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「い・い・か・げ・ん・にするかしらーっ!!」
また翠星石がやってしまった。
「勝手に人を要介助者に指定しないで欲しいかしら!!て言うかカナは、カナはッ!お腹が空いて死にそうかしら!翠星石の妄言に付き合ってるひまはないのかしらー!!強いて言うならお腹と背中がぴったんこでそうすると内臓の行方はというと今悟ったけれど消化吸収のベクトルで発生したワームホールからボソンジャンプに違いないかしらーーー!!」
「か、金糸雀、意味がわからないよ。落ち着いて」
ことの成り行きを見守っていた・・・・・・というより半ば呆れかえっていた蒼星石だったが、さすがにこうなってはまずいと思い金糸雀に制止の言葉をかける。すでに金糸雀の発言は理解不能レベルにだ。止めなければ。
「翠星石。ちょっと言いすぎだよ。ちゃんと金糸雀を止め・・・・・・いや謝らないと」
「知―らんですー。むしろこっちの方がおもしろいです。うしししし・・・・・・」
蒼星石の言葉にもどこ吹く風で、翠星石は金糸雀の様子を観察している。
全くもって困った姉だ。
とはいえ翠星石も金糸雀が可愛いからああしてからかっている――いささか度を越えてはいるが――わけだ。言ってみれば愛情の裏返し、不器用な表現方法なのだと言えなくもない。
「そんなに赤くなるなです。デコっぱちだけに『タコ八』金糸雀とでも呼べばいいですかね」
「むきぃいいいいいいいいい誰が軟体動物かしらぁああああああああああああああああ!!」
「いや、やっぱりただおもしろがってるのか・・・・・・」
金糸雀を見てけらけらと笑っている翠星石を前に、自分の理解が的外れなのかしかしそうだとすればある意味救いが無いそれだけは勘弁して欲しい・・・・・・などと蒼星石が1人考察を巡らせている間に、オーバーヒートした金糸雀は予想外の行動に出た。
「ちょっと真紅ッ!!」
がしっ。
1人我関せずと紅茶を飲んでいた真紅につかみかかったのだ。
「ちょ、ちょっと金糸雀。紅茶がこぼれるわ・・・・・・あ、危ないわよ」
「のんきにお茶飲んでる場合じゃないかしらー!!真紅!とりあえず500円でいいから貸してほしいかしら!!」
金糸雀の鬼気迫る様子に、真紅も思わず「わ、わかったから落ち着きなさい」などとなだめながら懐に手を入れる。しかし、
「あ、あら?」
「?」
怪訝な表情を浮かべると、真紅は懐から手を抜き、次に上着のポケットを探りはじめた。
さらにスカートのポケットを見て、鞄の中をのぞきこみ、ついに机の中身を全て取り出してからもとに戻し、最後になぜか窓の外を見つめてから金糸雀に向き直った。
「・・・・・・無いのだわ」
「え?」
「だから、お財布を忘れたのだわ」
金糸雀は硬直。そしてしばしの沈黙。
「その・・・・・・今朝は少し急いでいて・・・・・・朝、のりから電話が・・・・・・ジュンが風邪を・・・・・・先に行けって・・・・・・けれど心配、いえ下僕がいないのは困るから・・・・・・様子を見に・・・・・・」
真紅は財布を忘れた理由について何やらごにょごにょと弁解のようなことを口にしていたが、金糸雀の方はといえば聞いちゃいなかった。硬直が解けると再び猛然と真紅につかみかかる。
ががががががが、と掘削機のごとく真紅の肩を揺さぶりながら叫びを上げた。
「お金をッ!!貸してくれるまでッ!!揺さぶるのをやめないかしらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ちょっ・・・・・・!お、落ち着きなさい、かな、金糸雀・・・・・・!!」
