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Story  ID:REkn9UeBO 氏(15th take)
Illust ID:0PEWU6qG0 氏(15th take)
       ID:REkn9UeBO 氏(15th take)
       845 氏
「あれ…翠星石?」
「……ひ、雛苺?なんでここに居やがるですか!?」

in タワレコ


「まさか翠星石とぐーぜん会うなんてねっ」
とふわふわの髪を揺らしながら彼女は言った。手にはタワレコの黄×赤の目立つビニール袋。もう既に会計は済ませたのだろう。

「で、翠星石は何買いに来たのー?」
「FMで流れてた曲なんですがー…なかなか見つからんのです……雛苺は何買ったですか?」
「ちょっと前の曲だけどマドンナなの!えぇーとタイトルはねぇ、」
「HUNG UPですか?」
「うゆ!?翠星石なかなか詳しいのー!」

(こ、コイツマドンナ聴くのか…!!)

彼女は深い碧色の瞳を丸くさせる。綺麗な目。

「ひな今日暇なの!翠星石、これからCD探すんでしょー?」
「…ま…まぁそうです」
「今日はいい天気だし、ひなも一緒に探してあげるのっ!」
「かっ、勝手にしやがれです!」

にこにこ笑うフワフワ頭を置いて、インディーズコーナーに向かって早歩き。
後ろから待ってぇー!の声と、慌てて走る靴音が聞こえて、不覚にも顔が緩んだ。



「あ!」
雛苺が足を止めた。

「そういえば曲名わからないのー!」
「わからないのに探そうとしてたですか?!」
早々天然を発揮する雛苺は、鞄から紙とピンク色のペンを取り出した。
ペンには苺の飾りがついている。

「教えてほしいのかしら!」
「キャラ違うです。えっと、VIPPERSのNEETDEATH…っていう曲です」
「うゅー聴いたことないの…よぉーし早く探すのー!」

10分経過。

「やっぱ無いです…」
「うゅー…あっ!店のひとに聞いてきてあげるのー!」
雛苺はぱたぱたとレジの方に向かっていった。
いつも苛めてるのに、ましてやオフの日なのに、わざわざ付き合ってくれる雛苺は本当に優しいな、と思う。

けど優しくしてくれるのは私だけじゃないってわかってる。
悔しいけど、いや悔しくなんかないけど、雛苺は誰にでも優しいから。


「申し訳ございません、当店では取り扱っておりません。」

店員の言葉に雛苺はがっくりと肩を落とした。他のCDを見ていた私と目が合うと、困ったようにおどけて笑う。
その仕草に、不覚にも胸が飛び跳ねてしまったのは秘密。

「タワレコにはないらしいのー!」

タワレコの袋を振りながらパタパタ駆け寄ってくる雛苺を見て、改めて可愛いなーなんて……

「そ、そうですか…じゃあ帰るです。お前とはこれ以上居たくないですぅー」
「ひぃ!翠星石ひどいのーっ!!」

もっと一緒に居たいなんて口が裂けても言えないだろう。
心の中でごめんと呟いて、表面上で「知らねぇです」なんて呟いた。

…やっぱり今日の私は変だ。

「翠星石、目がしんでるのー」
「なっなんでもないです!!」

心配してくれる雛苺はいい子だ。いつも冷たく当たってばっかりな、自分が嫌い。
いつから私は雛苺を意識し始めたんだろうか。
でも付き合うだなんて全く考えていない。
私は女だし雛苺も女だしあり得ないんだ。
まずそれ以前にバンド仲間であって、恋仲になんてなれやしないだろう。
私だって自分がおかしいこと位理解している。


店の出口にさしかかるところで、ふと雛苺が足を止めた。
そして私の顔をじっと見つめるもんだから、思わず胸が高鳴る。

「…なんですか?」
「翠星石、顔赤いのよー?」
「ぁ…えぇ?!」

両手で自分の頬を覆うと、確かに普段の体温より温度が高いのがわかる。

「風邪ひいたのー?」
「…な…なんでもねーです!!お前のせいですおバカ苺!」
「うぇ!?ひな何もしてないのーっ!!」
「ふん!もう先行くです!」

これがいつもの雛苺を苛める翠星石です!と、心の中から汚れた感情は消えたものだと思われた。
しかしそれは雛苺の行動によってぶり返すことになる。

「翠星石ー待ってぇーなのーっ!!」
ぎゅ、と袖が掴まれる感覚。
「んもう!なんなんですかバカいち……ご…」

……ちかい。
近い近い近いちか━━━━い!!!!

