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Story  ID:NBIpZjHC0 氏(291st take)
 …♪…~♪~…♪…

 いつも通りスタジオにやってきた水銀燈と真紅。
 だがスタジオの中から流れてくる異様な音を聞いて立ち止まった。

「なぁに、この音…」
「音…というより声っぽいわ」

 確かにそれは音と言うより、何かが喋っているような感じである。それも相当な早口で。
 ただ、それはとても人間の声には聞こえそうにもない物だった。
 テレビアニメとかであるロボットの声、例えるならそんな感じだ。
 二人は見合わせて小首を傾げると、水銀燈がドアノブへ手を掛けた。

「なんなのかしらぁ」

『テンジョウニハ ムーン…ナオ ウエニハ マーズ…』
「あ、真紅…銀ちゃん…おはよう…」

 ドアを開けると、キーボードを弾き語りしている薔薇水晶だけがいた。二人に気付くと演奏を止めて二人の方を向いた。
 それだけならそう変わらない光景である。しかし、いつもと違うのはキーボードからマイクが生えている事だ。

「おはよう。ばらしー、それって…」

 それ、と真紅がキーボードを指差すと、薔薇水晶は嬉しそうに笑ってそのマイクへと口を寄せた。
 その鍵盤を弾きながら、薔薇水晶が口を開く。

ボコーダーシンセ…カッチャッタ…』

 マイク越しに発せられた薔薇水晶の声はいつもとは違う、先ほどのロボットボイスだ。
「買ったって、いつぅ?」
「昨日…。今日持ってきたの…」
「へ~、何だか面白そうね。ちょっと変わってもらってもいい?」
「うん…いいよ…」

 真紅は薔薇水晶に席を譲ってもらうと、軽く咳払いをしてマイクへと口を寄せる。

『アー、アー…ワレワレハ、ウチュウジンダ』
「宇宙人の真似…典型的ねぇ」

 真紅のマイク越しの宇宙人の真似を聞いて、水銀燈は思わず笑ってしまった。
 それを見て真紅はムッとした表情で水銀燈を軽く睨み付ける。

「別にいいでしょう、他に思いつくのが無かったんだから」
「別に悪いなんて言ってないわぁ。ただあまりにもそのままだから…」

 それでもクスクス笑っている水銀燈だが、薔薇水晶に袖を引っ張られてそっちの方を見た。

「なぁに、ばらしー?」
「…私も…最初に宇宙人…やった…」
「え…」

 少し恥ずかしそうにそう告白する薔薇水晶に、水銀燈は笑うのを止めてばつが悪そうに目を逸らした。

 それからしばらくしてメンバーがそろうと、薔薇水晶のボコーダーに興味津々と言った感じで集まっていた。

『ワレワレハ、ウチュウジンデスゥ~、オトナシクスルデスゥ~』
「面白いのー、翠星石の声がロボットみたいになってるのー!」
「…本当にみんな宇宙人の真似してるわぁ…」

 薔薇水晶、水銀燈、真紅の三人はその光景を眺めながらジュースを飲んでいた。

「それにしても、あれって結構高いんじゃないの?」
「うん…だから少しずつお金貯めて…買ったの…」
「なるほどぉ、それで最近付き合いが悪かったのねぇ」
「ごめんね…」
「別に怒ってないわよぉ。気にしないでぇ」
「ありがとう…。ねえ真紅…あれってレコーディングとかで…使える…?」
「そうね、今までボコーダーを使った曲が無かったから今度あれを使った曲を書いてみるわ。
 面白いのが出来そう。もちろん、ボコーダーパートはあなたが歌うのよ」
「うん…!」
「真紅パートと雛パートとばらしーボコーダーパート…三者三様で楽しくなりそうねぇ」

 ボコーダーが入った事で新たな表現が増えて、心が踊る三人。
 その間も、他のメンバーはボコーダーで遊んでいた。

『チキュウジンノミンナ、ナカヨクシヨウヨ』
「次は雛なのー! 雛の番なのー!!」
「分かった分かった、はいどうぞ」
「わーいなのー!」
「その次はカナなのかしらー! 忘れないでかしらー!」

 蒼星石が雛苺に席を譲り、今度は雛苺がロボットボイスを出し始めた。

『ヒナハウチュウジンナノー! コロサレタクナカッタラ、ウニュ~ヲタクサンモッテクルノー!』
「雛苺らしい宇宙人ですぅ…」
「面白いのー! ホントに声が変わってるのー!」

 ロボットボイスに興奮した雛苺はそれから色々な漫画の台詞を言ったり、歌を歌い始めたり色々な事をし始めた。
 そして気がつけば明らかに他のメンバーより長い時間ボコーダーを使っている。

「雛苺、早くカナに変わるのかしらー!!」
「いーやー! もっとー!」

 痺れを切らした金糸雀が雛苺に迫るが全く聞く耳持たないと言った感じだ。
 薔薇水晶達含む他のメンバーはハラハラとしたようでその様子を見ていた。

「銀ちゃん…嫌な予感がする…」
「ちょっと真紅、何とかしなさいよぉ」
「そうね。雛苺、いい加減に…」

 だが既に手遅れ。
 真紅が雛苺を止めようとした矢先、テンションの上がりきった雛苺が息を一気に吸い込んだ。
 それを見たみんなは反射的に耳を閉じる。

『ルアァァァァァァァアァアァイィィィイイィィ!!!』

 マイクに向かって叫んだ雛苺だが、もはやボコーダーのロボットボイスより雛苺のデスボイスの方が勝っていてあまり意味が無い。
 だが雛苺はスッキリしたようでイスから降りて金糸雀へと席を勧める。

「満足したのー、カナどうぞなのー」
「もう、少しは加減するかしら…」

 ブツブツ言いながらイスに座り、みんなと同じように鍵盤を弾きながらマイクへと喋り始める。

「私は宇宙人かしら、宇宙…あれ?」

 だが、マイク越しに出たのは変わりの無い金糸雀の声。いや、そもそも内蔵スピーカー自体が作動してないようだ。
 それを見た薔薇水晶は急いで金糸雀をどかすと、スイッチを押したりマイクに向かって声を出したりしたが全く反応が無い。

「ねぇ…どうしたの…? 返事をして…」
「それは生き物じゃないから返事はしないと思うですぅ…」

 薔薇水晶の後から眺めていた水銀燈だったが、しばらくしてから口を開いた。

「ひょっとして…雛のデスボイスで壊れたんじゃ…」
「そんな…ガーン…」

 自分で効果音を言いながらその場に崩れ落ちた薔薇水晶。
 あまりにも痛々しすぎるその背中に、誰も声を掛けることは出来なかった…。


 幸い保障期間中だったためすぐに修理に出して事なき事を得たのだが、以来薔薇水晶は自分の機材に雛苺を一切近付けないという。




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最終更新:2008年02月22日 23:55