Story  ID:JoOAT88i0 氏(233rd take)
いわずとも知れた人気ロックバンド、ローゼンメイデン。
彼女達は音楽だけではなく容姿もアイドル以上である。
メディアがそんな彼女達をほっておくわけがない。
今回はそんなローゼンメイデンから真紅、水銀燈、翠星石、雛苺の4名が映画に出ることになった。
もちろん映画で使用される曲は全編ローゼンメイデンが手がけた物である。

「うわぁ~~い、もうすぐ始まるのよぉ」
「……銀ちゃん変身する?」
「しないわよぉ~~」
「……じゃ、巨大化する?」
「だからぁ、変身もしないしぃ、大きくなったりしないわぁ~」
「……目からビームは?」
「でる訳ないじゃないぃ」
「……むむぅぅ?」
「ほら、うるさいわよ、もうすぐ試写が始まるわ」

                    ***

西暦も終わり、人類は新たな地として広大な宇宙で生活を始めた。
眼下には青い母なる惑星、地球が広がり、頭上には億千万もの小さな光が瞬く銀河が広がっていた。
その星明りとは別に1つの瞬きが始まると、数人から数百人の命の輝きが失われていった。
人類は地球で繰り広げてきた戦いをこの広大な宇宙でも同じように始めていた。


「こちらメルクール、ライナーぁ、どぉ?」
「こちらのレーダーにはまだ機影は確認できないのだわ、クライネのほうはどうなの?」
「こちらはクライネ、まだ反応はないのよ~」

火星と木星の間で繰り広げられている星間戦争。
同じ人類同士での想像を絶する戦いの中に月から出撃した艦隊を護衛する小型戦闘機のモニターをライナー、メルクール、クライネと名乗る3人の少女は緊張の息を飲みながら注意していた。
そんな3人のモニターに赤いランプが点灯し、やや早口で緊迫した声が飛び込んでくる。

「こちら戦闘艦スイドリームのヤーデですぅ!座標T39202で敵機影多数発見
ですぅ、その数約3万、来やがったですぅ、ローゼン小隊はフォーメーショントロイメントで迎撃せよですぅ!!」

ライナー達よりも2千キロほど先行していた戦闘艦スイドリームから緊急連絡が入った。
その声にライナーたちはゴクリとツバを飲み込むと了解といいながらスロットルレバーを前に突き出す。
ノズルがチカッと薄い光を出したかと思うと3人の機体は地上では考えられない速度で加速し始める。

「ねぇ、聞いたぁ?敵の数は3万だってぇ~~、私たちって戦艦、空母、護衛艦あわせて何隻ほど戦線に出てるのぉ~?」

戦闘空域に向かいながらメルクールはライナーとクライネに質問する。

「そうね、だいたい1万5千から1万8千ってとこだわ」
「ほぇ~~、それはヤバイのよぉ~~」
「だいたい半分の戦力って訳ぇ~?うふふ、笑っちゃうわぁ~」

3機が向かう先に眩しい光がいくすじも交差し、大小さまざまな爆発が暗黒の宇宙空間を照らし出していた。
すでに先行しているスイドリームをはじめとする艦隊が戦闘を始めていたのだ。

「こちらスイドリーム、ローゼン小隊は弾幕に注意し、本艦の右舷を守るですぅ」
「守るって言っても数がハンパじゃないわねぇ~」
「ほぇぇぇ~~、来たのよぉ、来たのよぉ!!」

戦闘艦スイドリームの弾幕から逃れた敵が数機ほど3人に襲い掛かる。
アクティブホーミング弾を撒き散らせる。
白い航跡を引きながら反応弾が迫ってくる。
それを避けながらメルクールはニヤリと笑いながらペロッと唇をなめる。

「ふふふ、面白くなってきたじゃないぃ~~、こういう時はこれに限るわぁ」

そう言うとメルクールは5cmほどの四角いチップを戦闘モニター下の差込
口に入れる。
そのとたんに大音量の激しい音楽が戦場を駆けめぐる。

「こちら戦闘艦スイドリーム、なんですかぁこの曲はぁ~?」
「あ~らぁ、ヤーデ知らないのぉ?これはロックよぉ~」
「そんなのは解ってるですぅ、この戦闘時にどうして音楽をかけるですかぁ?」
「だってぇ~、ノッてくるでしょ~~?」
「ふふふ、そうね、メルクールの言うとおりノッてきたのだわ!!」
「うわぁ~~い、クライネもノッてきたのよぉぉぉ!!」
「えぇぇ~~い、もう知らんですぅ!!それより敵の数が多くなってきたですよぉ」