今、まさに少しでも動いたら唇と唇が触れ合うような間隔で、雛苺は頬を膨らせ私を睨みつける。
しかし睨みつける仕草も可愛いもので、私の心臓の鼓動は超高速でドラムを叩くのに近い状態である。
…雛苺はここまで私を緊張させて楽しいのでしょうか。



つかつか歩いてドアを開けようとした時、外から水音が聴こえた。まさか、と思い開けてみると、嫌な予感は見事に的中した。

「あ、雨なのー!」
外は雨。私はあいにく傘は持ってきていなかった。

「あんなにいい天気だったのにぃー」
「ですね…」
(…私に付き合わなければ、雨が降らないうちに帰れたのに。)

激しく降る雨はまさに、私の今の心の現状を映し出している。

「テンションガタ落ちですぅ…雛苺、今日はもうかえr」
「はいっ!」
突然目の前に何かを差しだされた。
「今日持ってきた…って言ってもカバンに入れっぱなしだったのー!えへへっ」
それは白地にピンクの水玉模様の傘。
「楽してズルしてあいあいがさなのかしら!!」

金糸雀のマネをした雛苺は、はにかみながら傘を開いて笑ってみせる。
「これで駅まで濡れずにすむの!」

そう言うと雛苺は傘を持ったまま歩きだし、私も慌てて歩きだす。
ふと雛苺と目が合い、また顔が熱くなって目を反らした。



雨の日の空気は冷たくて、自分の頬がやけに熱く感じた。
「翠星石ー」
「なんです?」

雛苺は立ち止まって、また私の顔をまじまじと見つめる。

「やっぱり熱あるのー?顔あかいのよっ」

私の頬に、傘と袋を持つ手と反対の手をかざす。
そして触れた。また、顔が近い。
「な、なっ、ない…です」
「うゅ…ぜったい熱あるのーっ!えいっ!」
「ひゃあっ!?」


雛苺は私の頬を強く支えながら、小さい頃よくやったような
“額と額をくっつけて温度差を測る”
というこっぱずかしい行動をし始めた。


暫く額と額を合わせたまま。頬から、額から、雛苺の体温を感じる。
「…熱は無いみたいなのねー」

その体勢のまま雛苺は言った。
ふと横目で周囲を確認するとみんな傘をさして歩くことに必死で、私達は今誰にも見られていない。
だめだ、こんな好条件じゃ、理性がもたない。

「熱なんかねーです!」
「でもほっぺ赤いのよー?」
「……っ」
雛苺の吐息、匂いをも感じ、とうとう私の理性は崩れた。
「あっ!?」

雛苺の傘を奪い、私達の首から上が周囲から見えないような角度にする。
「…翠星…石…?」

一瞬怯んだ雛苺の顎を左手でつかみ、

「きゃっ」

くいっと上向きにして、

「んっ!」

軽く口付けた。
唇と唇が触れ合うだけの、軽いキス。


ちゅ、とわざと音を立てて顔を離した。
「………」
雛苺の顔を見ると案の定顔を紅く染め、目を丸くしている。
そんな姿が可愛くて可愛くて、私はまた口付けた。

「んんっ」

今度は貪るような深いキス。雛苺の唇を、私の唇で挟むように。
唇を舐め、呼吸の為開いた隙間に舌を入れて口をこじ開ける。
そして舌を捉え、強引に絡ませた。

「あっ…ふぁ……」
間抜けな声を出す雛苺が愛しくて、舌で歯列をなぞる。苺大福の味がする。
「ぅ……ぁ…うぁ…」
ビクビクと体を震わせ、懸命に耐えようとする可愛い雛苺。
このままずっとこうしていたかったが、いい加減に私も酸素が足りなくなったので唇を離した。

唇と唇の間を繋ぐ銀の糸は、途中で途切れて水溜まりへと消えていった。



「はぁ…はぁ…」

荒い息を繰り返しながら、雛苺と目があった。
…泣いてる。

「!ご、ごめん、です……」
流石にやりすぎた。同性同士のキスなんて気持ち悪いことこの上ないだろう。

「もう…」
「……え?」
「もう、いいのっ!!」

突然、雛苺は私に背を向けて走り出してしまった。
「ちょっ…雛苺!」
追いかけようとする私を人混みが邪魔する。
「雛苺!雛苺っ!」

彼女の背中は、人混みと雨の中に消えてしまった。

嫌われた。

一時の熱に浮かされたとはいえ、私は酷いことをしでかしてしまった。
同性に、バンド仲間に、欲情してしまったんだ。
明日もオフなのが不幸中の幸いだが、明後日にはスタジオでの音合わせがある。つまり、嫌でも顔を合わさなくてはならない。

