昼過ぎ、僕は玄関で姉を見送っている。
「ごめんねJUMくん、お姉ちゃん今日から合宿で」
「いいからさっさと行けよ」
「それじゃ行ってきます。そうそう翠星石ちゃんに晩御飯は頼んでおいたから。あ!だからって下の世話は」
「とっとと行け、二度と帰ってくるな」
僕は勢いよくドアを閉めた。姉の眼鏡が割れた音がしたのは気のせいだろう。
(翠星石がウチにくるのか・・・随分久しぶりな気がするな)
翠星石は僕の幼なじみだ。そして僕の好きな女の子。勿論告白などしていない。
子どものころは素直な奴で優しかったが、今はそれが少し変わってしまった。口が悪くなったというか・・・とにかく顔をあわせれば罵られる毎日に僕は快感をおぼえ・・・もとい少々傷ついている。
「・・・取りあえず軽く部屋掃除しとくか」
やましい物があちこちに置いてあるわけではないが万が一と言うこともある、思春期に罪は無いのだ。
夕方、翠星石はJUMの家の前に立っていた。
(のりに言われて来てやっただけなんだから別にどうってことねえのです。別にあんなやつのこと好きでもなんでも・・・でももしかしたらあんなことやこんなことが・・・///)
待ってたよ翠星石、さあ僕の晩御飯になってくれ
まだ明るいのにダメですぅ///
「や、やめるです!!翠星石はそんなこと期待してねーですよ!!・・・まあJUMが相手ならちょっとぐらいは///」
突然ドアが開いた。
「さっきから玄関の前でなにをしている」
「な、なに見てるですか!!このエロ眼鏡!!」
「た、たまらん・・・じゃなくて自分の部屋の窓から見えたんだよ。見たくて見たわけじゃない」
「そ、そうですか。なら・・・まあ仕方ねーから許してやるです。とにかくさっさと家にいれるです!!」
「ああ、入ってくれ」
僕は彼女を家にあげる。
「早速で悪いんだがご飯作ってくれないか。起きてからなにも食ってないんだ」
「何もってもう6時ですよ?一体なにしてたですか?」
「昼前におきて部屋の掃除してたら案外時間がかかってな。なにせ僕のエロほ・・・参考書が多すぎてかたずけるのが大変だったんだ」
「普段だらしねーからそういうことになるんです。今から作ってやるからテレビでも見て待ってろですぅ」
「悪いな、そうさせてもらうよ」
僕はリビングのソファに座りテレビをつけた。特に見たい番組があるわけでもない。座ったらテレビをつけるのは癖みたいなもんだ。
(おっとトイレ行きたいのすっかり忘れてた)
座ったそばから立ち上がりトイレに向かう。
(な、なんだか背中に視線を感じるです。JUM、翠星石の料理姿にくぎづけになってるですね、仕方のねーやつなのです///)
ジャガイモを洗う翠星石は意識しまくりでガチガチだった。
蛇口から水が出ていないことにも気付いていない。
(今指なんか切ったらすっ飛んでくるにちげぇねーです。きっと・・・)
だいじょぶか!?血はこうやって止めるんだ!!
パクッ
ああん、舌動かすのやめるですぅ///
(なんてことが・・・///)
無意識の内にまだ洗いおわっていないジャガイモを切っていた。
妄想しながら上手く切れる筈もなく形はいびつになっていた。そして・・・
ザクッ
「っ!!ひいいぃ!!いてぇですぅ!!」
その時、さきほどの妄想が翠星石の頭をよぎった。
(これは神様がくれたチャンスに違いねえです!!)
