Story ID:BB4Ymn0O0 氏(290th take)
「・・・どうしよう・・・」
その日、薔薇水晶は近所のホールのピアノを借りて練習をしようとしていた。
キーボードとピアノと言うものは全く勝手の違う鍵盤を持つため、どうしてもキーボードに慣れるといざピアノが出て来た時に困ってしまう。
鍵盤の重さが違うのだ。そして、家にある高級電子ピアノでもいまいち足りなくなってきた彼女は本物のグランドピアノを弾きに来たのである。
しかし。
猫が、ピアノのふたに鎮座している。
「・・・にゃー・・・」
こう言ってみても、猫が薔薇水晶を同属だと認識してくれた所で「どいてくれない?」の意思表示は不可能だろう。途方に暮れる。
むしろ不機嫌そうな顔で、こっちを睨み付けて来た。
「えっと・・・すいません薔薇水晶さん!」
係員が駆けてくる。
「ここに居ついちゃってる猫なんですが・・・ほらほら、どいて」
ここの近所にはねこじゃらしの生えているような場所は無く、コンビニは有れどマタタビまで売っているような所はない。
相変わらず我が物顔だ。
「・・・こら、不機嫌な顔しないで!どいてってば!」
そう係員が怒鳴りつけるとなおさら、意地でも留まってやる!と言う顔で人間を見てくる。
「・・・」
ふと、薔薇水晶が猫の元に歩み寄った。
「す、すみま・・・っと、どうかしました?」
「・・・銀ちゃんの真似」
挑発的な、奴隷を見下すような顔を猫に向けた。
「ほねっこ、摂ってるぅ・・・?」
訳の分からない威圧感に押され、猫がピアノから全力で飛び降りた。
「・・・ごめんね、怖かったかな?つい・・・」
そう言って、鍵が開けてあったピアノを開け、鍵盤に手を置く。
「あのー、薔薇水晶さん・・・」
「何?別に怒ってない・・・」
・・・意を決して、係員は呟いた。
「ほねっこは、犬用です」
最終更新:2008年02月19日 22:11