財布が無いと言っているのにも関わらずである。もはやまともな判断力が失われているのだ。
「雛苺、翠星石も・・・・・・このままじゃまずいよ」
「うぃ、ごはんは楽しくなの」
「ったく、しゃーねぇやつですね・・・・・・」
真紅とひいては自分たちの身の危険を判断した一同は(翠星石もようやく)金糸雀の制止にかかった。
「金糸雀、鎮まるんだ」
「いー加減にするです。真紅を振動病にする気ですか」
「すべてのげんきょうは翠星石とも言えるの」
言いながら蒼星石が金糸雀の手を真紅から引き剥がし、翠星石がでこピンをくらわせ、雛苺が背中に飛び乗った。3人の連携によって、もはや空腹で体力が残されていなかった金糸雀はついに床へと倒れ伏す。
「ぐぅ・・・・・・カナを倒しても必ず第二第三の金糸雀が現れるかしら・・・・・・がくっ」
捨てゼリフとともに首が落ちる。雛苺が金糸雀の背中の上で手をあわせた。合掌。
「おててのしわとしわを合わせても『しわあわせ』なのよ」
「それは言っちゃあいけないことだよ・・・・・・いや、まず死んでないから」
「あなたたち・・・・・・わざとやってるんじゃないでしょうね・・・・・・」
とばっちりで最も被害を受けた真紅が呟いた。
とりあえず金糸雀の暴走を止めることに成功した一同だったが、次の問題は倒れたままの金糸雀をどうするかであった。
「このまま放っておけばいいのです。勝手に起きてどこぞへ這って出るですよ」
「でもお腹がすいて動けないみたいだし、このままってわけにも・・・・・・」
「そうよ。何か食べさせてあげなきゃ、金糸雀がかえらぬひとになるわ」
「いや、だから死にはしないだろうけど・・・・・・こだわるね、雛苺・・・・・・」
「あなたたち、まじめにやりなさい」
あーだこーだと意見を出し合う4人(しょっぱなから脱線)。
議論の結果、翠星石が少しごねたものの、各自の弁当を分け与えることに決定した。
自力で動けない金糸雀を救うにはそれしかない。
「全く・・・・・・なんで翠星石がこんな迷惑者のチビなんぞにおかずを分けてやらなきゃならんのです・・・・・・働かざるもの食うべからずです。自然の世界で自ら糧を得られないものは死あるのみですぅ」
「お弁当、全部作ってるの僕なんだけど・・・・・・」
「ヒナはおさしみについてた菊の花をあげるの」
「雛苺・・・・・・恐ろしい子・・・・・・!」
さて弁当を分け与えるにしてもまずは金糸雀を起こさなければならない。
真紅が金糸雀を仰向けに転がし、簡単に生命反応を確認する。
呼吸、アリ。脈拍、アリ。瞳孔、ぐるぐる。よし生きてる。
「金糸雀。起きなさい金糸雀」
頬をぺちぺちと叩く。しかし反応がない。いやあった。お腹が鳴る音だ。
ぐぅ。
「金糸雀?いつまでも寝ていたところで食事は得られないわ。起きて立ちなさい」
ぐぎゅう。
「金糸雀?」
ぐぎゅるるる。
「金」
ぐぎゅぅぅぅぅぅぅぅ。
「呆れた・・・・・・お腹の音で返事をしているのだわ」
驚愕すべき事態だった。金糸雀自身の意識は戻っていないというのに真紅の声に腹の音で完全に反応している。意識的にできたところで嫌な特技ではある。
「どうするです?起こさなきゃ何も食べさせられんですよ」
「いくら呼んでも起きないし・・・・・・困ったわ」
「お昼休み終わっちゃうの」
「うーん・・・・・・どうしたものだろうね・・・・・・」
しばし考え込む一同。蒼星石は周囲を見渡し、ひとしきり考え、そして閃いた。
「空腹・・・・・・お腹が鳴って・・・・・・そうだ!」
「「「?」」」
最終更新:2006年12月18日 23:52