「はぁ……どうしよう…」
水溜まりに映った自分が、ひどく滑稽に見えた。

              *

今日もオフ。
昨日と違うのは、今日は家で過ごすってこと。
「はぁ………」
ソファに座りながらスコーンをかじる。
もう溜め息しか出ない。なんで昨日の自分はあんな事をしてしまったのだろう。
CD探すの手伝ってくれた。見つからなくても店員に聞いてくれた。雨が降った時には傘に入れてくれた。
そんな優しい雛苺を、私は……

「あーっもう!!」
隣にあったクッションを殴った。物にやつあたりすることしかできない。
「翠星石は……バカです…」
誰にでも優しいあの子の優しさを独占したかった。でも私はいきすぎた行動をとってしまった。

「バカですぅ!ああもう!!」
頭をくしゃくしゃに掻き乱す。
そんな私の姿を不気味に思ったのか、向かいの席でほうじ茶をすすっていたバンド仲間、もとい双子の妹が声をかけてきた。

「翠星石…なんだか荒れてるね?」
「…翠星石はバカ…馬鹿星石です……」
「じゃあ馬鹿星石、何があったんだい?」
「キィィ!撤回ですぅ!」

この妹は、私がバンド仲間(女)に欲情してたなんて知らないんだろうな…

「蒼星石、質問していいですか?」
「どうぞ。なに?」
すっ、と深呼吸した。

例えば、蒼星石に好きな人が居るとするです。でも相手とは、ある事情があって愛し合ってはいけない関係です。
相手が自分のことをどう思っているのかはわかりません。ですがある日、蒼星石は相手に勢い余って…キスをしてしまいました。
蒼星石は謝りましたが、相手は走って逃げてしまいました。しかしその相手とは、近々嫌でも会わなければなりません。
さて、どうします?

「……そんなことがあったのかい」
「ちげーです!翠星石じゃねぇです!友達から聴いた話ですぅ!!」
慌てて否定する自分。本当にバカセイセキだ。
「あはは、無理しなくてもいいよ!……で、相手は嫌がってた?」
頭の中に昨日の映像を映し出す。
「……よくわからない…です」
「そう…」
蒼星石はほうじ茶を飲んでから私に言った。
「目に見てわかるほど嫌がってなかったんなら…謝ってお詫びの品でも渡せばいいんじゃないかな」
「………随分ライトな答えですね。でも何を…」
「じゃあ、相手の好きな食べ物はなに?」
「うにゅー」
「そっか………って
工エェ(´д`)ェエ工」

この後、VIPに「姉ちゃんがバンド仲間♀とキスしてたんだが」というスレが立つことは蒼星石しか知らない。

               *
今日も雨。
「おはよーございまーす」
傘を畳んで、蒼星石と二人でスタジオに入った。そこにはまだキーボードの練習をする薔薇水晶しか居ない。
「薔薇水晶、おはよ」
「今日も1日頑張るです!」
「……おはよう……頑張る…」

せめて他のメンバーの前では明るく振る舞わなければ。
雛苺はいつも遅刻ギリギリに来るから、今日はなるべく顔を合わすことなく過ごしたい。
…と思いながらも自分の鞄の中には「うにゅー」が入っている。昨日妹と一緒に買いにいったのだ。
(今日はパパッとこれ渡して演奏してパパッと帰るです…大丈夫、大丈夫です)
スティックをぎゅっと握り絞めた。
練習開始時間までまだ45分。雛苺が来る気配は未だ無い。と、その時勢いよくドアが開いた。

バンッ
「おっはよ━━━━なの━━━━っ!!!!」
スタジオにキンキンした明るい声が響き渡る。
恐る恐る振り向くと……そこには一昨日、キスした相手が立っていた。


168:あおのこ◆s/roZeN.m4 :2006/04/06(木) 07:18:26.45 ID:4/eb9ue5aq
    おはようおまいら
    今姉ちゃんとスタジオに着いたんだが、かなり落ち着かない様子。
    姉ちゃんモエスwwww
    あ、相手来たっぽい。続報を待て


向こうは視線に気付いたのか、私のほうを見た。目が合って、思わず体がこわばる。
「雛苺おはよう。今日は早いんだね」
真っ先に蒼星石が話しかけた。ああ神様仏様お父様、どうか私に話が回ってきませんように。

