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「あ~ぁ、さっきのお家も全く駄目だったのぉ~」
「そうですね…」

二人はガッカリした顔で歩いていた。
郊外にある幽霊屋敷と噂されている廃墟を巡っていた二人だったが、最近は廃墟といっても退廃的な美しさというより、ただ荒んでいるだけのものが多くなってしまっている。
二人が訪れた廃墟も全て、暴走族や不良に荒らされ、落書きやゴミだらけだった。

「せめてハーケンクロイツはちゃんと描いていて欲しかったの…」
「あれではただの「まんじ」ですよね…」

はぁ、と二人同時に溜息をついた。

「で…でも!最後の所には期待なの!何と言ってもあそこだけは本当に危ないって知り合い霊能力者も言ってたの!!」
「そうですか。それは期待できますね」

二人は微笑み会う…愛くるしい少女みたいな顔でこの二人は何処に向かっているのやら…

郊外山中、そこに何故か忽然と建っている古びた洋館…

「ここなの!昔から深夜になると少女の悲鳴にも似た叫び声が聞こえるとか聞こえないとかっていう噂の洋館なのー!!」
「…雛苺ちゃん…それは聖飢魔Ⅱですよね?」
「うゆ~、細かいことは気にしちゃ駄目なの!!さっそく入ってみるのぉ!!」
「ええ、そうしましょうか…」

雛苺は楽しげに洋館に入っていく。しかし、雪華綺晶は感じていた。誰かに見られているような気配を…

ギギィ…

鈍い音をあげて扉は開く。本当に長い間人が入っていないらしく、広い部屋一面に埃だらけだった。

「…これは…理想的な廃墟ですね…」

雪華綺晶は感嘆の声を上げる。

「うゆ~、ようやく本物っぽいところにたどり着けたの!」

山の中ということもあって、廃墟の中は薄暗く背筋の凍るような雰囲気が漂っている。
まぁ、この二人には全く関係がなさそうだが…何せその雰囲気を喜んでいるのだから。

「この雰囲気は…いいインスピレーションを感じます…」
「うゆ、確かに…悪魔的な詩が浮かびそうなの!」

世間ではそういうのを「憑かれたよう」と表現するのだが…この二人の場合はいつもこんな感じなので気にしちゃいけない。

「とにかく!探検してみるのー!」

雛苺は早速屋敷の奥へと入っていく。雪華綺晶は…

「………」

やはり何かの視線を感じつつ、雛苺の後を追った。


……
………

「う~ん、廃墟って感じはするけど、幽霊がでそうな感じはないのぉ…むしろ…」
「…悪魔?」
「そう!そんな感じがしっくり来そうなのぉ!」

雛苺は、雪華綺晶がポツリと呟いた言葉に賛同する。一方の雪華綺晶は自分の呟きに納得している。「なるほど」と…

二人は二階へと上がる。と…ゾクッと何かを背筋に感じた。

「…きらきー…今…」
「…ええ…何か…」

二人は直感的に感じた。何かが目の前のドアの向こうにいると…ごくりと唾を飲む…
雛苺はこういったところをよく歩いているが、流石に本物に会うのは初めてだ。
雪華綺晶もまた、直接見たことは一度もなかった。

「いい?いっせいのうであけるのよー」
「はい…」

「「いっせいのうで!!」」

バーン!!

ドアが開く。…しかし、そこには何も居なかった…代わりに…

「?エレキギターなのぉ」
「…」

雪華綺晶はゆっくりとそのギターに近づいていく。

「きらきー?」

雪華綺晶が使っているものと同じレスポール型のギターだった。
メーカーはギブソン。真っ白なボディに3ピックアップ。
仕様はほとんど雪華綺晶のものと同じである。
違っているのは、年代物らしく全体が傷だらけだということ。
そして金属の部品が若干錆びていること。

雪華綺晶はゆっくりそのギターに触れてみる。
自分は窓枠に座り込み、アルペジオを弾いてみた。
アンプもエフェクターも通してないのに、美しい旋律が辺りを包む。

「…ひょっとして…さっきの気配この子だったのぉ?」

雛苺は旋律に酔いしれながら、雪華綺晶に聞いてみる。

「…そうかもしれませんね…」
「うゆ~!幽霊じゃないけど不思議なものを見つけられたの!!」

雛苺は嬉しそうに飛び跳ねる。雪華綺晶はそれを見て微笑み、ギターを眺めた。
ギターの裏側に、ナイフで文字が刻まれていた。

『Satanica』

「(サタニカ…悪魔…)」

雪華綺晶はジッとそのギターを見つめる。
別に邪悪なものは感じなかった…しかし、どこか寂しそうなものを感じた。

「?どうしたの~きらきー?」
「…いえ…」

雪華綺晶は微笑み、雛苺を見た。

「さて…そろそろ行きましょうか?良い物も見つけたことですし…」
「うん!行くのぉ!!」

雪華綺晶が立ち上がると、雛苺は出口へと走っていた。

『ありがとう…』

雪華綺晶の耳にだけ、その声は聞こえた。

「…いえいえ…こちらこそ…ありがとうございます…」

声に対して、雪華綺晶は答え、雛苺を追いかけていった。
それは大阪ライブの少し前、二人が出会った不思議な物語だった…
後に聞いたところ…その洋館の扉は完全に壊れていて…開くはずがなかったそうだ…




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最終更新:2008年05月28日 22:04