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Story ID:RSBzz5dI0 氏(316th take)
不意に、声が聴こえていることが判った。体はいうことを聞かず、重く首を引っ張る。
そう、眠りが覚まされようとしているのだ。思考だけがゆっくりと、起き上がりゆく。

「ああ、また取られたよ!」
「うぅ、しょっぱなのオーバードライブさえなければ取られなかったはずですぅ…」

二人分の声がする。そばで何かを話している。しかも背中の方から聞こえてくる。
(オーバードライブ? 興味あるけれどでも起きるのが面倒で仕方がないのだわ…頭だけ参加することにしましょう)

「…インですか、はやいですぅ~」
「今日は調子悪いねw」
(インギー…ではないわね、さすがに。イン・テンポ? 確かに調子悪い時はテンポ早く感じるのだわ)

ふたりの会話はそこで途切れ、間が空く。どうやら、声以外に何か音が鳴っているようだが、はっきりとは聞こえてこない。

「これ、スキップ出来れば良いですのに」
「まあ大体予想通りだからそう言えなくもないけど…リズム作りにはいいんじゃないかな?」
「そうですけど、さすがにもう飽き飽きです。スキップするです、したいです」
(バッキングだけ聞くと退屈ではあるかしらね。スキップといえば水銀燈がヌーノの真似をしていたわね…
 PORNOGRAFFITTIをカバーするとか言いかねないのだわ、曲によっては詞が非常に危険だわ)

高い音が聞こえる。次いで録音された歓声が聞こえ、遅れて二人の声が聞こえてきた。

「ここはフラットっぽいですね」
(フラットっぽい? 半音下がってるかどうかなんて聞けばわかることじゃない。これだからドラマーは!)
「そうだね…あ、でもこっちに乗せた方がオン狙いやすいんじゃないかな。フェードだし」
(オン? オンコード…? アボイドノートに注意しなくては。
 フェードは…ヴォリュームノブ回しながら弾く方法ね! 水銀燈が苦手そうな奏法なのだわ…フフフ…)
「うーん、やってみるですぅ」

沈黙が訪れ、鳥のさえずりや小さな物音を招き入れる。それらは、翠星石の叫び声を歓迎した。

「あー、走りすぎですこの野朗! ですっ!」
「参ったなぁ。ラフに入っちゃったよ」
(本来のテンポより速くなってしまい、プレイが粗くなってしまったということね…よくあることなのだわ)

また、同じような環境音が聞こえる。また、同じような肉声が聞こえてくる。

「またツーオンしやがったです。これだからコンピュータは!」
「ミスさえ計算されてるからね…運もあるけどw」
(ツーオン…二度上のなんとか? ああもう、クラシックの理論は薔薇水晶で解決よ! ヴォーカロイドなんかには負けないのだわ)
「んん? ドライブ足りんですwwww」
「え…ほんとだwwwwwこれはひどいwwwwwww」
「刻むしかないですね…」
「乗せる場所どうしようか」
(刻むって…ブリッジミュート? ドライブ回路のパワーが足りないのなら音圧が稼げないから、曲の中では限られた場所にしか乗せられないわね…
 さすが蒼星石ね、頼りになるのだわ)

ゆっくりと目が覚めてきているのだろう、次第に二人の声以外のものも聞こえてくるようになった。
なかなか予想外の進行をした曲が聞こえてくる。この曲を聞いていたのだろうか?
歓声が入っていたのだからライブ盤だろうが、それにしては音像がはっきりしすぎている。

「ドーミーだよ」
「…きついですねぇ」
(ド-ミがきつい? 長三度だけれど…ホールトーンスケールだとでもいうの?)

興味が体を動かした。寝惚け眼で、スピーカーに向き合う。そしてその間の画面が、見えた。

「これは…ゲームじゃないの!」
「そうなのですぅ。コンピュータとマッチプレイしてるのですけど、もう勝てっこないですぅ」
「マリオなんか使うからだよwwwごめん、起こしちゃったかい」

翠星石は青い箱から伸びる青いコントローラーを握っていた。
蒼星石はその傍らで、丸めたファッション雑誌を持っていた。
元居たベッドに倒れこむ。
二人の会話は続いていたが、何一つ理解されなかった。
私には、ゴルフは解らなかったからだ。

(おしまい)




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最終更新:2008年04月04日 23:52