「JUM!!血が出てるから・・・指舐めるですううぅぅ!!///」
翠星石は吠えた。吠えながら振り向いた。
だがそこにJUMはいなかった・・・
「・・・あれ?」
ガチャッ
「い、今指舐めろって言わなかったか!?」
JUMがリビングに飛び込んで来た。下半身は丸出しだ。
「な、なにやってるですかあああぁぁ!!!!」
綺麗に股間に膝がはいった。あまりの痛みにあれが潰れたかと思った。意識が飛びそうになるがなんとか耐える。
(これは痛い・・・だがそれがいい)
そんなことを考えている場合ではない。このままでは僕は変態の烙印をおされてしまう。
「わ、悪い!トイレに行ってたらおまえの叫び声が聞こえたから・・・」
「なんでもいいからそれ隠すですぅ!!///」
そう言われ、僕は寒そうにしているあれにようやく気付く。そうだ、ズボンをはかずに何を言っても説得力などあるわけがない。急いでズボンをはく。
「ああ、悪い悪い!!」
「おめえはとんでもない変態なのです!!」
「悪かったよ!!これからはソファに座っておとなしくしてるから許してくれよ!!な?」
「・・・次おかしな真似したら承知しねぇです」
僕はまだ痛みの残る股間をおさえながらおとなしくソファに座った。テレビがついたままになってるが内容は全く頭に入らない。
(そういえば今日翠星石はいつもより短いスカート、ということはさっきは生足が・・・みなぎってきたぜ)
ふと姉の言っていた言葉を思い出す。
「翠星石ちゃんてJUMくんのこと好きみたいよ。今日そんなことをボブから聞いたのぉ」
「くだらないこと言ってないでメシつくれ。だいたいボブって誰だよ。欧米か」
落ち着いたふりをしてはいたが、頭の中はカオスだった。
(なんだって!?翠星石が僕のことを好き!?なら両思いってことじゃ・・・
いや待て!!噂を信じちゃいけないってリンダも言ってたじゃないか!!というかリンダってなんだよ?欧米か!!)
(そういやそんなこともあったな。もしそれがほんとなら・・・この状況は好きだって言うチャンスじゃないのか?)
(は、はじめて見てしまったですぅ///そういえばさっきJUMのあれに翠星石の足が・・・みなぎってきたですぅ)
もはや料理どころではない。何をつくるつもりだったのかも忘れてしまった。
(ふ、ふたりっきりなんて今日を逃したらいつまたあるかわからねえです。・・・告白するなら今しかねえです!!///)
翠星石は血まみれのジャガイモを放り投げ、JUMのほうに向かって叫んだ。
「JUM!!」
「うおっ!!なんだよいきなり!?」
頑張るです、翠星石。きっと上手くいくです。
「その・・・翠星石はJUMのことが・・・」
そこまで言った時、テレビに映っているものに気付く。
「ほれほれここがいいのかお?」
「や、やめなさいよ!!///」
動きの止まった翠星石。僕はその視線の先に振り向き、瞬時に察知した。
(まずい、これは完璧なセクハラだ。訴えられたらまず勝ち目はない)
「ち、違う!!考え事してたから全然頭に入ってなかった!!ましておまえに見せて反応を楽しもうなんてこれっぽっちも思ってないぞ!!」
「・・・ないのです」
「え?」
「翠星石はJUMのことが好きなのです!!だから・・・JUMなら構わないのです」
そう言うと翠星石は僕の隣に座った。
「・・・翠星石じゃダメですか?」
「そんなことない!!僕も・・・お前に罵られると満ち足りた気持ちになるんだ。だからそばにいてほしいって・・・そう思うよ」
「・・・JUM」
彼女は目を閉じる。
(ここですべきことはキス以外に何もない。女の子に恥をかかせるわけにいかないよな)
彼女と僕の顔がゆっくり近づく・・・
「ただいまぁ、合宿先週だったみたい。お姉ちゃんうっかりしてたわ・・・ってあらぁ?」
密着しているふたり。血まみれのジャガイモ。テレビにうつる卑猥な番組。
「JUMくん!!・・・いったいどんなアブノーマルなプレイを・・・」
「ちょ、ねーよ!!」
僕たちのはじめてのキスはおあずけらしい。
でも構わない、ふたりはまだ始まったばかりなのだから。
fin