茶▲駅で起きた傷害致死事件。
加害者の4人のうち主犯格の2人が逮捕・起訴され、地裁での判決が言い渡されている。
蒼「……申し訳なく思います」
翠「自分という人間を根本から変えてゆきたいですぅ」
紅「……(両名の過剰防衛主張、淡々とした態度・言動……真に反省しているのかしら……?)」
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
おう。俺はベジータ。フリーザ土建で働いている大工だ。
あいつ? あいつは俺のダチの笹塚ってんだ。
郵便局……ああそうか、今日は給料日だったな。
笹塚はいつも、給料を貰ったらその足でああして郵便局に行くんだ。
口さがない同僚たちは、酔った勢いに任せて「貯金が趣味のしみったれ」とか言うがな。
あいつにとっちゃ、まるでお構いなしさ。
え? 何でって?
……まぁ、俺しか知らない事だがな。
……実は、あいつは交通事故で人一人を死なせているんだ。
あの頃は、笹塚は配達員をやっていたんだ。
雨の鬱陶しい日だった……あいつは配達帰りで、疲れていたんだ。
だから……横断歩道の人に気がつかなかった。ブレーキも……間に合わなかった。
―――――――――――――――
銀「人殺し! ジュンを返して! ジュンを……返してよぉ……!」
笹「奥さん……申し訳ありません……本当に……申し訳ありません……!」
―――――――――――――――
笹塚の奴、被害者の奥さんの足許で、ただ泣きながら土下座してたよ……。
結局、あいつは執行猶予つきの実刑で済んだけどな……。
当然ながら仕事はクビになって、今の会社に来たんだ。
あいつ――人が変わったように生真面目になってな……。
ただひたすら働いてる。
そうして、給料を貰ったら、その足で郵便局に行って、
被害者の奥さんに仕送りをしているんだ。
損害賠償金は完済したんだがな……
「償いきれるはずも無いけど、せめてもの罪滅ぼしに……」って言って、今も続けているんだ。
ん……誰か来たようだ。……笹塚?
笹「ベジータ……これ……これ……うっ……うっ……」
泣きながら人の部屋に飛び込んでくるなんて、なにがあったんだ?
? その手に持っているのは……手紙か?
ちょっと見せろ。
……差出人が……水銀燈?
何と、あの事故の被害者の奥さんじゃないか!
あの事故から七年になるが……手紙が来るのは初めてのはずだ。
……見せてもらうぞ。
―――――――――――――――
謹啓 笹塚様へ
初めてお手紙を差し上げます。お元気にしていらっしゃるでしょうか。
この七年間、毎月欠かさず仕送りを頂きまして有難う御座います。
貴方の優しさを、身に染みて感じております。
……つきましては、仕送りを終わりにして頂きたいと思い、筆を取りました。
私は自身の仕事で十分生活していけるだけの収入がありますし、
……何より、貴方の文字を見ることで、
主人のことを思い出すのが年々辛くなってきました。
……貴方は十分、償いをして頂いたと思っております。
ですからどうか、貴方ご自身の人生をもとに戻してあげて下さい。
どうかご自愛下さいませ。
謹白
―――――――――――――――
笹「あの人から……返事が……返事が……」
あいつは泣きじゃくるばかり。
――俺も、思わず叫んじまった。
「神様――!」……ってな。無神論者にして不信心者を自認する、この俺様が、だ。
これは――そうだろ? 笹塚は赦されたと、そう解釈していいんだろ?
放っといたら、また来月郵便局に仕送りに行くような、優しいあいつを――。
人ってなぁ、悲しい生き物だぜ。
こんなに優しいのに、ちょっとした過ちで、ちょっとしたすれ違いで、
傷つけあったり、庇いあったり――。
あれ、なんだか視界が滲んできやがったぜ……。
○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
雛「最後に、裁判長から被告に説諭があるのー」
紅「……私はあなたがたに、執行猶予の無い実刑判決を下したわ」
紅「それは何故? ……それは、あなたがたの反省が私たちの心に響かなかったからよ」
蒼「でも、反省はして――-」
紅「唐突だけどあなたたち、○だ×さ△の『償い』という歌を聴いたことがあるかしら?」
翠「『償い』……ですか?」
紅「この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、あなたがたの反省の弁が何故人の心を打たないか分かると思うわ」
紅「以上を以て、閉廷とする。」
~了~