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皹はいつしか空間全体へと静かに侵蝕しやがて空間は破裂した。

外界へと戻った衝撃で真紅と雛苺の魔力はリセットされ先ほどまでいた荒れ果てた家の中に僕等は立っていた。


 「やれやれ、強い魔力の衝突を感じたから来てみれば、こんなことになっていたのか。」


暗闇の中で凛々しい声がする。振り返ると其処には蒼い退魔のコートを羽織った者がいた。

その瞳に僕は魅入ってしまった。左目は赤く、右目は緑色の綺麗なオッドアイ…。

まるで宝石のような双眸は真紅と雛苺を交互に見据えている。


 真紅「止めないで頂戴、蒼星石…この子は間違ってる!」

 雛苺「ちゃ、ちゃぁうのー!ヒナは間違ってないもん!真紅がいけないんだもん!!」

 蒼「二人とも落ち着いて、取り敢えず何があったのか順番に僕に説明してくれないか?」


二人にたたみ掛けられて蒼星石と呼ばれた退魔士はうんざりしていた。

よく見ると腰には巨大な鋏のようなものを佩びている。

結局第三者である僕が彼に事の成り行きを説明した、説明を聞いた蒼星石は難しい顔をしている。


 蒼「成る程ね…それで真紅は怒ったわけ、か…」

 真紅「ええ、この子には戦いというものがまだよく分かってないのだわ。だから私が教えてあげようと…」

 蒼「まぁ、待ってよ、雛苺の言うことは道理だ、君の行いは退魔士としては間違ってる。」


厳しい冷たく感じる目が真紅に向けられる、流石の真紅も何も言えないでいた。

今までのことを察するに蒼星石と言うのはどうやら『薔薇の退魔士』の中でもリーダー格のようだ。

雛苺が静かに正座して待っているのはその所為なのだろう…多分。


 蒼「けれども、人として間違っているのは確かに雛苺だ。僕等は退魔士である前に一人の人間なのだからね。」

 真紅「蒼星石…」


蒼星石の言葉を聞いて雛苺の顔は青ざめた。まるで今にも体罰を食らうかのような子供のような表情だった。

そんな彼女の頭に蒼星石は優しく手を乗せて諭すように言う。


 蒼「大丈夫、体罰なんて与えないよ。ただ、君は暫く真紅とコンビを組んで退魔業に臨んでくれ。」

 雛苺「うー…でもでもぉ…」

 蒼「今度、真紅の家に差し入れを持って行くからさ。」


笑顔で蒼星石は言う、その言葉の裏には有無を言わさないと表れている。

流石にそれを悟ったのか雛苺は返事と取れるか微妙なうぃーという言葉を返した。

取り敢えず、これで一件落着なのか…?


 蒼「ところで真紅…君が契約を結んだと聞いたんだけれど、その相手って彼なのかい?」

 真紅「ええ、彼の名前はジュン。知ってると思うけれども『魔眼の大盗賊』よ。」


行き成り自分のことを聞かれて僕は驚いたと同時にこの世界の心地のしない場所に自分が存在していることを思い知らされる。

蒼星石はじっと僕のことを見ていた、綺麗な顔立ちをしているなぁ…などと思っていた。

その目は雛苺とは異なって安らぎのようなものを僕に与えてくれた。


 蒼「成る程ね、中々凄いモノと契約したじゃないか。時を操る魔眼…か。」


気付けば蒼星石の顔がすぐ近くにあった。そのまま近づけば唇に触れてしまいそうなぐらい…。

一瞬、邪な考えが思い浮かんだが綺麗な顔立ちをしていても…。

その時、真紅は矢張り面白くなかった。蒼星石の雛苺に対する判断がじゃない。

蒼星石がジュンに興味を示したからでもない。そう、ジュンが蒼星石と密着するように近づいているのが気に食わないのだ。

この胸が締め付けられ釈然としない苛立ちは何なのだろうか…分からない。今まで経験したこともない感情だった。

その理解不能なところが更に真紅を苛立たせる。


 真紅「ジュン、貴方ちょっと近づき過ぎよ!!」


ジュンの背後から彼と蒼星石を引き剥がすように真紅は無理矢理彼の背中を掴む。

掴まれたジュンは抵抗すると真紅の手は離れバランスを崩し目の前にいる蒼星石にぶつかり二人はそのまま倒れた。


 
J「い、イテテ…と思ったら…な、何か柔らかい…?」


気付くとジュンは蒼星石を押し倒しその胸に顔を埋める形になっていた。蒼星石の顔が見る見るうちに赤くなって行く。


 蒼「う、うわぁぁ!?ちょ、ちょっと早く離れてくれないかな!?」

 J「え、あ、ゴメン!!」


僕はすぐに蒼星石から離れる、ちょっと待て。今の胸の膨らみは何だ?も、もしかして蒼星石って…。


 真紅「な、何をやってるのよジュン!」

 J「あれは不可抗力っていうかお前の所為だろうが!!というかもしかして蒼星石って…女…の子?」


真っ赤になった蒼星石は頷くだけだった。先ほどまでの凛々しい退魔士は赤くなって未だに座り込んでいる。

因みにまだ家の中だったので床は水浸しで僕も彼女もびしょ濡れになっていた。


 蒼「え、えっと…じゃあ僕はこれで!」


気まずくなった蒼星石は何かの空間術を使ってその場から消えた。


 雛苺「うゅー、『薔薇の退魔士』一の冷静な蒼星石があんなに取り乱したの初めて見るの。」

 真紅「確かにね、それはそうと雛苺、彼女も言っていたけれども貴女は暫く私のところで様子を見るのだわ。」

 雛苺「うー…わかったの…でもヒナは真紅には負けてないもん。」

 真紅「それは私だって同じなのだわ。」


再び殺伐とした空気が流れる、止めないと今にもまた先ほどの続きを始めそうな勢いだ。


 
J「す、ストップ!退魔士同士で争ったって意味ないだろう!さっさと帰るぞ!」


こうして真紅の家にまた一人の仲間(?)が増えたのだった。

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最終更新:2006年05月15日 20:33