Story S.A.Y 氏
「みんな来てるかしら~?」
「いつものライブハウスで練習中、金糸雀が入ってきた。
「あら金糸雀、どうしたの今日は?」
いつもなら練習がある程度終わったころに来ることが多い彼女。
しかしほとんど始めたばかりの頃に顔を出すのは珍しいことだ。
「何言ってるのかしら~、今日はヴィ○ャスの取材の日って言ってたはずかしら~?」
それを聴いて顔を見合わせる面々。
「水銀燈、お前聞いたですか?」
「聴いてないわぁ?」
「雛も聴いてないの~」
口々に言うメンバー。
「……そ、そんなことないかしら?メールもちゃんと送ったかしら~」
「メール?金糸雀、もしかして、これかい?」
そう言ってメールを見せる蒼星石。
日にちを見ると
「 5 月 8 日
とある。
「・・・・・えっ」
見る見る蒼白になる金糸雀。
いつもなら「ちょっと間違えたかしら~」と誤魔化さないあたり、
……事態は重いらしい。
・・・・・・・・沈黙がライブハウスを包む・・・・・・・・・
「……ま、まぁ今からライブやるわけじゃないよね?
じゃ、じゃあ大丈夫だから」
「でもでも・・・・・・
「どうしたって言うのよぉ?」
「……撮影用の衣装、みんな持ってるかしら?」
『あ』
何せ今日は普通に練習に集まっただけ。
いつものライブに来ているような服装はしていない。
真紅に至っては、くんくんプリントTシャツだ。
「どどどどうしよ!みっちゃんは今日は別の仕事だし!!」
みっちゃんとは、金糸雀のバイト先の店長で貸衣装屋なのだが。
「いいんじゃなぁい?素の姿を見られてもさぁ(黒のノースリーブ)」
「そんなことしたらイメージが狂うですぅ(無地のトレーナー)」
「……僕、どうしよう……(紺のジャージ姿)」
「雛は別にいいよう(なぜか着ぐるみ)」
そう混沌を奏してきたときに。
「……いい手段、ある……」
薔薇水晶が立ち上がった。
ここはとあるアトリエ。
今、それぞれのインタビューが終わり、ピンナップ撮影である。
パシャ!パシャ!!
今はボーカル2人のショットである。
二人は共に赤を基調として、真紅は紅色、雛苺は朱色の
花吹雪をイメージしたというお揃いのドレスに身を包んでいた。
「ふぅ、しかし、まさか薔薇水晶にそんな知り合いがねぇ」
水色の燕尾服に、藍色のマントをまとった蒼星石がつぶやく。
「人は見かけによらないですぅ」
こちとら草色のメイド姿だ。
「あのヴィジュアル系御用達のデザイナー、雪華綺晶が親戚だなんて、ねえ」
純白のゴシックドレスに身を包んだ水銀燈が呟く。
彼女はその場で電話をすると、
今後の新作衣装のモデルとして、衣装を借りることを承諾したのだ。
「……あの有名な雪華綺晶作品のモデルなんて、また売れるかしら!
雨降って地固まるってこのことかしら~」
「何言ってるの金糸雀?薔薇水晶にお礼を言っておくことだわ」
撮影を終えた真紅が釘を刺す。
「いいのよ。私も薔薇水晶やその友達に私の服を着てもらえるなんて」
そう言ってなだめる雪華綺晶。年は彼女たちより若干上と言ったところか。
「この服かわいいの!ありがとなの~」
雛苺が駆け寄るのを受け止めきれず、しりもちをつく彼女。
「こうら雛苺!迷惑かけるなですぅ!」
「ほら翠星石、僕たちの出番だよ!」
「早くなさぁい」
「……じゃ、……行ってくるね」
「あの薔薇水晶が、自分を主張するなんて。
貴方たちのおかげ。
……よかったら、これからも私の服を使ってくれない?」
「……それって、専属デザイナーの契約ととってよろしいかしら?」
こうして、ローゼンメイデンは、新たな仲間を加えるに至った。
最終更新:2006年04月08日 11:35