「トモエママが車で送ってくれたの!あ、翠星石ちょっと来てなの」
  う   わ   あ

雛苺は笑顔で私に手招きする。その笑顔がやけに怖い。
蒼星石に助けてもらおうと視線をやると、ノートパソコン(持参)でなにやら忙しそう。
また雛苺のほうを見ると、彼女は右手の親指をくいっと立てて背後を指した。まさしく「こっちこいやワレ」の意。
薔薇水晶はトランス状態。
仕方なく私は鞄から「うにゅー」と借りた傘を取り出し、雛苺のほうへ歩いていった。


236:あおのこ◆s/roZeN.m4 :2006/04/06(木) 07:21:54.88 ID:4/eb9ue5aq
    ちょwwwww姉ちゃん苺大福持って、相手と非常階段のほう行ったwwww
    何か起こる悪寒


私の前を歩く雛苺と、無言で非常階段を登る。
2階の踊り場の端で、雛苺は足を止めた。私も習って足を止める。
雨も降っているせいか、非常階段はいやに暗い。地下のスタジオから薔薇水晶のキーボードの音が遠く聴こえる。
「………」
用があったなら早く話せよ、と大人気なく考えた。だが当の彼女は喋る気配がない。

「…翠星石」
あ、しゃべった。
「な…なんです?」
「あのね、」

やばい…怒られる!

「ごっごめっ」
「はいっ!」

突然目の前に何かを差しだされた。
「あ……これは…っ!!」
その四角い薄型の物体はビニールで覆われている。フロントにはVIPPERSのロゴ。
そして“NEETDEATH~働いたら負けかなと思っている~”の文字があった。

「それね、発売日昨日だったのー!」
にこにこ笑って彼女は言う。
そんな顔されたら、またキスしたくなるよ。
「あー…どうりでおとといなかったわけですぅ…」

お と と い

その単語に、雛苺がビクッと体を震わせて反応した。…やっぱり気にしていたようだ。

「…あー……あの…ごめんなさいです」
「…………」
雛苺は黙り込んでしまった。これはやばい。
「い……嫌、でしたよね?」
「………」
雛苺は服の裾をぎゅっと握ってうつ向いたまま。この雰囲気、苦手だ。

「…申し訳なかったです!これっお詫びです受け取りやがれです許してくだしあ!!!!!!」
うにゅーをさっと両手に取り出し、礼をして両手を突き出すような形になった。
10秒ほど経ってから細く白い手が伸び、うにゅーに手をかける。うにゅーが掴まれた事を確認し、顔を上げた。
そして雛苺と目を合わせる。

「べつにー…イヤじゃなかったの」

頬を桃色に染めて、照れたように彼女は笑った。
非常階段から、ビルとビルの隙間に虹が見えるのがわかる。
雨はやっと、止んだようだ。


278:あおのこ◆s/roZeN.m4 :2006/04/06(木) 07:23:69.27 ID:4/eb9ue5aq
    姉「嫌でしたよね?」
    相手「イヤじゃなかったのw」

    百合フラグキタ――(゜∀゜)――!!!!


「1,2,3,4!!」

真紅のかけ声に合わせて、私はリズムを奏でる。スティックを滑らせないように、握り絞めながら。
この詞、ありきたりだけど好きだ。涙のあとには虹っていうの。

ドラムを叩きながら私もメロディを口ずさむ。すると、ふとこちらを振り向いた雛苺と目が合った。
唇に餡子をつけたままの愛しい人は、天真爛漫な笑みで私に笑いかけた。

━━━怒ってますか?
━━━ううん、怒ってないよ
ひなは女の子で、翠星石も女の子なの。でもね、翠星石にちゅーされてもイヤじゃなかったの!
たぶん蒼星石や真紅とか、他のひとにやられたらやーなの。あのときちゅーされてからね、ずぅっと考えてたの
……よくわかんないんだけどねー、いいんだって思うの!
翠星石、ほんとはすっごくいーこいーこだから。


再びドラムに意識を集中させた。
私の口の中には、苺大福自体は食べていないのに今ソレの味が残っている。
理由?ほっときやがれです。



347:あおのこ◆s/roZeN.m4 :2006/04/06(木) 07:26:07.55 ID:4/eb9ue5aq
    ちょwwwまさかの成就ktkrwwwwwwww


終われ



最終更新:2006年06月26日 18:48