Story ID:tq8DBQX00 氏(290th take)
「・・・柏葉」
「あ、桜田くんまた行ってみる?」
「・・・うん」
スッ・・・(立ち上がる)
ジュンが、エレキギターを掻き鳴らす!
ギュアーギュイィーブ
「・・・またFのコードで詰まった・・・」
「ジュン?これで4回目よ?」
「・・・うるさい、楽でいいよなぁ見てるだけの姉ちゃんは!?
柏葉も・・・いや、仕方ないか・・・。もう一回、ボーカルパート歌ってみて」
「うん、分かった・・・」
そう言って、巴が歌い始めた。
練習部屋全体に優しく反響する声が、一同の体を覆う・・・。
この集まりは、早い話がのり発案のドッキリ企画。
ローゼンメイデンの各メンバーの知り合い一同でコピーバンドを作り、本人の前で演奏すると言う企画である。
まぁ、ネタ的なものなのだが、練習期間がえらく長く取られたためにいつの間にか本格的な企画になっていた。
わざわざ安い料金ながら、楽器練習用の部屋まで貸し切って行っていた。
大風呂敷にしてしまったのりがスポンサーを買って出たのだが、逆に企画が泥沼のように本格化する要因にもなっていた。
ジュン「・・・雛苺と同じデス声じゃないけど、こりゃ敵わないなやっぱ。柏葉はボーカルで決まりだな。
それにしても、真紅はいつもこんな難しいのを弾いてるのか・・・」
みっちゃん「うーむ、ギターは難しいみたいだねー。ガンバレジュン君!」
ジュン「・・・草笛さんの方が大変な気が・・・。その怪物みたいなベースじゃあ」
みっちゃんの手に握られていたのは、アップライトベース(エレキコントラバス)。
念の為、ベースは一般的なエレキとコントラバスの弦を弾いて出すアナログタイプの2通りがある。
みっちゃん「怪物って・・・金糸雀が勧めてくれたんだよ!?さり気無く簡単な楽器について尋ねたら・・・。
だから、大丈夫大丈夫っ♪」
(本当か・・・?アイツの策は当たらないけど)
槐「・・・弦の数が違うから楽なんだよ。自分の守備範囲だからと言ってアップライト用意するのはどうかと思うけど」
ジュン「え・・・あ、ホントだ!2弦少ない!」
のり「さーて・・・ここら辺で、みんなで合わせてみない?
見てるだけの私が言うのもなんだけど」
ジュン「・・・了解」
~1分後~
ジュン「・・・うーん、やっぱ僕にギターは無理だって。柿崎さんに任せるしか・・・」
巴「でも柿崎さん病院通いでしょ?上達早いけど、練習時間が半分だから・・・やっぱ桜田くんだよ」
ジュン「・・・チェッ。分かったよ・・・でもこれでも頑張ってるんだよ一応。
草笛さんは何とかお披露目に間に合いそうだけどなぁ・・・僕はなぁ」
みっちゃん「いやいや、弱気になったらダメだって・・・でも、やっぱ今は槐さんのピアノが砦だよねー。凄いじゃないですか!」
槐「いや・・・長生きしてるからまぁ、これくらいは。
正直に言うと、ブランクを慌てて徹夜で練習して埋めたりしてるけど?」
ジュン「でも、いいなぁ・・・長生き?何歳ですか?」
槐「・・・悪い、それはノーコメントで」
ジュン「あ、ハイ・・・でも、何か貫禄があるような・・・」
巴「若いけど大人だし、年の功があるのかな。でも、上手いけど何か・・・」
槐「・・・分かるか。ピアノのブランクは結構痛いものなんだ」
みっちゃん「あ、そうなんですか。うーん・・・だったら私も練習しないと、どうしよう」
「・・・年の功?何も槐くんだけでは無いぞ、年の功があるのは」
一同「・・・こ、この声は!?」
「このバンドはドラムがいないようじゃな?」
一同「ま・・・まさかッ!?」
じじい「この柴崎元治、一花咲かせて見せようぞ!見ておれッ、カァーーーズキィーーー!!!」
一同「で、出たアァァァーーー!!!」
みっちゃん(・・・誰?)
じじい「フッ・・・見ておれ」
クルクルクルクル
一同「スティック回しーーー!?」
槐「コイツ・・・出来る!」
のり「え!?そ、そうなんですか!?」
槐「・・・気配に押されて思わず口に出ただけだ」
のり「そ、それはそれで凄いって事じゃないですか!」
じじい「・・・ハイヤアァァァーッッッ!!!」
ズドドドォーン!
一同「す、凄ーーーッ!!!」
ジュン「ま・・・まるでゲームの爆発呪文みたいだ・・・!」
しかし。
「・・・あ、あれ!?」
のりは気付いた。
ドラムロールが、何故か盛り上げるはずの場面で逆にフェードアウトしている事を。
~5分後~
扉を開けて、ロングヘアーの少女が入ってくる。
めぐ「すみません、遅れました・・・えっと、練習まだ続いてますよね?あと30分で貸し切り時間終わりですけど」
巴「えっと、めぐちゃん!?どうやってここまで来た!?」
めぐ「えぇ!?・・・ビックリした、えっと、病院から・・・水銀燈にばれたらいけないからバス使いましたけど・・・」
ジュン「送迎じゃなくてバスか・・・し、仕方ない!救急車を・・・」
めぐ「・・・え?」
みっちゃん「おじいちゃん!起きて下さいっ!」
じじい「大丈夫じゃ・・・わしも蒼星石に教えられた、死に急ぐような無茶はしないとは決めたんじゃよ。
ただ、6時間ほどここで寝かせてくれんかのう・・・?」
のり「6時間も寝られたら困るんですって!後30分で・・・」
じじい「老人は起きるのが早いんじゃて・・・昔は、疲れ果てるまで体を動かしたら12時間寝っぱなしじゃった・・・」
槐「・・・車、取りに行ってきます」
この日はじじいの処理で終わった。
最終更新:2008年04月07日 23:04