Story ID:aoXcltZj0 氏(300th take)
Illust 845 氏
「次の曲は全員動きまくるから、覚悟するですぅ~~~!!!」
ドラムから降り、MCをやっている翠星石が叫ぶ。
次の曲は、翠星石と蒼星石がコーラスを担当するというとんでもない楽曲である。
これにより、メンバー全員が舞台上に揃っての演奏を行う、と言う目論見。
ドラマーとベーシストがいなくなってしまうが、抜けた低音を薔薇水晶が変幻自在のキーボードでカバーするという算段だ。
企画者は金糸雀。
しかし。
明らかに、今にも転びそうなメンバーがそこにいた。
「・・・薔薇水晶!?」
Illust 845 氏
真紅が、ショルダーキーボードを構える薔薇水晶を見る。
・・・88鍵ある。
「・・・それ・・・」
「・・・曲書いたけど、普通のじゃ弾けないなーって感じたから・・・」
薔薇水晶が構えていたのは、ショルダーでも何でもないシンセサイザーだった。
今にも倒れそうな薔薇水晶。ちなみに88鍵のシンセは25kgを軽く越すものもあるらしい。
「・・・さぁ、行くわよぉ!?」
次の瞬間、見かねた水銀燈がギターを大慌てで掻き鳴らし始めていた。
*
「・・・悪かったのかしら」
数日後のライブのリハーサルにて、楽譜が薔薇水晶に渡された。
あまりに無茶なパフォーマンスによる薔薇水晶の腱鞘炎の責任を取るため、徹夜で金糸雀が40鍵程度に編曲した一品である。
弦楽四重奏などなら楽に編曲できるが、悪戦苦闘した末結局まともに寝てないとのこと。完成度は流石にかなり高くなったらしい。
「・・・ありがとう、頑張る」
「れ、礼には及ばないのかしらぁ~。じゃ、じゃあ一旦家に帰るのかしらぁ~・・・」
数日前のライブ直後の薔薇水晶のような状況で、金糸雀がよろけながら戸を開けた。
「ちょっと、大丈夫なの?」
楽譜を見ている真紅が声を掛ける。しかし、特に修正する気はないらしい。必要ないとの判断だろう。
「み、みっちゃんが車で迎えに来てるから大丈夫だと思うのー」
「・・・そうだね」
彼女はマネージャーだ。とは言っても、相当に心細くはなる。
そして、晴れ舞台に立つ時が来た。
ローゼンメイデンには慣れた場所ながら、状況が少々複雑なので多少の緊張はする。
もっとも、金糸雀も仮眠して戻ってきた(みっちゃんが気を利かせて車に毛布を積んでたのが効いたらしい)ので懸念事項は無い。
・・・はずだった。
「・・・ばらしー、どうしたのー?」
小声で雛苺が声を掛ける。
「・・・いや、バナナの皮でも転がってたら困るし・・・」
「バナナもうにゅーの皮も袋も転がってないなのー!」
小声で怒鳴りつける。まぁ、彼女にとっては先日のシンセサイザーがトラウマだから仕方が無い・・・?
「とにかく、楽しむ!それが一番なのー」
「・・・あ、そっか」
薔薇水晶が、ハッとした。
「・・・さーて、魅了されなさぁい!?」
水銀燈のMCが終わった。
・・・今の感情を、そのまま音楽にぶつける!
思い切り、ショルダーキーボードを振り上げる。
観客から、盛大な歓声が地鳴りのように響いた。
次の瞬間、薔薇水晶は勢い余って振り上げたキーボードをみぞおちにヒットさせた。
「へごっ!」
薔薇水晶が後方大回転で転んだ。
・・・静まり返る観客席。
「・・・てへっ」
ごん。
無事だった薔薇水晶に、水銀燈がギターでツッコミを入れた。
その後のライブは「奇跡的に」滞りなく行われた。
最終更新:2008年03月08日 13:33