Story E ◆Hv7UDRGGy2 氏
ライブ本編を終え、照明も消えて一旦ステージ裏へとメンバーは消えていった。
そして当然アンコールが観客から湧き上がる。
数分間のアンコールの後、照明が点いて着替えたメンバーが再び現れてファンから歓声が上がる。
それを受けながらそれぞれのパートへとついていく。
「アンコールありがとう! 本当にありがとう!」
「はあ、名古屋はアンコールも熱いわね。良い事だわ。」
「おかげでさっきの衣装も汗だくよぉ。…あらぁ? 翠星石、こんなに暑いのになんでパーカーなんて着てるのぉ?」
水銀燈にふられて観客とメンバーの視線が翠星石に集中する。
ふられた翠星石はわざとらしく自分が着ているパーカーに目を落とす。
「え、これですか? いやあ、最近各地の美味しいもの食べてたら体脂肪が…サウナスーツ代わりですぅ」
「でもそれバンドロゴが書いてあるわよぉ?」
「…そうだったですぅ! これ、物販で売ってるやつで、私がデザインしたんですよ!」
オーバーリアクションで着ているパーカーをアピールする翠星石に笑いが沸き起こる。
「そう言う水銀燈だって長袖じゃないですか」
「…あら、いつの間にか着てたわぁ。あんまり着心地が良すぎて忘れてたわぁ」
そう言いながらギターを下ろし、服の柄を観客に見やすくする水銀燈。
笑いが起こったのだが、そこから先が思いつかないようで少し押し黙って引き攣った笑いを浮かべる。
「……えっと、物販で売ってるからよろしくねぇ」
やっとの思いで言った水銀燈の台詞に一際大きい笑いと拍手が起きる。
それが恥ずかしかったのか、タオルで顔を拭う。が、それを今度は蒼星石が見逃さない。
「あれ? そのカッコイイタオルどうしたの?」
「タオル…? ああ、これねぇ…。…えと、これも物販で売ってるからよろしくねぇ」
自ら地雷を踏んだ水銀燈に観客だけでなくメンバーも大笑い。
水銀燈は恥ずかしさのあまり思いっきりギターを掻き鳴らしてその場を誤魔化した。
「…そ、そう言う蒼星石だってぇ。何だか見慣れない帽子被ってるじゃない」
「帽子? …あれ!? いつもの帽子と違う!」
恒例のワザとらしいオーバーリアクションで帽子を取り、見やすくそれを高く掲げる。
「あんまり被り心地がいいもんだから間違えちゃったか…。でも良いデザインだ。ナウなヤングにバカ受けだね!」
「……」
蒼星石の死語満載の発言で一気に会場の空気が凍りついた。
メンバー一同も固まっており、表情も冷め切っている。
しばらく経ってそれを察した蒼星石は、固まった笑顔のまま帽子を被り直す。
「…あの、僕がデザインしました。よろしくお願いします…」
「私より紹介が酷いわぁ。多分これで買う人はいなくなったわねぇ」
「まったくだわ」
「…ごめんなさい」
苦笑いで二人から責められて蒼星石は頭を深々と下げる。それで会場も少し笑い、空気が少しだけ戻った。
「……あら、雛苺も半袖に着替えてるわね」
「何だか精神崩壊しそうな柄ですぅ…」
「これ? ヒナがデザインしたシャツなのよー!」
ふられた雛苺はスピーカーの上に乗り服をアピールする。
その元気一杯な姿で会場は微笑ましい雰囲気に包まれる。
「3種類あるからねー。買わないと…これで呪うのよ」
笑顔を消した雛苺がポケットから取り出したのは藁人形と五寸釘。
釘にライトの光が反射して禍々しい雰囲気を醸し出していた。
「…雛苺、それは?」
「ヒナとカナがデザインした丑の刻参りセットなのよー! これも物販で売ってるからねー!」
藁人形を手にして満面の笑みでアピールする雛苺。そのギャップで観客に薄ら寒い空気が流れた。
「…ま、まあ一つのジョークグッズだね」
「そうね…。…ところでばらしー、さっきから何食べてるの?」
空気をフォローしたところで今度は薔薇水晶に目が行く。
見てみると、口から何か草みたいな物が出ている。
「モグモグ…これ? 私が作ったカイワレ大根…。あとキャンディ…おいしいよ…」
「カイワレとキャンディは一緒に食べる物じゃないと思うのだわ…」
「…モグモグ…私が作ったカイワレちゃん、数量限定で売ってるからお早めに…。あとキャンディもあるよ…」
「食べながら喋らないで頂戴。…はあ、何だか喉が乾いたのだわ…」
薔薇水晶らしい物販紹介が終わり、真紅は水筒から熱い紅茶をマグカップに注いで飲んだ。
それを翠星石が目に付ける。
「ふう、やっぱり紅茶は美味しいわ」
「あれ? 真紅、何だか変わったマグカップ使ってるですね。五角形ですぅ」
「マグカップ? あら、使い心地が良いからいつの間にか使ってたのだわ!」
ワザとらしく驚く真紅に笑いが起こる。
「そう、これもグッズだったのだわ! ここにいるばらしーがデザインしたからよろしくなのだわ」
「モグモグ…よろしくね…」
「さっさと食べ終わるです!」
なおもカイワレとキャンディを食べる薔薇水晶に翠星石が突っ込みを入れて観客が笑う。
言われて薔薇水晶は口の中の物を水で流し込んだ。
「…以上、物販紹介でした…」
「この寸劇、毎回ツアーでやってるんだけど…どう?」
蒼星石が観客に問いかけると大きな拍手が沸き起こった。
「良かった。これでブーイングが来たらどうしようかと…」
「でも蒼星石のはブーイングものよねぇ」
「そうね」
「姉として恥ずかしかったですぅ」
「ちょっと酷かったのー」
「……ぶっちゃけありえない」
「…みんなひどい…orz」
みんなから責められわりと本気で凹んだ蒼星石にみんな笑う。
「さて! 物販紹介もそろそろ終わりで、次の曲行くわよ!」
「最後は飛ばしモードで行くから、しっかり着いて来るのよぉ!」
「イェーイ!」
「カモン、さっき滑った蒼星石!!」
あんまりなふり方に蒼星石から一瞬力が抜けるが、すぐに建て直し苦笑いのままベースソロを演奏し始めた。
定番曲に観客の盛り上がりも一気に盛り上がっていく。
こんな感じで物販紹介をしているそうです。
最終更新:2008年05月28日 00:37