ヤーデの言葉どおり、今やこの空域の敵数は圧倒的なまでに膨れ上がり始めていた。
旗艦ラプラス轟沈、空母ミスティカも派手な爆発と共に宇宙空間で消滅して
いた。
残されたのは戦闘艦スイドリームをはじめとする護衛艦7000隻たらず。

「クソッ!!」

吐き捨てるように唇を噛むメルクール。
同じように悲痛な表情のクライネ。
その眼下には被弾したスイドリーム右舷から発せられるバチバチとした電子
放電の明かりが痛々しく見えるだけ。

「こちら戦闘艦スイドリームのヤーデですぅ、本艦はもう自力走行は不可能
ですぅ…今から本艦は持てる弾薬を使って敵の足止めをするですぅ」
「ちょっとまって、それじゃヤーデはどうなるのぉ?」
「…ヤーデは、ヤーデの運命はスイドリームと共にあるのですぅ!!」
「それじゃ、ヤーデは死んじゃうの~~そんなのイヤなのぉぉ」
「うるせぇですぅ~~!!戦いはこの1戦だけじゃねぇですぅ。
 お前たちは生きて次の機会をまてですぅ、今からカウント20でお前たちは戦線離脱するですぅ~~!!」

その言葉と共にカウントが始まる。
その間も密集体型をとる艦隊のあちらこちらから眩い閃光と共に命が確実
に消えていく。
そしてカウントが10を切ったときライナーがポツリと言う。

「ねぇ、ヤーデ。スイドリームに特別製のSS弾はあるの?」
「特別製SS弾ってスペーススマッシャー(空間消滅爆弾)のことですかぁ?」
「そうよ、それを敵中心部にぶつければ……」
「それはあるですけどぉ~そんなのムリですぅ、あれは巡航弾じゃねぇ
ですからぁ、誰かが敵中心部の近くで発射しないと……まさか!!」
「そうよ、私が突っ込んでいくわ。
 それに特別製なら中心部じゃなくても大きなダメージを与えれるはずだわ」
「それっていい考えねぇ~うふふふ」
「な、なにを言ってるですかぁ、そんなの自殺行為ですぅ」
「あら、今自殺行為をしようとしていた貴女に言われたくないわ」
「そうよぉ~、それにここから脱出ったってそれこそ難しいわぁ~」
「賭けなのよぉ~、こうなったらクライネもライナーを援護するなのぉ~!!」
「もちろん私もライナーについていくわぁ、
 特別製SS弾って私の分もあるんでしょぉ~~?」
「わ、解ったですぅ~、今から本艦に着陸してSS弾を搭載するですよ、
 ただし無理だと解ったら適当に発射して逃げるですよぉ」

被弾し動けない戦闘艦に赤と黒、そしてピンクに塗装された機体が着艦すると同時に技術者がライナーとメルクールの機体にSS弾を装着し始めた。

「いいですか、このSS弾は特別製で直径17000kmの空間を消滅させます。
 だから発射後はただちに離脱してください」
「ほぇ~、普通のSS弾の10倍の威力なの~~凄いの~~」
「ふふ、噂には聞いていたけど特別製SS弾って凄いのね、大丈夫よぉ~」

技術者と話していると艦内放送が響く。

「敵の第2波が来るですぅ、コンタクト時間は3分後ですぅ、早く出撃するですよぉ」
「チッ、ゆっくりドリンクも飲めないわねぇ~」
「そうね、じゃ行くのだわ」

3機がスイドリームから飛び立つと、ヤーデは生き残っている全艦に向けて
特別製SS弾使用の作戦を伝える。

「動ける艦船、戦闘機は密集体型を取りつつ前進ですぅ!!なんとしても
3機を守るですよぉ~~、突撃ですぅぅ!!」

ライナー、メルクール、クライネの3機を囲むように艦隊は進撃する。
それぞれの艦船から連絡が入る。

「AGGRESSORS IN SIGHT」
「ALL STATIONS ON RED ALERT」
「RED ALERT」
「EM ON」
「NOW CONTACT」
「CONTACT!!」
「5・4・3・2・1………FIRE!!」
「FIRE!!」
「FIRE!!」

密集された艦隊から一斉に無数の閃光が飛び出す。
暗黒の宇宙空間に銀河の明かりよりも眩しい光の道が出来上がる。
怒号と悲鳴が交差する中でライナーはグッと腕に力を入れる。

「ねぇ、メルクール、あの曲をかけて頂戴」
「あの曲ぅ?」
「そう、あの曲よ、飛びっきり激しいロックをお願いするわ」
「うわぁ~い、クライネも聴きたいの~」
「うふふふ、いいわよぉ~~、ROCK&ROLL!!」

降り注ぐ光化学レーザーの淡い光の中で跳躍するメロディー。
灯っては消える見知らぬ人の生命。

「開いたですぅ、今ですぅ!!それと必ず生きて戻ってくるですよぉ、
 これは命令ですぅぅぅぅ!!!!」

艦隊からの一斉射撃で敵の防御陣が割れる。

「行くのだわ!!」
「行くわよぉ~!!」
「行くのよ~~!!」

彼女たち3機は色鮮やかなレーザー光線が作った道へと飛び込んでいった。
それを見届けたヤーデは両腕をそっと胸の前で合わせる。

「きっと、きっと生きて帰ってくるですよぉぉ~~~!!」

ヤーデが祈りを始めて5分、それとも10分か?
突然はるか敵部隊後方で巨大な太陽が2つ現われる。
直視できない光は現われた時と同じように瞬間的に収縮し収まる。

「やりました、空間消滅です。
 敵中心部で直径30000km以上の空間消滅を観測しました。
 敵部隊の84%は空間と共に消滅!作戦は成功です!!」

戦闘観測員が歓喜の声を上げながらヤーデに報告する。
艦内および味方部隊の声が戦場を駆け巡る。

「ライナーは?メルクールは?クライネはどうしたですぅ?
 連絡はないですかぁ?」

狂喜に沸くブリッジにヤーデの声が響く。
それに答えるオペテーターは沈みがちになる。

「連絡はまだありません」
「識別信号はどうですぅ?生きてるなら信号が出てるはずですぅ」
「……3機の識別信号は…スペーススマッシャー使用後に空間と共に消滅しました、おそらく3機はもう……」
「そ、そんな……生きて戻るって命令したはずですぅぅぅ~~」

真っ暗な宇宙、遥か太古から人が夢を見続けてきたフロンティア。
その夢の欠片がさ迷い続ける宇宙。
人はいつになれば争いを無くすことができるのだろうか?
そんな問いに銀河の欠片となった彼女達3人ならどう答えるのだろう?

~~END~~

                    ***

「ねぇ、どぉ?私たちが出演した映画の感想はぁ?」
「どうですぅ?翠星石は最後まで生き残っていたですよぉ~」
「憎まれっ子はしぶといのだわ」
「はぁ?何か言ったですかぁ真紅ぅ?」
「別に、何も言ってないわ」

試写会のエンドロールと映画主題歌が流れる中でそれぞれが充実した顔つきでいた。
そんな4人を見る蒼星石はポツリと呟く。

「こんどは僕も出たいな~」
「蒼星石ならどんな映画にでたいの?」
「そうだね、今回のスペースオペラもいいけど、歴史大作もいいね」
「カナも出たいかしら~、カナはホラーがいいかしらぁ」

「……私は……宇宙で板前になりたい」
「い、板前なのぉ~?そ、それは難しい映画ねぇ~~…」
「監督が泣きを見るですねぇ~~」
「それ以前にシナリオが無理なのだわ」
「……イヤだもん、私は…銀河の板前になりたいんだもん!!」

真紅、水銀燈、翠星石、雛苺が出演した映画は大当たりし、ローゼンメイデンが製作した映画サントラも大成功し、映画サントラとしては異例中の異例の200万枚を軽く突破した。




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最終更新:2007年08月27日 22:11